日立、クラウドソリューション「Harmonious Cloud」を体系化

高信頼・高セキュリティ・環境配慮が特徴のPaaSサービスをラインアップ

執行役常務 情報・通信グループ プラットフォーム部門CEOの北野昌宏氏
ニーズにあわせて3つのソリューションを用意する

 株式会社日立製作所(以下、日立)は6月30日、クラウドコンピューティングソリューションを「Harmonious Cloud」として体系化すると発表した。7月31日により順次提供を開始する。

 日立ではクラウドコンピューティングについて、「電気、交通などと同等といえる信頼性を持つクラウドを目指す」(執行役常務 情報・通信グループ プラットフォーム部門CEOの北野昌宏氏)とのビジョンを掲げており、そのための技術開発を積極的に行っているという。また2月に、同事業推進のために「プラットフォームソリューション事業部」を再編したことに加え、7月には、キャリアのインフラや企業ネットワークを手掛ける日立コミュニケーションテクノロジーの吸収合併を予定するなど、組織の強化を実施。さらには、横浜のクラウド対応データセンターを7月に稼働させるほか、ブレードプラットフォーム「BladeSymphony」や統合運用管理ソフト「JP1」、ミッドレンジストレージへの仮想化機能搭載といった製品の強化を継続的に実施し、このビジョンの実現に向けて継続的な取り組みを実施しているところだという。

 そのクラウドビジネスの中核として今回体系化されたHarmonious Cloudは、「SaaS」、プラットフォームをサービスとして提供する「PaaS(Platform as a Service)」、企業内にクラウド環境を構築する「プライベートクラウド」の3つのビジネスソリューションから構成されており、導入コンサルティングから構築、運用までをトータルに提供するのが特徴。中堅・中小企業からの期待が高いSaaS/PaaSモデルから、自社内での構築を希望するエンタープライズ企業向けのプライベートクラウドまで、幅広いラインアップをそろえ、継続的にメニューを強化していくという。

 SaaSについては、すでに提供している「TWX-21」などに加えて、自社パッケージのSaaS化を推進。アライアンスによって、サードパーティ製のアプリケーションも提供を予定する。また、日立のクラウドソリューション中でもっとも割合が高くなると見込まれているプライベートクラウドについては、仮想化・コンソリデーション向けソリューションの提供から始め、構築支援サービスのメニュー化とその拡充などを予定しているとのこと。

日立のPaaSでは、高信頼プラットフォームと付加価値サービスによる、高い信頼性を提供する
PaaSソリューションのロードマップ

 また、PaaSについても、「高信頼」「高セキュリティ」「環境配慮」といった、日立ならではの特徴を前面に出して訴求していく考え。そのうち「高信頼」では、自社の高信頼なサーバー、スイッチ、ストレージをインフラとして利用するほか、CPUやメモリ、I/Oリソースなどを占有して処理性能を確保する「リソースキャパシティ保証サービス」、バックアップやクラスタ構成によって可用性をさらに高める「可用性強化サービス」といったオプションを提供する。

 「高セキュリティ」では、ユーザー専用のVPN装置の設置、ユーザーごとに独立した論理ユニットの割り当てなど、クラウド環境下でもユーザー間の独立性を確保する仕組みを導入する。情報・通信グループ プラットフォームソリューション事業部 事業部長の中村孝男氏は、「クラウドではどこで何が動いているか、またデータがどうなっているかがわからない、といった点にお客さまが不安を感じている。当社ではクラウド環境下でもユーザーの独立性を確保し、高いセキュリティを提供できる」と、自社の強みを強調する。

 最後の「環境配慮」では、自社の省電力製品の利用に加えて、ハードウェア仮想化技術「Virtage」によるサーバー集約、JP1による省電力運用、また環境配慮型データセンターの利用などにより、環境への影響を低く抑えたサービスを提供できるという。

 ラインアップとしては、まず、プラットフォームリソースをネットワーク経由で提供する基本サービスを提供。さらに、アプリケーションの開発・実行に必要なミドルウェアを適切に組み合わせて提供する「ソフトウェアスタック提供サービス」、クラウド導入コンサル/支援サービス、SaaS事業者向けに、SaaSの構築・運用に必要なコンポーネント、検証環境、ノウハウを提供するサービスなど、幅広いメニューをそろえ、ユーザー企業のクラウド活用を支援するとした。

 PaaSの価格は、プラットフォームリソース提供サービスが、Linux OS、CPU1コア、メモリ2GB、システムディスク40GBの仮想サーバー環境で8万9000円/月から。そのたのサービスはいずれも個別見積もりで、7月31日より順次提供を開始する。

 なお日立では、関連するシステム構築やプラットフォーム製品の売り上げを含めて、2011年度に1000億円の売り上げを目指してビジネスを推進する意向。北野氏は、自社のクラウド戦略を概観し、「クラウドコンピューティングは、本格的な企業ユースに向けてまだまだ進化しないといけないが、今後もクラウド時代に向けてビジネスモデル、製品技術、組織を見直しながら最適解をうっていく」との姿勢を示した。




(石井 一志)

2009/6/30 17:01