法人向け「ATOK CE」発売へ、企業ごとの表記の統一を支援
ライセンス事業部長の植松繁氏 |
株式会社ジャストシステムは2月17日、法人向け日本語入力システム「ATOK CE for Windows(以下、ATOK CE)」を発表した。価格は9000円(税別)/ライセンスで、3月12日に販売開始。併せて、企業内で独自用語の正確な変換や表記の統一を支援する「ATOK Business Solution 辞書配信システム 5(以下、辞書配信システム 5)」および「ATOK Business Solution 用語管理データベース 3(以下、用語管理データベース 3)」も順次発売する。
ATOK CEは、法人向け日本語入力システム。同社は従来、個人向けATOKにオプション辞書を付加することで、法人のニーズに応えてきた。「だが、それではかゆいところに手が届かないと気づいた。個人向けは主に、個人の利便性追求に主眼が置かれているのに対し、法人向けでは企業ごと・業界ごとに存在する専門用語や表記ルールに、いかに全従業員が準拠するか、組織としてのパフォーマンスを向上させるかが重要となる。そこで、表記の統一機能などを強化した法人向けATOKを、個人向けと明確に切り分けて発売するに至った」と、ライセンス事業部長の植松繁氏は語る。
■ATOK環境を全社で統一し、固有の表記ルールを辞書化
ATOK CEには、ATOK環境や表記の統一を図る豊富な機能が搭載されている。まず、ATOK環境を統一するため、管理者側でプロパティ設定を設定し、ユーザーによる変更を制御する機能を搭載。この設定をActive DirectoryのWindows Group Policyとして配布可能となった。
ATOKのメニュー項目を企業ごとに必要なものだけに限定するメニューカスタマイズ機能も搭載。必要な機能だけの分かりやすい表示で、簡便な利用を実現し、従業員の教育コストや問い合わせ対応による負荷を削減できるようにした。
プロパティ初期値設定&固定機能の概要 | メニューカスタマイズ機能の概要 |
企業固有の表記ルールを辞書化。「コメント」と入力すると「単語コメント」を表示。ジャストシステムで実際に利用されているルールという |
また、辞書配信システム 5と用語管理データベース 3も組み合わせることで、企業特有の表記、正式名称、人名、略称、誤字脱字、不適切表現など固有ルールを辞書化することが可能。管理者側で固有の辞書を用語管理データベース 3に登録することで、全ATOK CEで表記を統一できるほか、現場で利用されている用語を辞書配信システム 5で収集・分析し、辞書に再登録後、現場へフィードバックすることも可能。
「従来は、あらかじめ登録した辞書を一方向にATOKへ配信するしかできなかったが、ATOK Business Solutionでは、辞書作成サイクルとして双方向の運用が可能になる」(ライセンス事業部 企画部の稲野豊隆氏)という。
現場の入力を集合知として活用 | 従来は、あらかじめ登録した辞書を一方向にATOKへ配信するのみだったのが【左】、辞書作成サイクルとして双方向の運用が可能になる【右】 |
さらにATOK標準の辞書機能のほか、Excelファイルを介した用語の共有を実現する「ATOKダイレクト for Excel」も搭載。これは、Webなどの外部情報を直接取得する「ATOKダイレクト」機能を、Excelファイルに対して応用したもので、特定のフォルダにExcelファイルを置くだけで、そのデータを入力変換時に参照可能となる。
稲野氏によれば「ATOK標準の辞書機能では、用語それぞれに品詞やふりがなを登録しなければならず、多少面倒なところがある。Excelを使えば、より簡単に辞書を共有することが可能」という。
Excelで検索キー、確定文字列、情報などのリストを作成し【左】、特定のフォルダに置いておくと【中】、入力変換時にその情報を参照・活用できる【右】 |
また、ATOK CEや専用辞書の導入前と導入後の効果を測定する機能も搭載。例えば、ATOKとMS-IMEを同じくらいの期間使用した際に、「キー入力時間の合計」「確定文字数の合計」「確定後のBack space/Deleteキーの使用割合」や、それらに基づいた「入力効率の平均」を数値・グラフで提示してくれる。
打鍵数や確定文字数などの推移、作成した文書量などをグラフ化 | ATOK CE導入前と導入後の効果を数値で提示してくれる |
価格は、ATOK CEが9000円(税別)/ライセンス、辞書配信システム 5が100クライアントで10万円(同)、用語管理データベース 3が60万円(同)。これらは標準ライセンスだが、併せて年間サブスクリプションライセンスも提供する。価格はATOK CEが4000円(同)/年・ライセンス、辞書配信システム 5が3万円(同)/年、用語管理データベース 3が15万円(同)/年。
■法人向け事業の強化へ
植松氏によれば、今回のATOK CE発売だけでなく、全面的に法人向け事業を強化していく方針だ。先だって2009年7月に組織体制を「事業部制」へと変更した同社。「従来は開発部隊が事業ごとに分離していなかったため、全社的にプロジェクトの優先度付けや最大公約数による開発を余儀なくされていた。これを改善するため、ライセンス事業、コンシューマ事業部、エンタープライズ事業部に体制を分けて、それぞれの事業部に企画、営業、開発をアサインした。特に法人向け事業では、今回のATOK CEや文書校正支援ツールの『Just Right!』をはじめ、商品力の強化を図り、市場との接点を強めるつもりだ。これにより、スピード感のある商品投入を実現していく」という。
具体的には、広島営業所を新たに開設したほか、詳細は未定だが今後、法人営業の人員増強に踏み出す方針。また、販売代理店などパートナーとの連携強化として、主に技術情報の提供、技術支援、教育、検証用ライセンスの提供などを行うパートナープログラムを推進していく。これらにより、「ジャストシステム=コンシューマ向け」のイメージから脱却する考えだ。
これまでの法人向け事業の展開例 | 事業部制の導入で市場との接点を強化する |
2010/2/17 17:24