Excelからも使えるHPCプラットフォーム「Windows HPC Server 2008 R2」


 マイクロソフト株式会社は4月7日、HPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)向けの次期プラットフォーム「Windows HPC Server 2008 R2」ベータ2を公開した。正式出荷は2010年後半を予定しているが、このベータ2には製品版相当の機能も多数含まれており、十分に評価できるものとなっている。

 今回、米MicrosoftでWindows HPC Serverを担当している、Server & Tools Business Group、シニアディレクターのVince Mendillo氏に、製品の特長などを伺った。


―HPC向けのプラットフォームとしては、Windows Server 2003ベースの「Windows Compute Cluster Server 2003」、Windows Server 2008ベースの「Windows HPC Server 2008」に続く3世代目の製品となりますね。これまでの製品とはどのあたりが変わっているのでしょうか?

米Microsoft、Server & Tools Business Group シニアディレクターのVince Mendillo氏

Mendillo氏
 Windows HPC Server 2008 R2では、ワールドクラスのパフォーマンスを提供すること、エンジニアが持つ既存のテクノロジーやスキルを活用できること、そしてより使いやすく・より管理しやすく・よりプログラミングしやすい製品になることにフォーカスしています。

 パフォーマンスに関しては、製品そのものの機能強化で実現しました。既存テクノロジーやスキルの活用では、HPCだけでなく、ExcelやWindows 7といったメインストリーム製品を含まれています。


―どのような機能が提供されるのでしょうか?

Mendillo氏
 今回発表したベータ2では、大きく4つのエリアを強化しています。

 パフォーマンスでは、Linuxと比べて同等もしくはそれ以上の性能を実現しています。こうした基本性能の向上のほか、もうすぐ提供を予定しているVisual Studio 2010と密な連携をすることで、開発ツールそのものも充実しています。開発環境を整えることで、アプリケーション開発を支援できると考えています。また、IntelのParallel SuiteのプラグインやNVIDIAのGPGPU対応のParallel Nsightのサポートなど、サードパーティのサポートもベータ2でサポートしています。

 また、ワークステーションのクラスタ化も特徴的な機能です。これは、Windows 7をクラスタの演算ノードとして利用する機能で、既存の技術投資を活用できるのが利点です。Windows 7は市場で受け入れられているOSであり、Active Directory環境で利用できるのもメリットといえます。

 相互運用性もHPCでは重要です。実際、ベータプログラムに参加していただいている多くのユーザーから、ハイブリッドのソリューションがほしいという要望をいただいています。マイクロソフトとしては、ハイブリッドソリューションを提供するために、業界でトップクラスのHPCマネジメント企業とパートナーシップを結んでいます。

 たとえば、LinuxとWindowsの環境に対してインテリジェントに割り当てる機能では、Adaptive Computingと協力しています。また、Windows HPC Server R2のデプロイを共有されたハードウェア上でLinuxに対しても行えるソリューションでは、Clustercorpと協力しています。

HPC Services for Excel 2010

 そして、HPC Services for Excel 2010が今回のベータ2の最大の特長といえるでしょう。これはExcelのワークブックなどをHPCのクラスタ間で走らせることでパフォーマンスを向上させるもの。生命保険での利用例を見ると、1700行の処理に14時間かかっていたものが、HPC Services for Excel 2010を利用することで2.5分にまで短縮できています。

 Excelは、アナリストやエンジニアがデータ分析でよく利用しているソフトです。とはいえ、データ量が大きくなったり、演算が複雑化すると、結果が出るまでに非常に時間がかかります。HPC Services for Excel 2010を利用することで、こうした課題の解決につながりますし、さらに高度な分析が可能になります。


―Visual Studio 2010との連携は、開発者にとってメリットが大きいですね。

Mendillo氏
 そうですね。ただし、まだまだHPCを身近に感じている開発者は少ないのが現状です。700万のVisual Studio開発者に対し、教育の機会を提供したり、エンパワーメントする必要がありますね。

 実は、多くの開発者はスケールアウトにより問題解決できることを理解していないのです。スケールアウトされたソリューションとはどういうものなのか、HPCを活用することでどのように解決できるのか、といったことをトレーニングを通じて教えているのが現状です。

 Visual Studio 2010では、パラレルプログラミングを容易にできるよう、言語の組み方を簡素化したり、抽象化したりしています。スケールアウトも大切ですが、まずはパラレルプログラミングをマスターしていただきたいですね。


―ということは、Windows HPC Server向けのアプリケーションはまだまだ少なく、既存のHPCアプリケーションを移植しているという段階なのでしょうか?

Mendillo氏
 そうとはいいきれません。もちろん、既存のアプリケーションを移植したいと考えているお客さまはいますので、最大限の支援をしています。また、Visual Studio 2010などで新しいプログラミングモデルを検討しているお客さまもいます。われわれとしては、どちらに対しても支援をしていきます。


―HPCという言葉を聞くと、どうしても縁遠いものという印象をぬぐえません。こうした認識を変えるのは大変ではないですか?

Mendillo氏
 お客さまに対して、スーパーコンピュータ上で稼働するWindowsだと説明するようにしています。HPCはわからなくても、Windowsのことはわかっていますよね、と。これまでのスーパーコンピュータにはアクセスできなかったかもしれませんが、Windowsならアクセスできますよね、と。

 実際、小売業などではWindows HPC Serverがよく使われています。大量のデータを保有しているものの、これまではアクセスすることができなかったのですが、Windows HPC Serverを利用することで、Webトラフィックを分析したり、シミュレーションモデルを作成するなどの使い方もされています。

 ベータ2で提供するHPC Services for Excel 2010も、HPCに対する固定観念を崩すのに役立つと見ています。従来のExcelでは体験できなかったパフォーマンスを味わえますので、多くの方に対してエンパワーメントする製品だと考えています。


―製品版の提供はいつになりそうですか?

Mendillo氏
 2010年秋以降のリリースを予定しています。今回提供するベータ2などで得られたフィードバックを正式版に反映してからになります。

 ですので、今回公開したベータ2をぜひ利用していただきたいですね。





(福浦 一広)

2010/4/7 14:00