マイクロソフトがOffice 2010の機能改善を説明、「5億ユーザーのフィードバックを生かす」


インフォメーションワーカービジネス本部 Office製品マーケティンググループ 田中道明部長

 マイクロソフト株式会社は1月18日、次期Officeアプリケーション「Microsoft Office 2010」の機能を解説する、報道向けの説明会を開催。Office 2010に含まれるさまざまな新機能や改善点を紹介した。

 2010年上半期の提供開始が予定されているOffice 2010製品群では、従来同様、Word、Excel、PowerPoint、Outlook、OneNoteなどなど、多くのアプリケーションが用意されている。インフォメーションワーカービジネス本部 Office製品マーケティンググループ 田中道明部長は、これらに共通することとして、「お客さまが日常使う機能を改善し、パフォーマンスを高める。また信頼性が高く、使っているうちに新しい機能に気付き、より便利に使える」といった方針で開発されていると説明する。

 そのため、ワールドワイドに5億人のユーザーがいるといわれているMicrosoft Officeからのフィードバックを十分に活用しているとのことで、ユーザーサポートや満足度調査のコメントを活用するほか、ユーザーが日々行っている操作を匿名で収集し、その後の開発に役立てる「カスタマーエクスペリエンスプログラム」のデータが生かしている。全ユーザーがこのプログラムに参加しているわけではないが、それでも数TB/日のデータが集積され、「ヒアリングでは出てこない、実際の使い方」(田中氏)をもとに開発できるので、非常に参考になっているという。

 具体的な機能強化としては、パフォーマンス面では、Outlook 2010において、一般的なメールタスクで26.2%、大規模環境のメールボックスでは34.9%のパフォーマンス改善がなされたほか、Outlook 2003と比べて、ディスクI/Oが82.2%削減されているという。またExcel 2010でも、「研究開発など複雑な使い方をされる場合、重要なファクターとなる計算速度を約7割向上した」のにとどまらず、Excel 2007で指摘のあったグラフの描画速度を高速化。マルチコア環境での最適化、64ビット環境のネイティブサポートやソート、フィルタ処理などの改善などによって、大規模データの取り扱いについてもより高速に行えるようになっている。

 なお田中氏は、「Excelは機能が多いからメモリ使用量が多いのではないか? といったことをよくいわれるが、当社ではメモリ使用量の最適化などを随時行っており、Excel 2010はもとより、Excel 2007でも競合製品と比べて優位にあると思っている。多機能だから重いという先入観は捨ててほしい」とコメント。製品の完成度に自信を示した。

Office 2010の開発で目指したことOffice 2010では各製品のパフォーマンスを大きく改善したExcel 2010での改善点

 パフォーマンス以外の改善では、コピー&ペーストの使い勝手向上を再度アピールしたほか、カスタマイズ可能なリボンUI、印刷や共有、保存といったファイル編集以外の機能をまとめた「バックステージ」ビューの提供、IME 2010による日本語入力環境の改善などを紹介した。特にIME 2010では、ユーザー自身がXMLを用いて辞書を作成できる機能が追加され、各個人に、より適した日本語入力環境を提供可能になったとのこと。加えて、現在もダウンロードでは提供している更新辞書を、Windows Updateなどで配信することも計画しているという。

 これらの改善が加えられたOffice 2010は、すでに200万人がダウンロードしている状況で、79%のユーザーがOffice 2010ベータ版に満足し、89%のユーザーが、「現在使用している製品よりも改善されている」と感じているとの結果が出ている。また、Office 2007より導入され、今回からOutlookにも適用されたリボンUIも、68%のユーザーが「これまでより使いやすくなった」と感じているとのこと。マイクロソフトでは、こうした点を実感するために、Office 2010のベータ版をぜひ使ってほしいとアピールしている。

使い勝手の改善も各所で図られたOffice 2010では、ペースト後のイメージを確認しながら張りつけ作業を行えるユーザーが作成した辞書を読み込むことで、より最適化された日本語環境を構築できる。説明会では、Bingで検索された上位の単語を含む辞書をインストールすると、変換候補にそれが表示されてくるというデモが行われた
ベータ版ユーザーから、高い評価が与えられているというアプリケーションストリーミング技術を用いた、クイック実行(クリックトゥラン)の仕組みも用意され、ダウンロード完了を待たずして利用を開始できる。既存Office環境との併用も可能だが、技術上の問題などから、IME 2010が使えないなど一部制約がある。

 このほか今回は、Outlook 2010とOneNote 2010の新機能についても説明された。Outlook 2010は、前述の通りリボンUIを新たに採用しているが、そのリボンUIの中に「クイック操作」機能が搭載されている。これは、ひんぱんに行う操作をワンクリックで実施できるようにする機能で、転送、削除、タスクの作成など、あらかじめ用意された25種類の動作の中から、適切なアクションを設定可能。例えば転送の場合は、メールのあて先、タイトルや本文の書き出しなどを設定しておけ、「部下のAさんへ転送」「関連するチームへ転送」といった操作を、ワンクリックで起動可能になっている。また、日本のユーザーの声をくみ取り、「グループスケジュール」「階層化アドレス帳」といった機能が実装された。

クイック操作のボタンクイック操作では、動作条件を細かく設定可能グループスケジュール機能

 OneNote 2010では、「10年前と比べて、1人1人が扱う情報量が急増しているが、あらゆる情報を集約し、検索を可能にするのがOneNote」(インフォメーションワーカービジネス本部 シニア プロダクトマネージャー 松田誠氏)と述べ、価値を訴求。その上で、新機能として、メモを書いていた際に参照していたWebページやドキュメントを、後日簡単に呼び出す「リンクノート」機能を紹介している。なおOneNoteは、Office 2007では最上位エディションの「Ultimate」「Enterprise」にのみ同梱されていたが、Office 2010では、主にプリインストール向けの「Personal」を除き、すべてのエディションで提供されるようになる。

OneNoteの概要OneNote 2010の画面イメージ





(石井 一志)

2010/1/18 16:15