日本IBMのクラウド、強みは「技術の熟知」と「グローバル展開」
執行役員 クラウド・コンピューティング事業の吉崎敏文氏 |
日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)は1月14日、クラウド戦略に関する記者説明会を開催。1月付けで設立された「クラウド・コンピューティング事業」を統括する、執行役員の吉崎敏文氏が、自社の強みや今後の展望などを語った。
クラウドコンピューティング(以下、クラウド)には、プライベート、パブリック、それらを併用するハイブリッドなどの種類があるが、日本IBMではクラウドに共通する重要な要素として、「仮想化」「標準化」「自動化」の3つを挙げ、説明してきた。クラウドという概念は新しくはあるものの、吉崎氏は、「1991年から当社では、オートノミックコンピューティングという概念でそれらの要素を手掛けてきた。つまりベーステクノロジーはすでに持っていた」という点を指摘。特に、「大前提となる仮想化では、40年の実績を持つ」とし、その実績を強調する。
では、なぜこうした実績が必要になるのか。それは、「エンタープライズアーキテクチャの上で、どこをクラウドとして切り出すかを考えたいというお客さまの要望は非常に多いが、技術・業務全体がわかっていないと、それが判断できない」(吉崎氏)からだ。また、日本IBM自身が汎用機からx86サーバーまでを広く手掛ける上、他社の機器までを含めた混在環境で利用可能なプラットフォーム技術を持っている点も強みだという。
IBMの考えるクラウドコンピューティング |
IBMの4つの強み |
加えて、非常に広いソリューションのポートフォリオを抱えているのも、日本IBMならではのメリット。「社内の50以上のアプリケーションを分析し、クラウドに向く業務を『スイートスポット』として特定。お客さまに届けられる」(吉崎氏)ことから、個々の企業の業務にあわせた、最適なソリューション提供が可能になるというのだ。
さらに、グローバルのIBM社内で、11万人の研究・開発者が2年以上にわたって使用しているほか、200以上のプロジェクトの導入経験があり、クラウドの効果を、実証された形で提供可能。「クラウドはインフラであるから、よりスケールメリットを出せるのはグローバルに展開できる企業」(吉崎氏)という点でも、グローバルのリソースを活用できる点が、競合、特に国内ベンダーに優位性として働く。
日本IBMでは、このような強みを最大限に生かすため、さらに各分野でパブリック、プライベートの両クラウド製品・サービスを断続的に拡充。それらを単独で提供する以外にも、組み合わせた最適なシステムとしてソリューション化し、顧客企業に対して働きかけを強める考え。そのために設立されたのが、クラウド・コンピューティング事業で、「日本のお客さまの声をくみ上げ、グローバルに届ける」(吉崎氏)ことを意図し、グローバルのIBMに先駆け、社長直属の組織として発足した。
もちろん、事業としての拡大が見込めることも理由の1つであり、その証左として吉崎氏は、日本のCIOの方がワールドワイドのCIOよりクラウド/SaaSへの関心が高いこと、また6割近い企業がクラウドに前向きな姿勢を示していること、という2つの調査を示している。
なおクラウド・コンピューティング事業の中には、ソリューション開発やマーケティング、セールスの人員を抱えているが、さらに、既存顧客・パートナーとの連携やきめ細かな提案を可能にするため、同事業を中核とした「Team Cloud」も発足させた。当初人員は約300名で、3月中には社員1000名にクラウド教育を施し、チームを拡大するとした。なお日本IBMでは、クラウドに関する人材について、5年間で100億円規模の投資を計画しているとのことで、このあたりにも、クラウドに対する同社の“本気度”がうかがえる。
日本IBMのソリューションロードマップ | 各分野におけるクラウドの事例。国内でも、積極的に事例を増やしたいという | クラウド関連の組織 |
2010/1/14 15:10