マイクロソフト、最新開発環境「Visual Studio 2010 日本語版」を4月20日より提供

パッケージ版は6月18日に発売

Visual Studio 2010の特徴
米Microsoft Visual Studioプロダクトマーケティング ディレクターのマット・カーター氏
Visual Studio 2010の製品構成

 マイクロソフト株式会社は4月13日、統合開発環境の新版「Visual Studio 2010日本語版」を発表した。英語版のVisual Studio 2010は同日にRTM(製造工程向けリリース)を完了し、MSDN Subscription会員向けの提供を開始。日本語版については、4月20日より順次提供開始され、無償版の「Visual Studio 2010 Express」も4月27日にダウンロード提供が開始される。また今回は同時に、.NET Framework 4も正式リリースされている。

 Visual Studio 2010は、マイクロソフトが提供する統合開発ソフトウェア製品の最新版。デバッグの履歴を保持し、過去の状態をさかのぼって復元できる「IntelliTrace」機能が追加されたほか、UML(Unified Modeling Language:統一モデリング言語)ダイヤグラムのサポート、マルチコア環境への対応強化など、多くの新機能が追加されている。

 また、Windowsアプリケーションのみならず、Webアプリケーション、クラウド環境のWindows Azure、Windows Phone 7など、最新の環境を含めた多様な環境をサポートする点も特徴。.NET Frameworkも2.0/3.0/3.5と、最新の.NET Framework 4についても、同一の環境でサポートできる。

 こうした点について、米Microsoft Visual Studioプロダクトマーケティング ディレクターのマット・カーター氏は、「お客さまが当社のプラットフォームに対して投資をされた場合は、Windowsスタック全体に関して、多くの時間とエネルギーを傾注しているだろう。すでにあるものをサポートしながら、新しいイノベーションを発揮しているSharePointやAzureも使いたいというニーズがあるので、責任を持ってサポートする」と話し、基本的なテクノロジーを継承しながら、最新のものを含めたマルチプラットフォームをサポートするメリットを強調した。

 ラインアップは、構成が複雑になりすぎ、わかりにくくなってしまっていた点を考慮。基本製品を「Ultimate」「Premium」「Professional」の3つに再構成した。「Ultimate」は、新機能のIntelliTraceを含めてアプリケーションライフサイクル全般をカバーする最上位製品で、複数の役割を共有する開発者、上級SEなどに向いたパッケージ。中位版「Premium」と下位版「Professional」は、開発に必要な基本機能のみを搭載するが、PremiumはExpression Studio 3によるアプリケーションデザイン機能や、データベース開発とアプリケーション開発の連携機能などを備え、より広い環境に対応できる。

 日本語版のボリュームライセンス提供は5月1日より開始され、Open Businessでのライセンス(L)価格は、「Ultimate」が128万円(税別)、「Premium」が58万5000円(税別)、「Professional」が9万1600円(税別)。MSDN Subscription(2年)付きのライセンス&ソフトウェアアシュアランス(L&SA)価格は、それぞれ202万円(税別)、92万4000円(税別)、16万4000円。

 6月18日に発売となるパッケージ版は、「Ultimate」が164万円(税別)、「Premium」が75万円(税別)で、いずれもMSDN Subscriptionが1年分付属する。「Professional」は、MSDN Subscription(1年分)付きが16万5000円(税別)、MSDNなしが12万8000円(税別)。

 マイクロソフト デベロッパー&プラットフォーム統括本部 開発ツール製品部 部長の遠藤敦子氏によれば、従来の「Team Suite」「Team Edition」が「Ultimate」へ移行することになるが、機能が大幅に増加したことに伴い、若干価格が上昇しているという。

 一方、「Professional」については、キャンペーンを2つ用意した。1つ目は、MSDNなしのパッケージについて、最新版のWindows/Windows Server/Databaseを開発用途で使用できる「MSDN Essentials Subscription」を、1年間無償で提供するもの。もう1つは、Visual Studio 2005/2008の「Standard」を利用するユーザーを対象とした「スタンダードエディション 乗り換えパッケージ」。価格は3万9800円(税別)で、1万本の限定となる。なお、こちらにはMSDN Essentials Subscriptionは付属しない。

製品構成と価格体系「Professional」のキャンペーン製品スケジュール
マイクロソフト デベロッパー&プラットフォーム統括本部 開発ツール製品部 部長の遠藤敦子氏
Visual Studio 2010で実現するアプリケーションライフサイクル管理

 また、Visual Studio 2010では、アプリケーションの設計、開発、テストといった一連の工程において、開発者を支援する機能をさまざま備えるのみならず、アプリケーションライフサイクル全体を管理するための機能も搭載しており、包括的な開発支援が可能になっている。アプリケーションライフサイクル管理(ALM)を適切な形で導入すれば、プロジェクトの簡略化・自動化によって最適なソフトウェア開発が実現されるほか、多様な観点からのテストによって、高い品質の確保が可能になる。マイクロソフトでは、「開発者個々人の問題だけではない、プロジェクト全体で品質管理に取り組む必要ある」(遠藤部長)として、たびたび、こうした点を訴えてきたが、日本においてもその導入が進みつつあるのだという。

 マイクロソフトはさらにこの普及を推進するため、ALMの中核となる、ソフトウェアのチーム開発を支援するサーバーアプリケーション「Team Foundation Server」について、パッケージ価格を見直し、前バージョンの38万円(税別)から6万8000円(税別)まで、戦略的に価格を引き下げている。遠藤部長はこれについて、「Team Foundation ServerはALMには欠かせない要素であり、多くの方に使っていただきたい」と述べ、価格変更に込められた思いを説明する。

 さらに、「基本構成」インストールオプションによって、一部の機能はクライアントOSにインストール可能になり、より手軽に利用可能になったこと、またアドオンの「Team Explorer Everywhere」を用いて、Javaアプリケーション開発にも対応できることなどの強化点を紹介し、ALMの利用を訴えていた。

 価格は、Open BusinessのLが5万6100円(税別)、L&SA(SA2年分)が8万4100円(税別)。パッケージでは前述の通り6万8000円(税別)で、パッケージで購入すると、5人までCALが不要になっているという。追加のCALは、デバイスCAL/ユーザーCALともに6万8000円(税別)。

 このほか、テストに特化した「Test Professional」や、テスト環境の仮想化を行う「Lab Management」もラインアップされているが、後者についてはまだ提供されず、2010年中のリリースを予定している。

 「日本には数多くの開発者が存在する重要な市場であるし、ベータ開発においても、ローカライゼーションを日本のために進めてきた。チームを重要視する日本はVisual Studio 2010と大変親和性が高く、良い結果をもたらすだろう。ソフトウェア作りをアートのようなものとして取り組んでいる方々には、当社のやり方が適している」(カーター氏)。



(石井 一志)

2010/4/13 16:52