「複雑さが増す仮想化には“完全”な管理ソリューションが必要だ」-米Microsoft


 仮想化によって環境が複雑になるにつれ、運用管理製品が注目を集めることも多くなってきた。マイクロソフトでは、さまざまな管理製品をSystem Centerブランドでリリースしているが、Windows環境との親和性などを強みとして、順調に売り上げを伸ばしている。2009年度も、他社が売り上げを落とす中で30%の成長を達成した同ブランドの責任者、米Microsoft マネージメントアンドソリューションディビジョン、コーポレートバイスプレジデントのブラッド・アンダーソン氏に、最新のトピックについて話を聞いた。

米Microsoft マネージメントアンドソリューションディビジョン、コーポレートバイスプレジデントのブラッド・アンダーソン氏

 ITの世界は、メインフレームからクライアント/サーバーシステム、Web、そしてクラウドへと変革しているが、エンタープライズの世界ではこれらが切り替わるのではなく、依然として混在しており、そこに新しいものが加わるという形をとる。従って、「企業はそれらをすべて管理できるソリューションを求めているし、その上でクラウドのメリットを享受したいと思っている」と、アンダーソン氏は話す。

 そこでMicrosoftでは、多くのプラットフォームを一元管理できるソリューションを提供すべく、開発を進めているという。最近リリースされた「System Center Operations Manager 2007 R2」では、Linux/UNIXをサポートし、管理対象をWindows以外にも拡大した。さらに今後は、プライベートクラウド(エンタープライズクラウド)、パブリッククラウドにまで適用範囲を拡大し、1つの統合された管理ソリューションとして提供できるよう、機能を強化していくという。

 具体的には、サーバーアプリケーションの仮想化に取り組んでいる。「100%仮想化されたデータセンターがあって、1000台の物理サーバーがある環境であれば、管理すべき仮想マシンは最低1000個存在する。そうすると、OSのパッチが提供された場合、1000台すべてに適用しなくてはならない」(アンダーソン氏)というのが、現在の仮想化ソリューションである。しかしアンダーソン氏は、「OSとアプリケーションを切り分ければ、お客さまが保守しなくてはいけない仮想マシンの数を簡素化できる」という点を指摘。「新しいサーバーには、OSとどのアプリケーションが必要なのかを判断し、リアルタイムでそれを組み合わせる仕組みを導入すれば、管理対象となるOSの数は激減する。次期リリースでこうした機能が提供されれば、OSのイメージは1つ、あるいは2~3個持てば良くなるだろう」とした。

 こうして、現在すでに実現されているハードウェアレイヤの仮想化だけでなく、アプリケーションレイヤの仮想化が実現されれば、劇的なコスト削減が期待できるプライベートクラウドの展開が現実味を帯びてくる。しかし、企業システムはすべてがプライベートクラウドに移行するわけではなく、旧来のシステムやパブリッククラウドも併用することが求められるため、System Centerでは、これらを1つのコンソールから管理できるようにするとした。

 またアンダーソン氏は、次のソリューションとして、「パブリックとプライベートの両クラウドのキャパシティを、1つのコンソールから見たい、その中から選択して使っていきたい」という要望があると紹介。インターネットを介して、2つのクラウド環境が、標準のプロトコルでコミュニケーションできるようにしていくとの展望を語った。

 なお、仮想化によってシステムが統合されると、逆に管理における複雑性が増してしまう、という指摘がなされることも多くなった。これについてアンダーソン氏は、「仮想化のメリットを本当に享受するためには、OS、アプリケーションなどすべてを管理できる、強力な管理ソリューションがなくてはいけない」という点を強調する。

 その上で、「現在市場に出ている仮想化製品では、完全な管理を提供し切れていない。例えばVMwareでは、アプリケーションは理解できていないし、従来型のデータセンターについても理解していないだろう。そうするとお客さまは複数の管理製品を展開することになり、複雑化を招いている。当社では、単一のソリューションですべてのレイヤを管理していく。仮想化の本当の価値を提供できるのは管理ソリューションだ。また当社のソリューションは、VMwareの1/6の価格であり、言い換えれば、1/6の価格でより完全なソリューションを提供しているということ」と、自社製品のメリットをアピールした。

ユーザー中心のデバイス管理実現に向け、クライアント管理製品を強化

 サーバー/データセンター環境からクライアント環境に目を移すと、そこでは「エンドユーザーが作業したいと考えるコンシューマ向けのデバイスが増えるなど、デマンドが変わってきている」(アンダーソン氏)という変化がある。これによってIT側には、「どのデバイスを使っても、エンドユーザーが高い生産性を上げられるように」という要求が来ているし、従来通り、予測性、コンプライアンスといった要件もまた求められている。

 こうした要求に応えるために、最新クライアントOSのWindows 7には、DirectAccessやBranch Cacheといったリモートアクセス支援の機能が搭載されたほか、AppLockerやBitLocker To Goなど、セキュリティ/コンプライアンス強化のための仕組みも備えられた。さらに2010年には、サービスデスク製品の「System Center Service Manager」をリリースし、ほかのSystem Center製品と連携して、クライアントPCのライフサイクルをすべて管理できるようにする計画という。アンダーソン氏によれば、こうした機能は統合クライアントライセンスとして提供されている「Enterprise CAL」にも統合され、その価値を強化する予定とのことで、「セキュアなデスクトップ管理のために当社から何を購入すればいいのか、と聞かれれば、Enterprise CALと答えることになるだろう」とした。

 しかし、クライアント環境の管理ということに目を向ければ、前述したようなユーザーの要求から、「これはOSだけの話ではない」ともアンダーソン氏は指摘する。そこでSystem Center製品では、さまざまなクライアントデバイスを、ユーザー中心の考え方で適切に管理していけるような機能を提供するとのこと。そのための柱となるのは、やはり仮想化技術とのことで、「Windowsが動いていないスマートフォンなどでも、ターミナルサーバーなどの技術を使えば、Windowsアプリケーションへのアクセスを提供できる。リアルタイムでユーザーの作業環境を判断し、最適な方法でデバイスへアプリケーションを配信することも可能になる。すでに技術は存在していても、ひとまとめに提供していくことはどこもやっていない。すべてまとめて共通の方法で管理できるようにしていくところに、当社のビジネスチャンスがある」と述べた。

 またMicrosoftは、クラウドサービスとしてクライアント管理機能を提供することも計画している。「当社の戦略の中核であるソフトウェア+サービスでは、選択肢をお客さまに提供できるメリットがあるが、サービスとしては、『System Center Online Desktop Manager』を、2010年の夏に英語版から提供開始する予定だ。このサービスでは、デスクトップ管理、稼働監視、構成管理、リモートコントロール、セキュリティなどの機能を提供するほか、1年に2度のペースでアップデートする予定。次期リリースでソフトウェア配布、Active Directoryの統合機能なども追加する」と、サービスを紹介。「世界最大のクラウドだと思っているWindows Updateと同じプラットフォームを利用しており、セキュリティ、スケーラビリティ、信頼性を提供できる。完成されたデスクトップ管理機能を、(パブリック)クラウドからサービスとして提供する」とも述べた。

 なお、Microsoftの調査によれば、最初の段階では中堅・中小企業での採用を見込んでいるものの、エンタープライズからの関心も高いとのことで、アンダーソン氏は「これを利用すればインフラ管理から解放され、正社員は、自分の本来の業務に価値を付加することに集中できるだろう。そういったことから、SMBのみならずエンタープライズでも引きがあると思っている」と話している。




(石井 一志)

2009/9/30 09:00