マイクロソフト、強化されたOffice 2010の新機能を紹介

「Web、携帯電話を含めた多様性」や「互換性の高さ」などもアピール

インフォメーションワーカービジネス本部 業務執行役員 本部長の横井伸好氏

 マイクロソフト株式会社は11月30日、次期Office製品群「Microsoft Office 2010」に関する説明会を開催。新機能についてのデモを行った。

 Office 2010製品群は、第1弾として11月よりExchange Server 2010が提供開始となっているが、今後2010年にかけて次々と製品が提供開始になる予定で、現在は主力となるフロントエンドツールのOffice 2010や、Visio 2010、Project 2010などのパブリックベータが公開されている。

 そのOffice 2010製品群の最大の特徴は、多様な提供形態だろう。フロントエンドツールでは、「最高の操作性と生産性を、PCと携帯電話とブラウザで実現する」(インフォメーションワーカービジネス本部 業務執行役員 本部長の横井伸好氏)との言葉通り、複数の提供形態で製品をリリース。同時に、それを支えるバックエンドについても、オンプレミス型と、まったく同じ機能をインターネットクラウドから提供する。こうした特徴について横井氏は、「当社が、クラウドしかない、オンプレミスしかないというベンダーとは一線を画している点だ。フロントエンド側のPC、携帯電話、Webと、バックエンド側のオンプレミス、クラウドを、ユーザーは自由に組み合わせてソリューションを構築できる」と述べ、マイクロソフトならではの価値を強調する。

 しかも、複数のフロントエンドツールの間で、同一のOfficeファイルを忠実に再現可能な点も、他社にない大きな特徴だという。これを「ラウンドトリップ」という表現で説明した横井氏は、「PCで作ったファイルをWeb(版のOffice Web Apps)で編集しても、データの完全性を保証できる。表現についても、他社のもので一度ファイルを開いていただければ、違いが分かっていただけると思う」とした。

Office 2010製品群の特徴Web版のOffice Web Appsでも、リッチクライアントのOffice製品との互換性や同様の使用感が保たれている

 もちろん、個別の製品や製品間の連携についても、大幅な強化が行われている。この際には、ユーザーからの膨大なフィードバックを活用しているとのことで、横井氏はその例としてカット&ペーストを挙げた。カット&ペースト操作は全操作の2割以上を占めるというが、実はその後、アンドゥ操作をすることが多く、これは、はり付け作業が思った通りにできていないということを示しているのだという。そこで今回は、的確なはり付けを行えるように支援機能をExcel 2010へ導入。数式を維持したままはり付ける、といったはり付けの結果をユーザーが参照しながら、適切なはり付けを行えるようにしている。また、セルの内部にグラフを表示し、より分かりやすく表現する「スパークライン」機能などの強化も施されている。

 Word 2010では、SharePoint Server 2010、あるいはWindows Liveとの併用で、同一ファイルの同時編集機能が可能になっている。この機能は、段落単位での排他制御を行うことで実現されているため、同一段落は1人のユーザーのみが編集できる。またPowerPoint 2010と、SharePoint Server 2010もしくはWindows Liveを組み合わせると、リアルタイムでスライドショーを共有できる「ブロードキャスト」機能を利用可能だ。このほかPowerPoint 2010では、単体での画像・映像編集の機能が大幅に向上しているし、Excel、Word、PowerPointなどの各アプリケーションに対して、印刷や共有、保存といったファイル編集以外の機能をまとめた「バックステージ」画面を提供。ユーザーの利便性を向上させているという。

強化された「はり付け」の機能段落単位の排他制御を行い、同一ファイルの編集を実現する。別のユーザーが編集中の場合は、その旨が表示される
より分かりやすい表現を提供するスパークライン機能ファイルの編集以外の機能をまとめたバックステージ画面を提供する

 また今回は、ボリュームライセンスとパッケージでエディションを完全に変えるなど、提供形態が整理された。ボリュームライセンス向けとして、下位版の「Office Standard」と「Office Professional Plus」を用意するほか、パッケージ向けは、下位版の「Office Home&Business」と上位版の「Office Professional」が提供される。Office 2010では、32ビット/64ビット版の提供に加え、各エディションにOneNoteが、ボリュームライセンス向け2製品にBusiness Contact Managerが追加されるなど、内容も従来と異なっているので、注意が必要だ。これらに加えて、Word、Excel、Outlookを含む、主にプリインストール向けの「Office Personal」についても提供を継続するが、こちらには変更はない。

 なお、パブリックベータではProfessional Plus、Professional、Home&Businessが提供されているが、このうちHome&Businessでは、アプリケーション仮想化技術「App-V」の機能を利用した「Click to Run(仮称)」での提供も行われている。「これはアプリケーションのストリーミング技術であり、必要なものから順次ダウンロードするため、すべてをダウンロードしなくてもアプリケーションが利用できる。わたしが試した時には、3分でPowerPointが使えるようになった。それ以後もバックエンドでダウンロードが継続され、600MBまで達するとオフラインでも使えるようになる」(横井氏)。

Office 2010の製品構成Click to Run(仮称)の概要





(石井 一志)

2009/11/30 17:30