UC事業の促進へ、ネットワンが描く新しいコミュニケーションの姿

「今後3年で7割がUC化に踏み切るだろう」

 ネットワンシステムズ株式会社(以下、ネットワン)は10月30日、「企業におけるコミュニケーション革新」と題して、ユニファイドコミュニケーション(UC)事業に関する説明会を開催した。

レガシーPBXの終焉

営業推進グループ 営業推進本部 技術部長の松本陽一氏

 「市場ではいまレガシーPBXやIP-PBXが終焉(しゅうえん)を迎えようとしている」。そう語るのは、営業推進グループ 営業推進本部 技術部長の松本陽一氏だ。OKI、富士通、日立、NECなどの国産ベンダーも自社製品のIP化を進めているのをはじめ、電話のIP化だけでなく、テレビ会議、チャット、アプリケーション共有など、いつでもどこでも共同作業を可能にするUC環境の整備が加速しているというのだ。具体的には「現状、レガシーPBXはまだ市場の8割を占めるが、来年・再来年には終焉を迎え、今後3年ほどで6~7割ほどがUC化するだろう」(松本氏)と見る。

UC事業を4本柱の1つに据えて

 そうした中、ネットワンでは、「ネットワーク事業における差別化」「サービス事業の拡充」「データセンター・仮想化案件の獲得」と並ぶ第4の柱として「UC事業の促進」を戦略に掲げている。同社がUC市場に取り組みだしたのは2005年、2006年ごろで、他社と比べると後発。しかし現在、急ピッチで立ち上げを行っており、「2008年にはCisco UC関連資格としては最上位の『Cisco Master UC Specialization』を取得。UCに向けて円滑な移行作業を実現する体制も整備し、現在は国内ベンダーとしては最大規模の約80名のUC専任部隊に、マーケティングからコンサル、構築、保守、運用担当者などすべてを配置する全方位的な組織化を済ませている」(同氏)という。

 設備としても、年間約100件のデモを実施する「UCデモセンター」、臨場感あふれるテレプレゼンスを実現した「TelePresenceルーム」などのデモ専用施設のほか、豊富な機材を備えた「大規模UC専用検証ラボ」、最新のUCソリューションが評価できる「テクニカルセンター」、顧客へ納品するUC機器の出荷検査を行う「品質管理センター」なども構築。投資的にも4本柱として余りある力の入れようなのだ。

約80名のUC専任部隊をそろえるUC体制UCソリューションを支える充実した設備エキスパートオペレーションセンターからリモート監視・運用サービスも提供している

UC化は必然的な流れ

 なぜ、世の中のUC化が進んでいるのか。それは「1人の社員が処理する仕事量が従来より大幅に増加しているからだ。不景気も相まって、増加する仕事量と減少する社員数、そのギャップを埋めるためにこれまで見直されてこなかったコミュニケーションプロセスの改善が必要とされるようになったといえる」(松本氏)。

 例えば、コミュニケーションの応答時間。1970年代は1日に1回で、エリアもローカルに限られ、デスクでの個人作業でこと済んでいた。ところがメールや携帯電話、IMなどコミュニケーションツールが発達するにつれ、今では即時的な応答、グローバルでのやり取りが求められるようになった。

 ネットワンが顧客に行った調査でも、仕事時間のうち5割は何らかのコミュニケーションに費やされ、そのうち9割が「電話の相手がいない」「メールの返信がない」「会議の準備の打ち合わせ」など成果の出ない内容で占められていたとのことで、コミュニケーションの高品質が求められる中で、必然的にUC化が進んでいるのだという。

UC市場におけるネットワンの強み

UC市場におけるネットワンの強みは「全体最適」
現在のビデオ会議と今後のビデオ会議

 UCは、さまざまなコミュニケーション要素が統合されたものだ。単にコミュニケーション基盤をポンと導入すればいいというものではない。UC市場におけるネットワンの強みはここにあるという。すなわち「LAN、サーバー・ストレージ、電話、ビデオ会議といったそれぞれのピースを見れば、どの顧客もしっかりしている。しかし、UCを実現するためには、これらのピースがうまくはまらなければならず、そうでないと逆に使いづらいネットワークになってしまう。当社はそうならないための全体最適が可能なサービスポートフォリオを取りそろえている」(松本氏)というわけだ。

 実際、「ネットワーク」「サーバー・ストレージ」「セキュリティ」のほか、UCソリューションだけを見ても、「基盤」から「モバイル」「Web/ビデオ会議」「コミュニケーションポータル」「コンタクトセンター」「ボイスメール」「サードパーティ製品」とメニューは幅広い。そのおかげもあって、CiscoのUC製品販売では売り上げNO.1に輝いているという。

 同氏はUC事業のポリシーを次のように語る。「テレフォニーのIP化が進むことで、データ連携が容易になるというメリットがある。例えば、音声を音声としてそのまま届けるだけでなく、テキスト化してシステムの制御に使うこともできる。“照明ダウン”という言葉1つで、部屋の電気を暗くするようなことも可能だ。IPフォンだけの世界から豊富なコミュニケーションを統合したUCツールを販売していく。そういったポリシーで常に新しいことを追求すると、UCとは単に単体製品を提供して終わり、というものではないと強く実感させられる」。

 その一例が、ビデオ会議ソリューションだと同氏。現在の会議ソリューションは各会議室に端末を置いておしまいというケースが多いが、それだと場所に制限などが生じ、ユーザーは不満を覚えつつあるという。そうした不満に対し「例えば、臨場感あふれる『空間共有型』、場所を問わない『フリーロケーション型』、電話機がそのまま会議端末へと変わる『電話一体型』、それにプレゼンスを確認するコミュニケーションポータルや先ほどの照明の例のような『データ連携』を加えていくことで、業務のシチュエーションに合ったビデオ会議の実現が可能になる」としている。

UC環境も「仮想化」「クラウド」へ

 松本氏によれば、昨今、UC市場での要望は「会議ソリューション」「携帯電話」「コミュニケーションポータル」の3点に集まっている。携帯電話の分野では、iPhoneなどのスマートフォンのおかげで移動中にも簡単に会議を行う土台ができ上がりつつある。実際、NIerという業種柄、トラブルによる夜間の呼び出しなどが多いネットワンでも、スマートフォンを使った自宅からの会議は日常化しているという。さらに最近では、会議のための基盤システムをオンプレミスではなく、SaaSで利用できる状況も整い始めている。

 「UC環境の今後は、『仮想化』『クラウド』がテーマになってくるだろう。UCもこれらの技術と深い関係にある。当社もこれらを視野に、今後もUC事業の拡充を図っていくつもりだ」(同氏)。

 2007年から具体的なUC案件が取れるようになったというネットワン。「2008年は前年比4倍の案件数と、市場は急速に盛り上がりを見せている。2009年は前年比2倍だが、これも不景気とならなければ、製造業を中心に2~3倍へと成長していたと予測される。現状、最も進んでいる業種は証券会社だが、当社としてはレガシーPBXの終焉という側面から、全業種を対象に注力していきたい」(同氏)と意気込みを見せている。




(川島 弘之)

2009/11/2 11:00