富士通、2009年度上期連結決算は減収減益-営業利益は大幅改善

Windows 7搭載PCの発売1週間の数値は前年比20%増

 富士通株式会社は10月28日、2009年度上期連結決算を発表した。売上高は前年同期比10.9%減の2兆1866億円、営業損益は前年同期の385億円からマイナス182億円の赤字。税引前損益は前年同期の290億円の黒字からマイナス297億円の赤字に、当期純利益は前年同期比833.6%増の432億円となった。

執行役員上席常務の加藤和彦氏

 「欧州市場における不透明感やPC事業が厳しい状況にあるが、営業利益は、すべてのセグメントにおいて改善している」(執行役員上席常務の加藤和彦氏)という。

 また、第2四半期の実績は、売上高が10.5%減の1兆1423億円、営業利益が42.2%減の189億円、経常利益が50.9%減の101億円、当期純利益は681億円増加の724億円となった。

 営業利益は7月時点で150億円の上方修正をしていたが、さらにこれを167億円上回る改善となっている。また、前年度まで持分法適用会社であった富士通テクノロジー・ソリューションズ(FTS)およびFDKを連結子会社化した影響や、為替の影響を除いた実質増減率は売上高で15%減となった。一方で、ファナックの自己株式買い付けに伴い、保有全株式を売却したことなどで、株式売却益895億円を特別利益に計上。また、ロジックLSIの製造体制の再編や間接業務の効率化などに伴う人員配置にかかわる費用で211億円、海外事業の構造改革費用で約30億円などを特別損失に計上した。

 第2四半期のセグメント別業績では、テクノロジーソリューションの売上高が前年同期比8.8%減の7541億円、営業利益が23.3%減の376億円。そのうち、サービス事業の売上高は7.1%減の6028億円。営業利益は23.1%減の302億円。サービス事業のうち、ソリューション/SIの売上高は17.1%減の2785億円、インフラサービスは3.8%増の3107億円。

 「ソリューション/SIでは、公共、医療は底堅い需要があるものの、産業、流通、金融で厳しい状況にあり、米国の民需も厳しい状況にある。インフラサービス事業では国内のアウトソーシングが着実に拡大しつつあるが、米国で新規民需ビジネスの開拓が厳しい」とした。

 テクノロジーソリューションのうち、システムプラットフォームの売上高は15.0%減の1512億円。営業利益は24.1%減の74億円。そのうち、システムプロダクトは12.1%減の790億円、ネットワークプロダクトは17.9%減の722億円となった。

 「システムプロダクトは市場全体の成長率がマイナス20%となっているなかでは堅調な実績。サーバーの落ち込みは少ない。ネットワークプロダクトでは、NGN関連が第2四半期も高い水準で推移しているが、携帯電話の基地局需要がLTEまでの端境期に入っているのが影響した」という。

 ユビキタスプロダクトソリューションの売上高は5.5%減の2358億円、営業損失は24億円悪化し、マイナス35億円の赤字。パソコン/携帯電話の売上高は15.0%増の1897億円、HDDは46.2%減の427億円。

 「PC事業は国内は店頭市場・企業向けも厳しい状況にあり、欧州では大きな減収となった。PCは公表値よりも悪い実績となっているが、携帯電話はコストダウン効果もあり堅調。だが、HDDの赤字分を吸収できなかった」とした。

 PC事業に関しては、上期実績は33%減の247万台。通期見通しは7月公表値に比べて40万台減の前年比18%減の610万台へと修正した。

 「海外のPCは厳しい状況にあり、落ち込みが見られる。国内はWindows 7の発売もあって、当初計画通りとするが、5000円から1万円高いタッチ機能を搭載したPCが売れることに期待している。Windows 7の発売1週間の数値は、前年比20%増となっており、Windows Vistaの発売時が10%増だったことに比べると出足はいい。この勢いが11月で終わってしまうと計画倒れになってしまう」などとした。

 携帯電話の上期出荷台数は8%増の270万台。通期の見通しは7月公表値に比べて40万台増加の500万台に引き上げた。携帯電話は開発投資の前倒しなどを進めているという。

 デバイスソリューションは、売上高が23.2%減の1372億円、営業損失は9億円改善したものの、マイナス16億円の赤字となった。そのうちLSIの売上高は31.3%減の787億円、電子部品その他は8.7%減の584億円となった。

 また、同社では、2009年度の通期見通しを下方修正した。

 売上高は、8月21日の公表値に比べて200億円減少の4兆8000億円(前年比2.3%増)としたが、営業利益の900億円(同30.9%増)、経常利益の700億円(同365.1%増)、当期純利益の950億円(同2073億円増)には変更はない。売上高における200億円の修正は海外テクノロジーソリューション事業の売上高の修正によるもの。また、ユビキタスプロダクトソリューション事業においては、国内は150億円増の6150億円の売り上げ計画とする一方、海外売上高は150億円減の3250億円とした。

 また、営業利益のうち、デバイスソリューションで50億円の下方修正。全社的な費用効率化を進めたことなどにより、消去または全社として50億円増とした。

 なお、加藤執行役員上席常務は、「社長交代は業績は今回の修正には影響していない」とした。

 また、富士通では、指名・報酬委員会を設置することを、10月28日の取締役会で決定した。取締役の選任プロセスの透明性、客観性の確保、役員報酬の決定プロセスの透明性・客観性、役員報酬体系・水準の妥当性の確保を目的として、取締役会の諮問機関として、株主総会に提出する取締役選任議案、株主総会に提出する役員報酬議案、取締役、執行役員報酬の役位別支給額の算定基準の原案を策定する役割を担う。

 委員長には、取締役でありアドバンテスト相談役の大浦溥氏が、委員には社外取締役で一橋大学名誉教授の野中郁次郎氏、富士通の間塚道義社長で構成する。





(大河原 克行)

2009/10/29 00:00