SaaS/PaaS/IaaSの相互接続をめざすアライアンス、ネットワンが発足へ

具体的なクラウドサービスモデルを検証

ネットワン 代表取締役会長の澤田脩氏

 ネットワンシステムズ株式会社(以下、ネットワン)は9月10日、国内におけるオープンなクラウドサービス市場創出を目的に「クラウド・ビジネス・アライアンス(CBA)」を、11月上旬に発足すると発表した。グローバルスタンダードにのっとって、Software as a Service(SaaS)/Platform as a Service(PaaS)/Infrastructure as a Service(IaaS)を自由に相互接続させる共通APIや、イメージ先行ではない実際のクラウドサービスモデルを検証していく。

 クラウドサービスには、SaaS/PaaS/IaaSと階層化されたサービスが存在する。これまでにもクラウドのコンソーシアムは登場しているが、「それらはSaaSを軸としたもので、PaaSやIaaSもきちんと検証しているものは少なく、そのため、具体的なクラウドの利用方法や構築手法が見えてこなかった」(ネットワン 代表取締役会長の澤田脩氏)という。

 CBAでは、グローバルスタンダードの技術により、SaaS/PaaS/IaaSの相互接続性を実現する共通APIを評価検証・実証・公開し、実際のクラウドサービスモデルを創出することを目的としている。背景にあったのは、「サービス利用者にとってクラウドのメリットは依然として不明確。そこで、SaaS/PaaS/IaaSを含めてクラウドサービス全体を体系化する」(澤田氏)、その必要性だ。

 完全にオープンなクラウドを実現することで、「利用者は状況・要望に応じて、サービス提供環境を意識することなく、必要なサービスが利用可能。例えば、プライベートクラウドをその後のユーザー数拡大に伴い、そのままパブリッククラウドに移行することも容易となる」(同氏)という。

 具体的な活動内容としては、SaaS←→PaaS←→IaaSの相互接続性を確保するため、それぞれのイネーブルフレームワークを整備する。具体的には、OSSなどを基に共通APIや運用管理のためのプロビジョニングツールの評価・検証を実施。そのナレッジやツールを公開し、各サービス事業者などへ提供する。共通APIで相互接続性を確保すれば、SaaS/PaaS/IaaSの違いが明確になる。SaaSとPaaSは完全に切り離されることになるため、エンドユーザーにとっては、必要なSaaS(アプリケーション)を自由に選ぶかのように最適なPaaSを選択できるし、SaaS事業者にとっても最適なIaaSは何か、その判断基準が明確になる。要はエンドユーザーにはメリットが分かりやすく、事業者間では連携しやすいオープンクラウドが実現するというわけだ。

 さらにいうならば、「利用者の要望からSaaS要件を、SaaS要件からPaaS要件を、PaaS要件からIaaS要件を順々に定めることが可能となるため、利用者視点でクラウドの標準化が実現する」(同氏)という。

SaaS/PaaS/IaaSの相互接続性を実現する具体的にはAPI評価・実装などを進め、具体的なサービスモデルも検証する利用者視点でクラウドの標準化が可能
SaaSやPaaSを購入するシステムのトップ画面

 なお発表会では、CBAが実現を目指す1つの形として、エンドユーザーがSaaSやPaaSを購入するシステムが紹介された。まず必要なSaaS(ソフトウェア)を選択すると、次にPaaSの選択画面が現れる。「ユーティリティ型」「SLA99.99%保証」「専用サーバー型」「PCIDSS準拠」など、PaaS事業各社の特徴から必要な要件を選び、利用ユーザー数を登録すると、その場で金額が表示され、環境を購入することができる。

グループウェアの「Aipo4」を選択。ソフトウェアの詳細が表示される次にPaaSを選択する。「ユーティリティ型」「PCIDSS準拠」など各社の特徴が表示されるエクシードの「Libra」を選択

ユーザー数を決定金額が表示されるその場でクラウド環境を購入できる

 正式発足は11月上旬。現時点では「SaaS事業者」としてエイムラック、オロ、コネクティ、スマイルワークス、ソリトンシステムズや、フレームワーク整備などを行う「SaaSイネーブラー」としてイーダブリュエムジャパン、ビープラッツなどが参加。そのほか「PaaSイネーブラー」としてエクシード、「IaaSイネーブラー」としてネットワンが名を連ねる。これ以外にも10月よりメンバーの募集を開始し、11月上旬の正式発足とともに各部会の活動を開始する予定。12月にはサービスモデル実証を開始し、2009年中に一部仕様の公開を果たすとしている。

 正式発足を前にして、今後どのような企業を募集していくのか、売り上げの配分をどうするのか、決めなければならないことは山積みだ。現在、アライアンスそのものをどういう骨組みにするかといった検討が鋭意進められている。中でも募集企業については、「来るもの拒まず」とコメント。現在のメンバーはSaaSビジネス単独で展開する中小企業がほとんどだが、「今後は、キャリアも含め大企業、あるいはAmazonやGoogleなど海外PaaS事業者との提携もあるだろう。さらに国内でもすでに独自にクラウドを進めている企業とも、シナジーの余地はある」(同氏)とする。

 また環境構築には現状、米3teraのクラウドOS「AppLogic」が活用されている。これはPaaSなどを構築・運用するための環境を一括して提供するソフトで、オープンソースのXenがハイパーバイザーとして利用される。AppLogicが利用されている理由は、ネットワンが国内総販売代理店の権利を持つがゆえだが、「今後は、VMwareやCitrixなどを取り組む必要も出てくるだろう」(同氏)と述べている。

現時点でのメンバー今後のロードマップSaaS/PaaS/IaaSの各レイヤと対象領域






(川島 弘之)

2009/9/10 15:09