「XenServerでもESXでも使えるのがXenDesktopの強み」米CitrixディングラGVP


米Citrix デスクトップ部門グループバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーのラージ・ディングラ氏

 「競合は自社製品との組み合わせでしか使えないが、XenDesktopはXenServerでもVMware ESXでもHyper-Vであっても使える。また、デスクトップ仮想化そのものもさまざまな方式をサポートしている。競合がわれわれのレベルに追いつくには、数年かかるでしょう」、そう語るのは、米Citrix デスクトップ部門グループバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーのラージ・ディングラ氏。来日中のディングラ氏に、XenDesktopの強み、デスクトップ仮想化市場の今後などを伺った。


XenAppとXenDesktopでは利用方法が異なる

―今回発表されたXenDesktop 4は、XenAppの機能を統合するなど、かなり意欲的な製品となっていますね。

ディングラ氏
 はい。XenDesktop 4は、6種類の仮想デスクトップデリバリーを実現する「FlexCastテクノロジ」を搭載しています。オフラインをサポートしたローカルVMの配信、ローカルPCにインストールするタイプの仮想アプリケーション、デスクトップ環境のストリーム配信、ブレードPCのデスクトップ環境のストリーム配信、仮想マシンベースのデスクトップ配信、共有型のデスクトップ配信、と企業が求める最適なデリバリーが提供できるものです。

 デスクトップ仮想化は、社会的に求められています。Citrixとしても、XenDesktop 4は戦略的な製品と位置づけています。


―XenAppの全機能をXenDesktopに統合したのは象徴的ですね。しかし、そうなると、XenAppの今後がどうなるのか気になります。

ディングラ氏
 XenAppの機能をXenDesktopに統合したとはいえ、XenAppはスタンドアロン製品として引き続き提供します。XenAppには多くのユーザーがいますので、提供しないということはありません。製品開発の投資も、今後数年間継続することを決めています。


―今回、XenAppユーザーに対してXenDesktopの優待キャンペーンも発表しています。XenAppからXenDesktopへの移行を積極的にうながしているように見えるのですが?

ディングラ氏
 XenAppとXenDesktopでは、対象となるユーザーが異なります。

 XenAppは特定のアプリケーションを利用する目的で使われています。つまり、企業内のすべてのユーザーが利用しない場合もあるわけです。

 これに対して、XenDesktopはデスクトップを利用するためのソリューションです。アプリケーションと異なり、デスクトップはすべてのユーザーが利用します。

 XenAppは1億以上のユーザーが利用しています。これらのユーザーはデスクトップも利用しているわけで、ここに大きなニーズがあるとみています。こうしたユーザーに対して、今回最大80%引きでXenDesktopのライセンスを購入できるトレードアッププログラムを用意したのです。XenDesktopは、既存のデスクトップの複雑性を解消するものです。XenDesktopへのニーズは今後さらに高まるでしょう。


6つのデリバリー方式とVMwareを含むさまざまなプラットフォームに対応するのが強み

―デスクトップ仮想化に関しては、VMwareもMicrosoftも取り組んでいます。VMwareの場合、サーバー仮想化で築いた基盤を生かして、力を入れています。Microsoftも、OS標準機能として取り組んでいます。これらに対して、XenDesktopはどのように差別化するのでしょうか?

ディングラ氏
 まず、Microsoftとは競合関係にはありません。XenAppで10年以上のパートナーであり、XenDesktopに関してもパートナー関係にあります。MicrosoftがOS標準で提供するデスクトップ仮想化は、あくまでも小規模な環境向けであり、本格的に利用する場合は、XenDesktopが不可欠です。実際、世界中で両社共同で展開していますので、競合とはみていません。

 VMwareですが、2つの面でわれわれが明らかに有利です。まず、VMware Viewは仮想デスクトップのみをサポートしていますが、われわれは6つのデリバリーテクノロジーをサポートしています。ブレードPCやネットブート型のデスクトップ、年内に発表予定のXenClientによりオフラインでも利用できます。XenDesktopを使えば、さまざまな選択肢が得られるのです。

 そして、もう一つ大きな違いは、VMware Viewが自社の製品(VMware ESX)のみをサポートしているのに対して、XenDesktopは、XenServerはもちろん、VMware ESX、Hyper-Vなどもサポートしています。これはCitrixがオープンアーキテクチャを採用しているからこそ実現しているもので、これにより既存投資を無駄にすることなく利用できます。

 なによりもデスクトップ仮想化はCitrixが最初に製品化した分野であり、競合がわれわれのレベルに追いつくには、まだまだ時間がかかるでしょう。


―XenClientの話が出ましたが、2009年中に投入する予定は変わっていないのですね。

ディングラ氏
 はい、現在テクニカルプレビューを一部企業でテストしていただいている段階です。サーバー上で仮想マシンを動作するよりも、高いパフォーマンスで動作できる点を高く評価していただいてますね。


Windows 7リリースをきっかけにデスクトップ仮想化市場は急速に進展する

―デスクトップ仮想化市場は今後どのように進展するとみていますか?

ディングラ氏
 デスクトップ仮想化は、2010年から数年間で急速に進むとみています。

 まず、大規模企業において、デスクトップを戦略的に扱おうという流れが出ています。デスクトップ仮想化で得られる価値をCIOは高く評価しています。特に、XenDesktop 4の発表により、単純なデスクトップ仮想化だけでなく、さまざまな選択肢が得られる点に注目が集まっています。

 また、Windows 7のリリースも後押しになります。多くの企業がWindows XPからの切り替え先としてWindows 7に注目していますし、Microsoftも大きく力をいれています。重要なのは、クライアント環境を今のままでいいのかどうか検討するCIOが増えている点です。Windows 7をきっかけにデスクトップ仮想化が評価対象となっているのです。

 なによりも、XenDesktop 4で強化されたHDXテクノロジーにより、ユーザーエクスペリエンスがさらに高まりました。ユーザーが選んでいただけるレベルだからこそ、デスクトップ仮想化が本格化していきます。


―年内の発表を予定しているVMware View 4は、取得コストを大幅に軽減すると話しています。戦略的な価格設定をにおわせていますが、それでもXenDesktop 4に強みはありますか?

ディングラ氏
 さきほども説明しましたが、機能面での違いははっきりしています。たとえ無償提供という価格設定をするとしても、これほどの機能差があれば、どちらを選択するかは明らかです。

 また、VMware View 4を戦略的な価格にしても、vSphereのライセンスそのものが高いので、トータルで考えてもわれわれに強みがあります。

 XenDesktopは何年にもわたって機能をみがきあげています。この差を縮めるのは難しいでしょう。


―ありがとうございました。





(福浦 一広)

2009/11/4 09:00