日立、グループ各社が協力した自治体向けクラウドサービス「SUSTINAD」


 株式会社日立製作所は3月26日、日立グループ各社が提供してきた自治体向けサービスを体系化した「日立自治体クラウドソリューション SUSTINAD」を発表した。4月1日より提供を開始する。

情報・通信システム社 公共システム事業部 全国公共ソリューション本部 担当本部長の福岡康文氏

 自治体が抱える課題について、情報・通信システム社 公共システム事業部 全国公共ソリューション本部 担当本部長の福岡康文氏は、「人口規模が小さい自治体ほど、情報システムにかかるコスト負担が大きくなる傾向があるほか、頻繁な法改正への対応という課題も抱えている。また、セキュリティへの対応も課題」と、自治体独自に情報システムを構築・運用することへの負荷が高まっていると指摘。

 こうした自治体が抱える課題を解決する方法として、クラウドコンピューティングによるサービス提供が有効と福岡氏は説明する。「クラウドコンピューティングにより、保有から利用という動きが始まっている。実際、クラウドコンピューティングの標準化や共同化といった政策も進んでおり、中小規模の自治体を中心にクラウド環境に移行すると予測している」と、SUSINADを提供する背景を紹介した。

 SUSTINADは、日立グループのクラウドソリューション「Harmonious Cloud」を基盤に、日立・日立情報システムズ・日立公共システムエンジニアリングが共同で開発した自治体向けクラウドサービス。アプリケーション開発で3社が連携するほか、販売に関しては、3社のほか、日立ソフトウェアエンジニアリングと日立システムアンドサービスを加えた5社が連携して行う。「グループ間でのリソース共有やスピード感などは、(グループ企業各社の)完全子会社化のメリットともいえる」(福岡氏)と、株式公開買い付け(TOB)による完全子会社化がSUSTINADを立ち上げることに大きく貢献したと述べた。


SUSTINADは、Sustainable(持続可能な)Administration(行政)をあわせた造語3社連携でアプリケーションを開発し、グループ5社で連携して拡販するグループ横断の「自治体クラウド推進センタ」を設立する

 SUSTINADは、自治体業務アプリケーションをSaaSで提供する「SUSTINAD/SaaS」、地域データセンターに共同利用型のシステムを構築して利用する「SUSTINAD/Share」、自治体内でクラウド環境を構築・運用する「SUSTINAD/Private」の3つで構成される。

 SUSTINAD/SaaSおよびSUSTINAD/Shareは、日立情報の電子自治体ソリューション「e-ADWORLD2」や、日立グループ各社がパッケージソフトウェアやサービスとして提供してきたノウハウをベースに開発。住民情報や介護・福祉といった基幹業務、財務会計など内部事務を含む自治体業務アプリケーションを利用できる。

 SUSTINAD/Privateは、日立が開発をてがけた北九州市の「次期システム基盤」のノウハウを基に標準化したもので、自治体内でプライベートクラウド環境を構築するサービス。業務の利用状況に応じてITリソースを柔軟に利用できるため、システム運用管理コストの低減、効果的なITリソースの活用が可能としている。


3つのサービスで構成自治体の基幹業務を中心とした業務構成にクラウド化により、導入期間やコストを削減できるほか、高いセキュリティ環境も実現

 価格は、SUSTINAD/SaaSが月額48万円から(初期費用のぞく)、SUSTINAD/ShareとSUSTINAD/Privateは個別見積もり。

 今後は、電子行政ショールーム「CyberGovernment Square」での自治体向けクラウドセミナー開催といった普及活動のほか、基幹業務以外のサービス対象業務の拡充、またSUSTINAD/Shareを中心とした地域ITベンダーとの連携強化などを行う。

 同社では、2015年までに300の自治体、250億円の売上を目標としている。





(福浦 一広)

2010/3/26 14:02