マイクロソフト、SQL Server 2008ベースの中小規模向けDWHアプライアンス

半分の価格で競合と同等以上の性能を実現、提供価格の透明性も大きなメリット

Fast Track DWHの適用範囲
業務執行役員 サーバープラットフォームビジネス本部 五十嵐光喜氏

 マイクロソフト株式会社は6月24日、中小規模向けのデータウェアハウス(DWH)アプライアンス「SQL Server Fast Track Data Warehouse」(以下、Fast Track DWH)を発表した。SQL Server 2008とコモディティハードウェアを組み合わせて製品化したもので、価格は1130万8300円(税別)から。

 Fast Track DWHは、中小規模環境に最適化されたDWHアプライアンス。SQL Server 2008 Enterprise Editionと、一般的なx86サーバー、ストレージを組み合わせ、マイクロソフトが事前検証した最適な構成で提供する。業務執行役員 サーバープラットフォームビジネス本部 五十嵐光喜氏は、「かつては一部での活用に限られてきたBI/DWHだが、今では現場での活用も盛んになり、ニーズがどんどん深まっている」という現状を踏まえ、4~32TBまでの中小規模領域を明示的に狙うと話す。

 そのための製品としては、4~8TB、4~16TB、12~24TB、16~32TBの容量に対応できる製品をラインアップするが、いずれの製品についても、米Microsoftが2008年7月に買収した米DATAllegroのノウハウを最大限に活用。各モデルが扱う容量に特化して最適化が進められている。さらにコモディティハードウェアを利用することで、ハードウェア費用の大幅な削減を実現。「他社と比べて1/3から半分くらいの価格で、同等かそれ以上の性能を実現した」(五十嵐氏)という。

 費用面ではあわせて、「価格の透明性」を確保できるのも大きな特徴。五十嵐氏は「他社のアプライアンスでは市販していないハードウェアを利用するため、明確な価格表がないケースが多く、価格がわかりにくい」という点を指摘した上で、「そのため、競合の製品では、特に32TB未満の容量で欲しいお客さまに、とっつきやすさがなかった。ここまで明確にコストを提示しているアプライアンスはない」とアピールする。

価格の透明性を確保している点が大きな特徴だリファレンスアーキテクチャを利用し、DWHで重要な、読み取り性能を最大限発揮できる構成を算出するハイエンド構成でも、ハードウェアは市販されているのと同等のものを利用する

 もちろん、コモディティハードウェアを利用しているため、ユーザー側が個々にハードウェアを選定し、その上にSQL Server 2008を載せることで、同じような構成を作ることは可能だ。マイクロソフトでは、最適化構成を自動的に算出できるツール「SMP Reference Calculator」をパートナーや一般顧客にも提供する予定だが、ハードウェアを選定した後には、当然ながら検証の作業が発生する。Fast Track DWHでは、この検証部分があらかじめ済まされているため、導入時の工数を大幅に削減できるのがメリットになる。五十嵐氏は、「TBクラスのDWHになると、多少の構成の違いが大きな差異になってくる可能性がある。しかしこの製品は、最大のパフォーマンスを提供できることを定義した組み合わせであり、自信を持ってお勧めできるセットだ」という点を強調した。

提供するテンプレートの例
Fast Track DWHのエントリーモデルのサーバー部分。一般的なx86サーバーを利用している

 さらに、「利用用途がないと活用をイメージしづらい」(五十嵐氏)ことも考慮。SIパートナーが、ユーザー企業に付加価値として提供するためのレポーティングテンプレートを作成しやすいよう、「テンプレート作成のためのテンプレート」を用意する。現時点では、「会計・財務」「営業管理」「小売業向け」「製造業向け」の4種が提供され、順次拡充していく予定という。

 「DWHが業務に即したものでないと意味がないため、各業務に精通したSIerが付加価値を提供するための下地がこれ。SIerが持つ業種のノウハウをさらに上乗せして、ユーザー企業に展開することになるだろう。また、こうしたことが可能なのは、レポーティング、Excelとの連携によるデータマイニングなど、さまざまな機能を持つSQL Serverを利用しているからこそ。エンジンだけを提供している他社のDWHアプライアンスとは異なる部分だ」(五十嵐氏)。

 なお、前述のように、ハードウェアとの組み合わせは特定のベンダーに限定されないが、現段階では検証済みの構成としてデル、日本HPのハードウェアを利用した5製品を提供する。4~8TBに最適化されたエントリーモデルは、日本HP製の場合が1130万8300円(税別)、デル製の場合が2158万8075円(同)。また、デル製ハードウェアを用いる12~24TBに最適化されたモデルで4226万6908円(同)、もっとも大きな、16~32TBに最適化された日本HP製ハードウェアを使うモデルでは3501万1300円(同)となっている。

 製品は、ハードウェアベンダーが直販するほか、SQL Server 2008とサーバーハードウェアをともに扱えるリセラーから販売され、現在ではCTCが取り扱いを行うという。マイクロソフトでは、すでにほかのリセラーやハードウェアベンダーとも取り組みを進めており、今後もラインアップや販路が拡大される予定である。

 加えて、DWH導入前のアセスメントサービスも、マイクロソフト コンサルティング サービス(MCS)やパートナーから提供される。ユーザー環境のヒアリングと実機検証などによって、最適な構成をシステム導入前に確認するサービスで、MCSの場合、期間は約1カ月から、価格は約500万円からを想定している。




(石井 一志)

2009/6/25 00:00