マイクロソフト、NPOと連携して若者向け就労支援施策を実施


 マイクロソフト株式会社は12月4日、若者向け就労支援施策「ITを活用した若者就労支援プログラム」を2010年1月より開始すると発表した。実施期間は、2010年1月から2011年12月末までの2年間。

 今回発表されたITを活用した若者就労支援プログラムでは、無業の状態にある15~39歳の男女を対象に、ITスキルの講習から、キャリアカウンセリング講座やコミュニケーション講座といった就労支援などが提供される。同社執行役 法務・政策企画統括本部長の伊藤ゆみ子氏は、「総務省の労働力調査によると、7月の完全失業率は5.7%。これを15~24歳で見てみると9.9%となっており、ほかの年齢層と比べて高く、若年層に厳しい環境となっている。若いときに就労の機会がないと、長期間困難な状態が続いてしまう」と、若年層にフォーカスした理由を説明。

米Microsoftコーポレートバイスプレジデント グローバルコーポレートアフェアーズ担当のパメラ・パスマン氏

 同社が今回のプログラムを実施する狙いについて、米Microsoftコーポレートバイスプレジデント グローバルコーポレートアフェアーズ担当のパメラ・パスマン氏は、「これまでも企業市民としての活動として、得意とする分野にフォーカスした活動を行っている。その中でも就労支援プログラムは長年にわたってフォーカスしており、適切なトレーニングの機会やツールを提供している。今回発表した新しいプログラムは、21世紀の職場で求められるITスキルを、若者に備えていただくことを目的に実施するもの。今回のプログラムで新しいスキルを身につけるだけでなく、自信につながることを期待している」と述べた。

 ITスキル講習では、就労に役立つ実践的なITスキルとして、1)Word/Excel/PowerPointを活用した文章作成、2)Accessを活用したデータ管理、3)Webサイト構築、を実施する。あわせてポータルサイトを開設し、ITスキル講習のカリキュラムやテキストなどの一般公開も行われる。受講者の就職など進路決定者の割合を30%に、受講者を6000名に、ポータルサイトを通じたコンテンツ提供を7万5000名にすることを目指して活動する。

 実施にあたっては、若者の職業的自立を支援する政府事業「地域若者サポートステーション」を受託するNPOと連携して実施。1年目は、「たちかわ若者サポートステーション(NPO法人 「育て上げ」ネット)」「みたか若者サポートステーション(NPO法人 文化学習協同ネットワーク)」「あだち若者サポートステーション(NPO法人 青少年自立援助センター)」「よこはま若者サポートステーション(NPO法人 ユースポート横濱)」「かわぐち若者サポートステーション(NPO法人 「育て上げ」ネット)」の5カ所で実施。2年目には公募により全国20カ所で実施する。


プログラムの実施体制プログラムの内容プログラムの目標
NPO法人 育て上げネット 理事長の工藤啓氏
代表執行役社長の樋口泰行氏

 とりまとめ役でもある、NPO法人 育て上げネット 理事長の工藤啓氏は、「若者の多くがケータイを使っているので、ITに親しんでいるとおもわれがちだが、(たちかわ若者サポートステーション)登録者1000名のうち、20%がパソコンを触ったことがないと回答している。また、パソコンを使っていても、インターネットとメールだけという人が50%もおり、7割の若者がWordやExcelを使ったことがないという結果が出ている」と紹介。「求められる人材の条件で、Word・Excelが使えることとなっていることが多く、7割の若者がITスキルを持たないことで仕事につけず、ITと離れた仕事に就くしかないという現実がある」と、ITスキルの教育が切実な課題であると指摘する。

 今回のプログラムの意義について、工藤氏は、「マイクロソフトという大きな企業が若者の就労支援を行うということに大きな意味がある」と紹介。「ひきこもりなど、日本の若者が抱える困難は世界から注目されているが、本人の問題・家庭の問題という意識が強いため、企業がこうしたことに関心を持つことはほとんどなかった。今回の取り組みが、(企業の取り組みとしての)ベンチマークになるようにしたい」と、期待を示した。

 同社代表執行役社長の樋口泰行氏は、「若者がいきいきと働いていないようでは、国としてもいい状態ではない。昔流なら自分ではい上がれといって済ませていたことではあるが、そこにしっかりと目を向けることは重要。社会でITに接する機会は多く、ITスキルは働く上で必須となっており、マイクロソフトとしても得意分野で社会に還元できる機会として協力したい」と述べた。





(福浦 一広)

2009/12/4 15:52