NECのCO2排出量を“実質ゼロ”にする計画、「順調に推移」

2008年度の環境活動実績を発表

環境推進部長の斎田正之氏

 日本電気株式会社(以下、NEC)は7月3日、環境への取り組みに対する記者会見を開催した。同社では「NEC環境経営ビジョン2010」なる指針で環境活動を進めているが、「2008年度は、2010年度の目標を2年前倒しでほぼ達成できた」(環境推進部長の斎田正之氏)と報告している。

 世界的な環境活動としては京都議定書以外にも、2008年に地球温暖化、世界金融危機、石油資源枯渇に対する一連の提案を盛り込んだ「グリーン・ニューディール」政策が打ち出された。日本でも2008年後半から同政策が議論され始めたほか、麻生首相から、温室効果ガス排出削減の中期目標を「2020年までに2005年比で15%減」とする方針が打ち出されるなど、環境に向けた意識は年々高まっている。

 こうした中、NECが気候変動(地球温暖化)への対応と環境保全の取り組みとして進めるのが、2003年に発表された「NEC環境経営ビジョン2010」。NECの製品使用および生産活動で排出されるCO2を、ITソリューションの提供などを通じて相殺することで、2010年にCO2排出量の“実質ゼロ”を目指すものだ。記者会見ではこの成果について、「順調に推移している」(斎田氏)と紹介。

 まず、2008年度のNECグループ全体実績に触れ、「CO2以外を含む温室効果ガス(Green House Gas:GHG)の総排出量を165万トンに抑えることができた。これは、2007年度の208万トンから20.7%減となる結果。2010年度目標の163万トンまでも残り2万トンとなり、2年前倒しでほぼ目標達成したことになる」(同氏)と述べた。

 2008年度は、生産減によりGHG削減となった一面もあるという。だが「GHG排出量削減に向けては、生産革新活動による省エネ化、オフィス部門/データセンターの省エネ化のほか、温室効果ガス『PFC』の代替化や除外装置の導入、物流におけるCO2削減などに取り組んでおり、今回の成果はこれらが奏功したためだ」(同氏)としている。

2010年にCO2を実質ゼロにする「NEC環境経営ビジョン2010」。目標達成に向け順調に推移NECグループGHG総排出量の実績。2年前倒しで目標をほぼ達成

 グリーンITの取り組みとしては、製品のCO2を削減する「ITのエコ」と、ソリューション提供でCO2を削減する「ITでエコ」の両輪で推進。「ITのエコ」では独自の「エコシンボルスター認定制度」を設け、省エネサーバー「ECO CENTER」を筆頭に環境トップランナー製品の創出に努めた結果、2008年度は、「2005年度比で15万トンを削減。目標の30%減を大きく上回る45%減を達成できた」(同氏)と紹介。予想以上の成果が得られたことから、2010年度に50%減とする目標を、60%以上減に引き上げる方針も打ち出している。

製品のCO2削減効果。2008年度の実績は45%減エコシンボルスター認定制度で省エネ製品創出へECO CENTERでは従来比54%の省電力を実現。グリーンITアワード2008で経済産業大臣賞などを受賞した

 一方の「ITでエコ」では、三井住友銀行における、本人確認記録の電子化で環境負荷を低減する新営業店端末「CUTE」の導入事例を紹介。「年間約300万枚のペーパーレス化を実現。CO2排出量としては約760万トン削減できた。今後はペーパーレスの対象業務を順次拡大し、年間約2000万枚の紙削減を実現する新機能をリリースする予定だ。また、ペーパーレスなどにより削減された費用の一部を今後5年間にわたり環境活動に拠出し、2009年は東京都の『海の森の整備』へ寄付する方針」(同氏)とした。

 同ソリューション以外にも10月には、PCの消費電力を自動的に省エネ化する「省エネ オフィスソリューション/エコナビPC(仮称)」の提供を予定する。「クライアントPCの電源自動制御を行うとともに、消費電力の見える化によりユーザーの意識を高めるもので、2008年に行った滋賀県での実証実験では、22%の電力削減効果が証明されている」(同氏)という。

ソリューション提供によるCO2削減実績10月にはPCの消費電力見える化、電源自動制御ソリューションを提供予定

 このほか、REACH(化学物質の登録、評価、認可および制限に関する規則)への義務として、SVHC(高懸念物質)含有情報の収集・管理・届出に努め、JAMP情報基盤で構築した大規模REACHシステムが本格稼働したことを紹介。

 4月には「環境・エネルギー事業推進室」を新設し、「短期的には自動車向けリチウムイオン電池事業へ注力し、将来的には他業界向けの事業も創出していく」(同氏)ともしている。

 加えて、「CO2削減」を「エネルギーコスト削減」に置き換えてアピールすることで、IT製品の省エネに対する関心を高める「エネルギーコストキャンペーン」や、JAXA温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」への観測センサー「TANSO」提供といった取り組みを紹介。TANSOについては、「いぶきは約100分で地球を1周する軌道から、地球表面のほぼ全域にわたって温室効果ガスの濃度分布を測定可能。従来のように地上の観測地点や航空機から観測するよりも、圧倒的に膨大なデータが取得できる」など、その効果にも言及した。

 NECではCSR(企業社会責任)として、今回の環境保全のほかに「すべての人がデジタル社会の恩恵を享受」「セキュリティを多面的に確保」「信頼性の高い情報通信インフラの構築」「お客さまとの信頼関係の構築」「働きやすい職場作りとグローバルな人材育成」「リスクマネジメントの強化とコンプライアンスの徹底」など、全7つのテーマを掲げている。今後も企業理念の上に「NECグループビジョン2017」などを定め、人と地球に優しい情報社会の実現に取り組んでいく方針という。




(川島 弘之)

2009/7/3 16:53