マイクロソフト、Windows 7の法人向けライセンス販売を開始
代表執行役社長の樋口泰行氏 |
Windows 7の基本機能の強化ポイント |
マイクロソフト株式会社は9月1日、Windows 7の法人向けライセンス販売開始を迎えたことから、あらためてWindows 7の強化ポイントや企業の早期導入状況を説明する記者会見を開催した。
代表執行役社長の樋口泰行氏はWindows 7の開発ポイントとして、「お客さまから学ぶという視点のもと、日本をはじめ200カ国、1万1000ユーザーからフィードバックをちょうだいした。日本に限定しても数千のフィードバックを受けたが、われわれマイクロソフト日本法人の社員も、調布に在籍している技術スタッフに限らず、全社員が積極的にバグだし作業に協力してきた」と、主にWindows Vistaユーザーの声を反映し、機能改善を進めた製品であることを強調した。
実際の機能強化ポイントについては、コマーシャルWindows本部の中川哲本部長がデモを交えて紹介していった。
まず、ビジネスユーザーがストレスを感じることが多い起動時間を大幅に短縮し、現在利用されているPCの標準的なスペックであるCore 2 Duoプロセッサに、2GB程度のメモリを搭載したもので、スリープ状態からの起動が2秒程度で完了。コールドブートからの起動についても、ハイスペックPCの機能をフルに生かして、18秒程度で立ち上がる様子を実演した。
Atomプロセッサを搭載したネットブックを利用している場合でも、PCへの負荷が高いフリップ3Dを高速に表示することが可能で、2年から4年前に標準的だったスペックのPCを利用した場合でも、起動、負荷の高いアプリケーションを動かすといったことが楽に行えることをデモで紹介した。
Windows Vistaの普及を妨げる大きな要因となった互換性についても、事前チェック、互換機能、互換ツール、仮想化技術、取得しやすくなったロゴプログラム、という5つの取り組みを実施。仮想化技術「Windows XP Mode」の提供で、Windows XP用アプリケーションをWindows 7で動作させることも可能となる。
「IT部門の方が、エンドユーザーにはトラブルが起こっている画面は見せたくない場合には、Application Compatibility Toolkitを使って事前に登録しておけば、エラー画面を一切見せなくて済む」(中川本部長)。
Word、Excelそれぞれの画面を並べて表示し、さらに利用していないアプリケーションもサムネールツールバーによってわかりやすく表示 | 代表的なWindows XPアプリケーションであるInternet Explorer 6も、仮想化技術「Windows XP Mode」を利用することで利用可能に |
これらのデモを受けて樋口社長は、Windows 7登場によるビジネス機会として、「日本にはおおよそ7000万台のPCが存在する中で、法人市場にはすでに購入から3年以上を経過して買い換えが必要なPCが約1631万台、Windows 7へのアップグレードが可能なPCが約1820万台存在し、一般では買い換えが必要なPCが1929万台、Windows 7へのアップグレードが可能なPCが1598万台存在する」と述べ、マーケット規模が約7000万台あると指摘した。
このマーケットに向け、法人向けの移行支援として、東京・大手町に10月6日に開設するテクノロジーセンター、マイクロソフト社員による導入設計を行うコンサルティングサービス、早期アップグレードキャンペーンを行う。
こうした支援策が功を奏してWindows 7への移行が進めば、「当社だけの影響ではなく、PC市場全体を活性化していくことを想定した場合、調査会社のIDCのデータでは2010年末までに1000万本のWindows 7が導入され、大企業の60%が3年以内にWindows導入を行う。ITビジネスを行う企業では3500社、17万人がWindows 7関連製品やサービス開発に携わることで、当社単体の収益の約24倍となる、トータル8250億円の収益があがるというデータが出ている。さらに、関連製品やサービスを含めると、2010年までに2兆3000億円の売り上げが見込めるという試算もあり、PC業界に大きな収益をもたらすことになる」(樋口社長)と、PC市場全体に大きなプラス効果があると強調した。
Windows 7のビジネス機会 | Windows 7が日本経済に与える影響 | パートナーのビジネス機会を拡大する |
企業ユーザー向けソリューションとしては、アプリケーション移行支援サービスや導入展開、サーバー連携ソリューション、MDOPサービスなどを行う企業21社から、31種類のソリューションが発表されている。
早期採用を表明している企業は、Windows Vistaの時が18社にとどまっていたのに対し、これまでで最高となる163社が採用を表明している。
周辺機器やソフトの対応については、RC段階で売れ筋製品のおおよそ8割が対応を表明しており、主要218社、約6000人がトレーニングを受けるなどWindows Vistaの2.5倍の対応製品がそろうことになる見込みだ。
Windows早期採用を表明している企業数は過去のWindows製品で最多となる163社に | 対応している周辺機器、ソフトの数 |
また、Windows 7に新たに搭載された機能として、センサーに対応したAPIが説明された。
「これまでは、各メーカーが個別にセンサーへの対応をはかっていたが、その場合、A社のハードウェアを利用する場合には、必ずA社のソフトが必要となるといった具合に制限が多かった。今回、OSとしてセンサー対応をはかったことで、ビジネス機会の拡大と、参入障壁の低減を実現する」(中川本部長)。
センサー対応によって考えられる新しい活用法として、PCが周囲に人がいないことを察知して室内の明かりを消すといった使い方や、周囲の明るさに応じて自動的にPCの画面を明るくしたり、暗くしたりするといった使い方も可能だとしている。
「当社はデスクトップ用Windowsだけでなく、携帯電話などモバイル機器用、組み込み用などファミリー製品を持っていることが大きな強みだが、これらファミリー製品が同一にセンサー対応の同一APIを持たせるといったことも検討している」(中川本部長)。
Windows 7がセンサーAPIを搭載したことによる可能性 | フリースケールが開発した明るさに反応するボードとPCを接続すると、周囲の明るさに応じて自動的にPCの画面を明るくしたり、暗くしたりする機能を持たせることもできる |
2009/9/1 15:52