APC、中容量UPSを3種投入-「1システム1UPS」コンセプトを推進へ

データセンターの電源問題を解決

UPSラインアップ

 株式会社エーピーシー・ジャパン(以下、APC)は7月16日、中容量(6kVA~30kVA)の無停電電源装置(UPS)を拡充すると発表した。単相3線入力の「Smart-UPS RT 6000」、単相200V入力の「Smart-UPS RT 14k/18k」、および三相200V入力の「Smart-UPS VT(タワー型20/30kVA、ラック型20/30kVA)」の3製品7機種を同日より順次発売する。

 Smart-UPS RT 6000は、単相3線100V/200V入出力が可能な常時インバータ方式6000VA/4200WのUPS。3Uの筐体で、ラック型・タワー型どちらの設置にも対応する。オプションの拡張バッテリパックを接続することで、必要に応じてランタイムを延長可能。Network Management Cardがあらかじめインストールされているため、別売りの「PowerChute Network Shutdown」との組み合わせにより遠隔管理も実現する。100V/200V製品の混在環境に最適という。

 価格は100万2330円。発売日は9月30日。

Smart-UPS RT 6000限られたスペースで100V/200V混載環境に最適なUPS

 Smart-UPS RT 14k/18kは、単相2線200V入出力が可能な常時インバータ方式14000VA/12000Wおよび18000VA/16000WのUPS。タワー型・ラック型どちらの設置も可能で、ラック搭載時は12Uのサイズとなる。製品前面に設けたLCDパネルにより、さまざまな情報を表示することが可能。また、入出力のハードワイヤトレイが取り外しできるため、設置工事の際のサービス性も向上している。大型のネットワークスイッチやブレードサーバーなど大容量の電力を必要とする環境に最適という。

 価格は、Smart-UPS RT 14kが211万9215円、Smart-UPS RT 18kが275万5095円。発売日は9月30日。

 なおSmart-UPS RTシリーズとしては、「Smart-UPS RT 5k/8k/10k」がラインアップされている。これらに中容量帯の製品を追加することで、「小型UPS市場だけでなく、中容量UPS市場でもリーダーを目指す」(代表取締役社長の内藤眞氏)狙い。

Smart-UPS RT 18kサーバー集約などにより高密度化したラックでの使用に最適

 このほか、より高可用性・高容量の新シリーズとして、三相200Vの電源環境に適したSmart-UPS VTを投入する。小型UPSと大容量UPSの間を埋める位置づけでありながら、三相入力製品群の中ではコンパクトモデルとなる。ラインアップは「Smart-UPS VT 20/30kVA タワー型」と「Smart-UPS VT 20/30kVA ラック型」。

 出力容量は20/30kVAで、三相3線/4線200Vの電源に対応。主要な電源回路はモジュール化されており、メインとバイパスの2経路を搭載する。内蔵の保守バイパス回路に切り替えることにより、負荷停電することなく交換することが可能。電源モジュールはホットスワップ式のため、UPS運転中の交換およびモジュール増設も可能となっている。SNMPによる遠隔監視・制御機能も充実しており、高い管理性と保守性を持ちながら、コストパフォーマンスに優れた製品という。

 価格は、タワー型の20kVAが326万9175円、30kVAの483万8190円、ラック型の20kVAが589万4175円、30kVAが746万3190円。発売日は7月16日。

Smart-UPS VT 20/30kVA。左がタワー型、右がラック型Smart-UPS VTの特徴
ビジネス・デベロップメント部 ディレクターの有本一氏
1システム1UPSの概要。サーバー、ストレージ、ネットワークを1台のUPSに接続。電源障害時に時間差停止を実現することで、システムの安全なシャットダウンを実現する

 ビジネス・デベロップメント部 ディレクターの有本一氏は、新製品の狙いを「データセンターで仮想化によるサーバー統合が進むにつれ、UPSに要求される電源容量が大型化している。サーバー統合に関しては多くの企業がノウハウを有すようになったが、単一システム上でさまざまなアプリケーションが稼働する仮想化環境では、実は“電源障害時の対応”が非常に重要。電源障害が発生した際、仮想サーバー上の多数のアプリケーションを完全停止させるためには、従来よりも長いシャットダウン時間が要求されるためだ。にもかかわらず、これまでこの点は見過ごされてきた。今回の中容量UPSは、電源容量の大型化、シャットダウン時間の長時間化という課題に対する最適な製品となる」と説明。

 また、外部ストレージの増加も電源対策を複雑にする点に触れ、「サーバーと外部ストレージがネットワークを通じて接続されるような環境では、電源障害時にサーバー、ストレージ、ネットワークの順で停止しなければならない。逆に復旧時には逆の手順が必要となるのだが、従来のように、IT機器1台にUPS1台を設置する環境では、こうした時間差を作り出すために、それぞれのUPS間で連携設計を行わなければならない。この連携は非常に複雑なほか、UPSのバッテリ劣化などにより、せっかく行った時間差設計が崩れることもあり、管理費増大や人的ミスを招く原因となっている」(同氏)とした。

 今回の中容量UPSは、こうした課題への打開策となる。「IT機器ごとにUPSを接続するのではなく、サーバー、ストレージ、ネットワークで構成されるシステムに1台の中容量UPSを接続し、時間差シャットダウンを容易に実現するソフト『PowerChute Network Shutdown』を組み合わせることで、安全な電源停止が実現する」(同氏)。

 APCでは、この手法を「1システム1UPS」というコンセプトで訴求している。今回の新製品で同コンセプトをさらに推進する。小型UPS市場でトップシェアを持つ同社は、今回の中容量UPSの拡充で、データセンターやサーバールームのITシステムに、これまで以上に安全でシンプルな電源対策を提供していくとする。




(川島 弘之)

2009/7/16 17:30