3DもAeroも再現する「PCoIP」など、今後のクライアント仮想化技術を公開
米VMware主催の仮想化関連イベント「VMworld 2009」が8月31日~9月3日(米国時間)まで米サンフランシスコで開催されている。9月2日には、米VMware、CTOのDr. Stephen Herrod氏が登壇し、「The Future of Virtualization: From the Mobile Phone to the Cloud」と題して講演を行った。
■ユーザーセントリックな環境を実現する「VMware View」
米VMware、CTOのDr. Stephen Herrod氏 |
VMwareのデスクトップ仮想化の取り組み。WANやLANに対しては、独自の転送プロトコル「PCoIP」を提供。ローカルPCに対しては、仮想環境を物理マシンに組み込む「Client Virtualization」を提供する |
Herrod氏はまず、仮想デスクトップの現状を紹介。「仮想デスクトップ製品のVMware Viewは7000以上のユーザーが採用し、100万台以上のデスクトップを出荷している」と、多くの企業で利用が始まっていると説明。「仮想デスクトップで重要なのは、ユーザーがどのような体験が得られるかだ」と、ローカルPCと違いのない環境を仮想デスクトップでも提供できることの重要性を強調。
これを実現するものとして、WANやLAN環境向けに独自の転送プロトコル「PCoIP」を、ローカルPC向けにはClient Virtualizationを提供すると発表。「PCoIPを利用することで、Windows VistaのAeroや3Dグラフィックスなどを、仮想デスクトップ環境でも利用できる。また、Client Virtualizationを利用することで、企業で利用するPCを個人所有のものにすることも可能になる」と、仮想デスクトップとの組み合わせにより、ユーザー中心のデスクトップ環境が実現できると述べた。
PCoIPにより、ローカルPCと同じユーザー体験をVDI環境で利用可能に | VMware ViewでPCoIPを利用したデモ。3DグラフィックスやAeroなどが再現されているのがわかる | ローカルPCのディスプレイドライバではなく、仮想マシンの「VMware SVGA 3D」が使われているのがわかる |
VMware Viewの利用例。リモート環境から同じデスクトップを利用できる | iPhoneからもアクセス可能。画面はWYSEのVMware View対応アプリ | 物理デバイスに依存することなく、同じデスクトップにアクセスできるのがわかる |
モバイルに関しては、VMware Viewで紹介したように携帯端末をシンクライアントとして利用するほか、vCenterの管理端末として利用していると説明。また、携帯電話の仮想化を実現する「VMware MVP(Mobile Virtualization Platform)」にも取り組んでいることも発表した。
VMwareのモバイル戦略。シンクライアントとして利用するほか、vCenterの管理端末として、そして携帯電話そのものの仮想化にも取り組んでいる | VISAの携帯端末用アプリケーション。Windows CE上でAndroidベースのアプリケーションが起動している |
■進化を続けるvSphere
VMotionは仮想マシンだけでなく、ストレージやネットワークにも応用。さらに長距離でのVMotionまで拡大していく |
次に社内クラウド環境の基礎となるvSphereを紹介。vSphereの中核テクノロジーのひとつであるVMotionについて、Herrod氏は、「VMotionは、仮想マシンの移動から始まり、Storage VMotion、Network VMotionと拡大してきた。そして現在、長距離でのVMotionの評価を行っている」と、VMotionひとつを見ても進化し続けていると強調した。
「vSphereで使われているESXも大幅にパフォーマンスを向上させている。また、VMware DRSやVMware DPMなどを採用することで、リソースや電力消費の最適化機能を強化している」と述べた。
サーバーリソースの動的な配置を実現するVMware DRS(Distributed Resource Scheduler) | 将来的には、HDDなどI/Oにも適用していく | 電力消費を最適化するVMware DPM(Distributed Power Management) |
基調講演では、2010年上半期の出荷が予定されているVMware vCenter ConfigControlも紹介。ConfigControlは、仮想マシンの構成情報を監視する製品で、問題が発生した場合に、ビジュアル化された画面上でドリルダウンしながら問題箇所を確認できるのが特長。また、ポリシーベースのアラート機能も用意されているので、問題が起きたときにすぐに対応することもできる。
2010年上半期の出荷を予定している「VMware vCenter ConfigControl」 | ConfigControlは仮想マシンの構成情報を監視する製品 | 問題が発生した場合、問題となっている箇所をビジュアル化されたUI上で確認できる |
■長距離VMotionの実証実験例を紹介
クラウド関連では、長距離VMotionをあらためて紹介。「クラウドを実現する上で重要なのは、内部クラウド。これをしっかりと構築したのち、互換性のある形で外部クラウドを構築することになる」と述べ、VMwareはこの両者の架け橋となる活動を継続していると紹介。
長距離VMotionについて、「サイトリカバリーのニーズが内部と外部のクラウドの接続でもっともニーズのあるもの。長距離VMotionは、仮想マシンに対して割り当てられているメモリ量やディスク容量、ネットワークIDなどを考慮する必要があり、実現するにはさまざまな課題がある」と、難しい技術であると強調。「VMwareだけで長距離VMotionは実現できない。パートナーとの協力関係が重要」と、パートナーと協力して進めていると紹介した。
Herrod氏が紹介したのが、CiscoとF5の実証実験。Ciscoは、200km離れたデータセンター間を同社のData Center Interconnectを利用して長距離VMotionを実現。F5は、WAN経由の通信を最適化するiSessionsを使って長距離VMotionを実現したと紹介した。
メモリやディスク容量、ネットワークIDなど、長距離環境でのVMotionにはさまざまな課題が存在 | Ciscoの長距離VMotionの例。Data Center Interconnectを使って200km離れたデータセンター間でのVMotionを実現 | F5の長距離VMotionの例。WAN経由の通信を最適化するiSessionsを使って実現している |
■PaaSを第4の事業に
これまで、同社は「データセンター」「デスクトップ」「クラウド」の3つを柱に事業展開してきたが、今回新たに「vApps」が追加された。このvAppsを実現するのが、先日買収を発表したSpringSourceの製品群。SpringSourceの製品をフルパッケージング化し、仮想環境で実行することで、PaaS(Platform as a Service)として展開できると紹介した。「これまでVMwareはIaaS(Infrastructure as a Service)を仮想環境で提供していたが、SpringSourceと連携することで、PaaSとして提供することが可能になる。これにより、お客さまはPaaS上で稼働させるアプリケーションをすぐに運用できるようになる」と、サービスをすぐに展開できるメリットを紹介。「今後、RubyやPhyton、.NET、PHPといったフレームワークにも対応することで、PaaS事業を進めていく」との考えを表明した。
SpringSourceの買収により、vAppsが同社の新たな柱になると紹介 | SpringSource製品と接続することで、PaaS環境を提供できると説明 | SpringSourceのEnterprise Java以外も含めた形でPaaS事業を展開する考えを表明 |
2009/9/3 07:30