富士通、2008年度連結決算は減収減益-HDD事業売却も発表

野副社長、「2009年は堪え忍ぶ年ではなく変革につながる年に」

代表取締役社長の野副州旦氏

 富士通株式会社は4月30日、2008年度連結決算を発表した。売上高は前年比12%減の4兆6929億円、営業利益は前年比66.5%減の687億円、経常利益は前年比90.8%減の150億円、当期純損益は前年の481億円からマイナス1123億円と大幅な減収減益となった。

 代表取締役社長の野副州旦氏は、「100年に一度といわれる景況感の中、予算に大きく未達となったことに責任を感じている」と謝罪。「とはいえ、営業利益は2月の下方修正の値を上回るなど、富士通が進めている改革の効果が出ていると感じている」と、景気の影響を受けながらも、テクノロジーソリューションで増益を実現できている点などを強調した。

 セグメント別に見ると、テクノロジーソリューションが、売上高が前年比6.0%減の3兆770億円、営業利益が前年比85億円増の1887億円。このうち、サービス事業の売上高は、前年比5.1%減の2兆4277億円。システムプラットフォーム事業の売上高は、前年比8.9%減の6493億円。

 サービス事業に関しては、公共分野や金融分野を中心としてSIビジネスが伸長。また、17.0%の減収となった海外も、為替の影響を除くと5%の増収となった。システムプラットフォーム事業に関しては、キャリア向けルータ装置が伸長。UNIXサーバーが欧米での景気悪化の影響を受けたほか、前年度に新機種を販売したことによる一時的な需要の重複が生じたことなどにより、海外は25.8%の減収となっている。

 ユビキタスプロダクトソリューションは、売上高が前年比20.2%減の9491億円、営業利益は前年比520億円減の5億円。このうち、パソコン/携帯電話事業の売上高は前年比18.4%減の6833億円、HDD事業の売上高は前年比25.2%減の2490億円。

 パソコン/携帯電話事業は、価格競争激化のほか、企業向けの販売不振などによりパソコンの出荷台数は736万台(2007年度は881万台)となり減収となったほか、買い換えサイクルの長期化の影響を受け、携帯電話も出荷台数が460万台(2007年度は590万台)と不振となったことが影響。また、海外は低価格PCの影響を受け、大幅な減収となった。

 HDD事業はノートPC向け、サーバー向けともにグローバルな競争激化の影響を受けたほか、HDD用ヘッドの生産減少もあり損失が拡大。HDD事業に関しては、同日付でドライブ事業を東芝に、記憶媒体事業を昭和電工にそれぞれ事業譲渡することも発表している。

 デバイスソリューションは、売上高が前年比26.2%減の5876億円、営業損益は前年比902億円減のマイナス719億円。そのうち、LSI事業の売上高は、前年比23.3%減の3903億円、電子部品他の売上高は前年比31.5%減の1973億円。ロジックLSIに関しては、第2四半期後半以降、在庫調整の影響を受けて大幅な減収。また、携帯電話向けフラッシュメモリ、電子部品も市況悪化の影響により減収となった。

 説明会では、2009年度の業績見通しも発表。売上高は4兆8000億円、営業利益は800億円、経常利益は600億円、当期純利益は200億円を見込んでいる。セグメント別では、テクノロジーソリューションが、売上高は3兆2600億円、営業利益は1750億円。ユビキタスプロダクトソリューションが、売上高は9300億円、営業利益は50億円。デバイスソリューションが、売上高は5200億円、営業損益はマイナス150億円。

 2009年度の見通しについて、野副氏は「回復の兆しがあるといわれたりするが、個人消費の低迷は続くとみており、引き続き厳しさが続くことを前提にビジネスを進める。とはいえ、2009年を堪え忍ぶ年にするのではなく、(景気が回復するであろう)2010年からの大きな成長につながるよう、変革に向けた年にしていく。中期事業計画に関しては、現在新しいものを策定中であり、近日中に発表する」と、厳しい中でも次に続く取り組みを積極的に進める考えを改めて強調した。

 なお、米Oracleの米Sun Microsystems買収によるSPARC事業への影響については、「日本市場においては、SPARC対応のアプリケーションはかなりあり、ほかのプラットフォームで吸収できるようなものではない。現時点で富士通として何かいえる立場にはないが、SPARCビジネスを守ることは富士通の命題」(野副氏)と述べ、引き続きSPARCビジネスを継続する考えを示した。





(福浦 一広)

2009/4/30 17:30