マイクロソフト、2010年度の経営方針を発表-Windows 7で業界全体を活性化


代表執行役社長の樋口泰行氏

 マイクロソフト株式会社は7月7日、2010年度の経営方針記者説明会を開催。同社代表執行役社長の樋口泰行氏より、今年度の取り組みに関する説明が行われた。

 冒頭、2008年9月に発生したリーマンショックの影響に触れ、「7月より新年度が始まるわれわれにとって、2009年度は大変厳しい状況に置かれた」と、同社のビジネスに大きな影響を与えたと述べた。「景気は循環的であり、成長局面があれば後退局面もしくは調整局面があるが、今回はバブルの度合いが高かったので、調整局面が深刻な状況になっている。そのため、経営手法やビジネスそのものなど、レガシーの見直しが各企業で行われている。ITも同様で、戦略上の大きなかじをきるときにきている」と、調整局面の現在、大幅な変革を進めることの重要性を強調した。

 同社でも新年度に向けた土台作りを進めてきたと樋口氏は紹介。「お客さまのコスト意識が非常に高まっており、短期的な見直しから中長期に転換しつつある。また、戦略的な投資へモードも切り替わりつつある。そうした中で、持たざる経営という点から、クラウドに対する期待感も高まっている。こうした環境の変化に対して、マイクロソフト社内でもオープンに情報交換できる企業文化の構築を進めてきた。実際、本社の戦略をそのまま実行するだけでなく、品質問題や技術情報の提供など日本発であるべき姿を発信した」と、外的環境の変化に即応できる体制作りを行っていると説明する。

 「また、われわれのビジネスの基盤となるのがパートナーさまとの連携。会社として信頼していただくことを進めたほか、現場レベルでの連携、リソース投資、製品連携など、パートナーとの連携を強化しつづけている」と、パートナーとの関係をさらに強化していると強調。「そして、Windows 7やWindows Server 2008 R2、Office 14などの有望製品を2010年度には投入する」と、主力製品を相次いで投入することで、2010年度が同社にとって飛躍の年になると述べた。

 2010年度の企業向けビジネスの注力分野として、ソリューションセリング体制のさらなる強化、ソフトウェア+サービスの加速、対競合優位性の徹底訴求を挙げた。「日本企業のITシステムのオープン化への移行は、欧米に比べて遅れているのが現状。われわれの努力不足ともいえるが、サーバーサイド、ソリューションサイドをさらに強化したい。また、ソフトウェア+サービスでは、クラウドとオンプレミスの両方にシームレスに製品を投入していく。これにより、企業の持たざる経営への第一歩を支援していく」と、引き続き積極的に企業向けソリューションを強化するとした。


ソフトウェア+サービスでは、クラウドとオンプレミスともにシームレスに製品を投入企業にとってのソフトウェア+サービスのメリット2010年度のクラウド関連の展開予定

 コンシューマ向けビジネスの注力分野は、やはりWindows 7。「Windows 7の開発にあたり、Windows Vistaの反省を踏まえて徹底したユーザーフィードバックを収集。互換性・パフォーマンス改善・使いやすさを強化した。互換性に関しては、市販アプリケーションの動作検証はもちろん、カスタムアプリケーションの動作検証も実施。さらにWindows XP Modeを用意するなど、Windows 7で動作しないアプリケーションがないように努力した」と、Windows Vistaの不満点を解消したOSに仕上がっていると強調した。

 Windows 7の国内発売日を、7月7日と7がつく日にあわせて発表したことからも、同社のWindows 7にかける意気込みの強さが伺える。「Windows 7対応のPCは、一般向けが約1550万台、法人向けが約1140万台存在する。また、Windows 7未対応PCも一般向けで約1980万台、法人向けで約2310万台存在しており、これらに対してWindows 7は大きなビジネスチャンスになる」と、Windows 7の市場規模が大きなものになると強調した。


Windows 7は10月22日に販売を開始。RTMは7月最終週で、RTM後にボリュームライセンスでの提供日が発表される予定Windows 7の市場規模
マイクロソフト大手町テクノロジーセンターの概要

 そのほか、エンタープライズビジネス強化のひとつとして、10月に「マイクロソフト大手町テクノロジーセンター」を開設することも発表。「一般企業は検証の場として利用していただけるほか、ISVやIHVの技術検証や開発支援の場、産学連携の研究の場など、システム導入・構築・運用のライフサイクルをサポートする本格的なテクノロジーセンターとなるもの」と紹介。同センターには、サーバーが300台、ワークステーションが300台、ストレージが500TB以上、といった設備が用意されている。

 樋口氏は、「「Windowsありがとう」キャンペーンは数日で完売するなど、非常に高い関心を集めている。コンシューマにはエキサイトメントを、エンタープライズには生産性向上を提供するのがWindows 7。Windows 7により業界全体を活性化し、特に年末商戦を盛り上げていく。また、Windows 7をベースに、ソフトウェア+サービスの進行に貢献していきたい」と述べた。





(福浦 一広)

2009/7/7 15:02