レッドハットも仮想化・クラウドにフォーカス-2010年の事業戦略を発表


代表取締役社長の廣川裕司氏

 レッドハット株式会社は3月30日、3月より始まった2011年度の事業方針説明会を開催。同社代表取締役社長の廣川裕司氏が出席し、KVMを中核とした仮想化・クラウドソリューションに注力する考えなどを発表した。

 廣川氏はまず、2010年度(2009年3月~2010年2月)のワールドワイドの業績について、「第4四半期は対前年比で売上高19%増を達成。また、過去最高の売上高である7億4800万ドルと、厳しい経済環境下ながら、順調に成長している」と紹介。国内に関しては、「数字は公表していないが、この2年間で1.5倍近く事業規模を拡大しており、SOA/JBoss事業だけを見ると、対前年比で約70%の伸びとなった」と、OSだけでなく、ミドルウェア分野でも存在感を示しつつあると述べた。

 これを踏まえ、2011年度(2010年3月~2011年2月)の事業方針として、クラウドコンピューティング・仮想化ソリューションの拡充と営業体制の強化を行うことを発表。「今年度に関しては、日本中をレッドハットのカラーである赤色で染めるくらいの勢いで展開する。そのためにも営業体制を強化することが重要」と発表。

 具体的には、クラウド・仮想化関連の新部門として「クラウド・仮想化事業本部」を4月1日付けで発足する。これはJBoss事業を強化するときに用いた手法で、20名程度の人員で展開するとのこと。また、営業体制そのものの強化では、プリセールス部門の人員を60名規模に強化。エンタープライズ分野を中心に、ソリューション営業力を強化すると述べた。


2010年度の決算概要レッドハットの2010年度ハイライト2011年度の事業方針

 事業拡大のための戦略としては、1)パートナー事業の強化、2)クラウド・仮想化ソリューションへの注力、3)SOA/JBoss事業・サービス事業の拡大、4)顧客ベースの拡大、の4つを発表。

 廣川氏は、「われわれのビジネスの大半はパートナーとのエコシステムで成立している。ポータルの開設や案件の共有、ISV対応の営業部門の新設、更新支援活動など、パートナーとの関係をさらに強化する。クラウド・仮想化に関しては、KVMを扱えるエンジニアを1000名規模まで増加させることで、実際のソリューション展開を支援していく。JBossについては、自社および外部を含めて、コンサルタントの数を5倍にし、他社からのマイグレーションサービスなどサービス事業を拡大していく。また、顧客ベースに関しては、現在の8000社から1万社以上にまで拡大していきたい」とした。

クラウド・仮想化事業本部の概要

 クラウド・仮想化ソリューションに関しては、「昨年はXenとKVMをあわせて1億円未満のビジネスだったので、今年は10倍にしたい。KVMは高く評価されているので、エンジニアを増やしていく。また、パブリッククラウドを構築できる大企業などに対しては、特定プログラムという形で提供することも考えている」と、エンジニア育成のほか、価格面でも柔軟な対応をしていく考えを示した。

 同社のクラウド・仮想化ソリューション向け製品について、同社マーケティング本部 部長の中井雅也氏は、「レッドハットには、クラウドという名前が付いた製品はないが、すべての製品はクラウドで使用できる」と、仮想化レイヤーからOS、ミドルウェア、フレームワークを含めて、全分野でクラウドソリューションに対応可能であると強調。また、米IBMがクラウドサービスのプラットフォームとして、レッドハット製品を選択したことに触れ、「Red Hat Enterprise LinuxもIBMが採用したことが転機となり、今ではミッションクリティカル領域で使われるようになっている。クラウドソリューションも同様に成長することを期待している」と、引き続き適用領域を拡大していくと述べた。

 具体的な施策としては、サービスラインアップの強化を発表。「KVMスタートアップサービス」「仮想化技術ワークショップ」「仮想化技術導入支援サービス」「仮想化技術コンサルティングサービス」などを実施することを発表した。


デスクトップ領域からミッションクリティカルまで、適用領域の拡大を目指す発表されたサービス





(福浦 一広)

2010/3/31 00:00