レッドハット日本法人が10周年-今後は仮想化・OS・ミドルウェアを柱に


 レッドハット株式会社は11月10日、米Red Hat、社長兼CEOのジム・ホワイトハースト氏を迎え、日本法人設立10周年を記念した記者説明会を開催。これまでの活動と今後の方針などが語られた。


2010年にはメインフレームを抜き、サーバーOSで2位に

レッドハット代表取締役社長の廣川裕司氏
2009年度の方針

 レッドハット代表取締役社長の廣川裕司氏は、「日本法人は1999年9月に発足し、今年10周年を迎えた。Linuxのうち、レッドハットは84%のマーケットシェアを獲得している」とLinuxの最大手ディストリビュータであると紹介。「LinuxはサーバーOS分野で2ケタ成長を続けており、2009年にはUNIXを、2010年にはメインフレームを抜いて、Windowsに次いで第2位のサーバーOSになる見通し」と、ミッションクリティカル領域で高い評価を得ていると述べた。ミドルウェア分野でも、JBossビジネスが急成長しているとし、「2009年は対前年で200%の伸びになる見通しで、500億円といわれる国内のミドルウェア市場において、急速にポジションを築きつつある」と、ミドルウェア分野でも存在感を増しつつあると強調した。

 この厳しい環境にある2009年度について、同社は「レッドハットで徹底したコスト削減!」を掲げ、UNIXからLinuxへ、独自仕様ミドルウェアからOSS/JBoss/SOAシステムへ、サーバー・各種システムを仮想化により統合の加速などを訴えて活動。また、ビジネスユーザー同士の交流が乏しかったことがOSSが浸透しなかった背景にあるとして、世界で初めてユーザー会を発足して、ビジネスユースの情報交換の活性化を実施している。そのほか、パートナーセンターなどパートナーに対する支援体制を強化したほか、新規分野・地域の開拓などを行ってきたと説明。

 景況感の悪化により、国内のIT投資も冷え込んでいるが、「2009年のIT市場はマイナス成長となっており、マイクロソフトもその影響を受けて、初めて縮小している。そんな中、Linuxは唯一プラス成長している分野」と、厳しい環境下でも引き続き好調に推移しているとした。


仮想化機能・OS・ミドルウェアの3つを柱に展開

米Red Hat、社長兼CEOのジム・ホワイトハースト氏

 ホワイトハースト氏は、Red Hatの強みについて、「OSSの開発モデルを理解し、エンタープライズで受け入れられるビジネスモデルを構築」している点を挙げた。

 「現在、世界のCIOは高まる要求、それもスピードも同時に求められながらも、予算は限られているという状況にある。この状態を解決するのが、オープンソースであると確信している。オープンソースが持つソフト開発の優れた点、そしてより少ないコストで実現できる点は、CIOにとって魅力的だ」と、OSSの利点を強調。「Linuxは15年前に趣味としてスタートしたものだが、今ではニューヨーク証券取引所などミッションクリティカルシステムで使われている。JBossも10年前にスタートしたばかりで、すでにミッションクリティカル領域で使用されている。オープンソースが持つ参加による力は抜本的なイノベーションを実現できる」と、OSSの開発手法が、コスト面だけでなく、エンタープライズ領域で満足できる性能を提供できる力になっていると述べた。

 Red Hat Enterprise Linuxがライセンス方式ではなくサブスクリプション方式で提供される理由も、このOSSの開発手法が背景にあるとホワイトハースト氏は説明する。「OSSの開発モデルは、作業負荷を分散でき、より早くイノベーションを実現できるのが強み。サブスクリプション方式により、契約期間中はより早くイノベーションを利用できる。もちろん、エンタープライズにとってはイノベーションよりも安定性を望んでいるといわれるだろうが、ハードウェアサポートなどエンタープライズでも受け入れられる活動もあわせて行っている。われわれにとって、ユーザーが毎年サブスクリプションを更新していただけるよう、価値あるイノベーションを継続する必要がある」と、企業が求めるさまざまな機能を提供し続けることで、価値を提案し続けているとした。

 今後の展開に関して、ホワイトハースト氏は、「われわれはITアーキテクチャのすべてを提供するつもりはなく、カギとなるインフラレイヤーを提供することでお客さまやパートナーのイノベーションを実現していく」と発表。KVMによる仮想化機能・OS・ミドルウェアの3つを柱に展開すると述べた。

 「Red Hatはクラウド向けの製品を提供していないのに、クラウドコンピューティングのリーダー企業だといっていただいている。それは、レイヤーを明確に定義し、イノベーションを発揮できるようにしているから。クラウドが発展するには、コアレイヤーの標準化をすすめられるかどうかにかかっている。インフラのコモディティ化は実現できるところまで実現していきたい。それにより、イノベーションを実現できる環境を提供したい」(ホワイトハースト氏)と、クラウドインフラにおいて重要な役割を担っていく考えを示した。

 サーバーOS分野では、Windowsが圧倒的なシェアを獲得しているが、「Windowsが強力なポジションを占めている背景として、デスクトップ分野での存在感の大きさのほか、SQL Serverといった製品にあるとみている。とはいえ、利用の多くがローエンド分野。その分野において、OSS製品が出てくれば、変化が生まれるだろう。また、使いやすさを高めること、Linuxに対するなじみを持っていただくようにすることも重要」(ホワイトハースト氏)と、デスクトップ分野で使い慣れていることがWindowsの強みであると分析。「われわれとしても、デスクトップエリアでも手を打っていく考えを持っており、一歩一歩縮めていく」(廣川氏)と、デスクトップ分野にも今後力を入れる考えを示した。





(福浦 一広)

2009/11/10 15:17