日本HP、Itanium 9300番台を搭載した「第2世代 HP Integrityサーバー」

「安全クラウド」宣言により、2011年末までに国内全サーバー市場で1位を目指す

 日本ヒューレット・パッカード株式会社(日本HP)は4月27日、Itaniumプロセッサを搭載する「第2世代 HP Integrityサーバー」を発表した。サーバーブレード3製品を5月上旬より、ハイエンドの「Superdome 2」を9月上旬より、ラック型「rx2800 i2」を9月下旬より、それぞれ出荷開始する。

日本HP 執行役員 エンタープライズストレージ・サーバー・ネットワーク事業統括の杉原博茂氏
理想的なクラウド環境が提供できるという

 現在、日本HPでは「Converged Infrastructure」戦略を展開している。このConverged Infrastructureとは、簡単にいえば、サーバー、ストレージ、ネットワークや、電力、冷却能力といったリソースをプールして、統一的に管理できるようにしようというもの。Converged Infrastructureに準拠した製品は、「すべてのリソースを1カ所に集め、必要になったら取り出し、不要になったら戻す、といった動作を行えるため、最適なクラウド基盤になる」(日本HP 執行役員 エンタープライズストレージ・サーバー・ネットワーク事業統括の杉原博茂氏)ことから、理想的なクラウド基盤として活用できる。

 Converged Infrastructureを体現した製品としては、「HP BladeSystem Matrix」があるが、これはあくまでもx86アーキテクチャをベースにしたもので、ミッションクリティカル領域での信頼性については、大型UNIXサーバーなどには劣っている。しかし、今回提供される第2世代のIntegrityは、ミッションクリティカル領域でも十分に耐えうる可用性・信頼性を備えているため、同領域における、クラウドに最適なサーバー製品に位置付け、積極的に展開するとした。

 信頼性面での具体的な機能としては、CPUの2次キャッシュでエラーが出た場合にもシステムを止めずに済む「Intel Cache Safe Technology」や、DIMM上のDRAMが2つ壊れてもシステムに影響を与えないDDDCをサポートするほか、HP-UXとの組み合わせにより、エラーの多発するコアを自動で切り離すDPR(Dynamic Processor Resilience)機能を実現している。

 性能面でも、最新のItaniumである9300番台(開発コード名:Tukwila)を搭載し、2倍~9倍に処理能力が向上しているとのこと。

インテル 代表取締役社長の吉田和正氏は

 ゲストとして登壇したインテル 代表取締役社長の吉田和正氏は、「激動する時代には、高性能、高い信頼性・可用性を持つ、グローバルで展開できるシステムが必要。約2倍の性能を持ち、Itanium 9300番台は第7世代であり、HPと一緒に、HPが提供するサービスに最適なアーキテクチャとしてスクラッチから作り上げられているし、インテル自身も、Itaniumのロードマップを今後も力強く展開する。信頼できるサービスをクラウドに展開できる点が強みで、エンドユーザーに対する価値を高めていきたい」と述べ、ミッションクリティカル領域でのクラウド展開について、Itaniumが担っていくとの姿勢を示した。


ブレード型、ラック型、独自アーキテクチャの「Superdome 2」を用意

ブレードサーバー関連では3製品を提供

 製品ラインアップとしては、ブレードサーバー、ラック型、Superdome 2の3つの形態を用意する。

 ブレードサーバー関連では、2Way(計8コア)の「BL860c i2」、4Way(計16コア)の「BL870c i2」、8Way(計32コア)の「BL890C i2」と、3種類のサーバーブレードを、既存の筐体「c-classエンクロージャ」向けに提供。前世代のItaniumブレードや、x86ブレードとの併用もサポートする。また、今後提供される予定の「アップグレード・キット」によって、BL860c i2はBL870c i2に、BL870c i2はBL890c i2にスケールアップできるよう設計されているため、既存資産を生かしたシステム拡張が可能になるとのこと。価格は順に、168万9450円から、748万4400円から、1633万3800円から。

 ラック型では、2Uサイズの2Way(計8コア)サーバーであるrx2800 i2を提供する。小規模システムでの導入に向いたモデルで、支店・部門クラスでの小規模なUNIXシステムや、性能要件があまり要求されない古いシステムを、仮想化機能を使って統合する場合のプラットフォームに適しているという。価格は152万4600円から。

 最上位製品のSuperdome 2では、「セル・ブレードアーキテクチャ」を新たに採用し、構造を大きく変更した。このアーキテクチャは、いわば「ブレードの集合体」で、2基のCPU(計8コア)を搭載するセル・ブレードを、230Gbpsの転送速度を持つ「HPクロスバーファブリック」で接続して構成されている。

 日本HP エンタープライズストレージ・サーバー・ネットワーク事業統括 ビジネスクリティカルシステム事業本部 製品マーケティング本部 製品企画部 担当マネージャの山中伸吾氏は、「クラウド環境では、複数のサーバーをネットワークでつなぎ、サービス能力がいっぱいになってきたら増設する、というアプローチだが、これは、分散処理ができるアプリケーションの力で対応していた。しかし、アプリケーションは分散処理できるものばかりではないので、すべてをクラウドに対応させることはできなかった」と従来のスケールアウト型アプローチの問題点を説明。

 その上で、「Superdome 2では、クロスバーファブリックでセル・ブレードをつなぐと、OSからは1つのサーバーに見えるため、分散処理をかける必要がなく、どのようなアプリケーションでもクラウド化が可能だ」と述べ、Superdome 2のメリットを強調した。さらに山中氏によれば、仮想化を用いない場合でも、同コア数で、従来製品と比べて1/3の面積で設置できるほか、最大20%の消費電力削減を実現。仮想化を用いた統合では、設置スペースを1/4にし、最大65%の消費電力を削減できるとのことで、管理性、省電力性の大幅な向上が期待できる。

日本HP エンタープライズストレージ・サーバー・ネットワーク事業統括 ビジネスクリティカルシステム事業本部 製品マーケティング本部 製品企画部 担当マネージャの山中伸吾氏。手に持っているのがセル・ブレードだ従来の手法(左)では、分散処理が可能なアプリケーションによってクラウドを提供していたが、Superdome 2(右)では、セル・ブレードアーキテクチャによってアプリケーションに左右されず、クラウドが提供できるという

 Superdome 2の価格は2841万3000円からだが、購入方法も変更された。ユーザーはまず筐体を購入し、その上に搭載するセルブレードの枚数を決定するが、セルブレードには、すべてCPUが2基搭載された形で納品される。ユーザーは、その上で利用したいCPUコア数分の利用権を購入して、コアをアクティブにすることになる。山中氏はこれについて、「利用権はオンラインで発行でき、利用形態に応じて、筐体内・筐体間で利用権を移動することも、一時利用をすることも可能。また、ネットワークで接続されていれば、異なるサイトにある筐体にも利用権を移行できるので、ディザスタリカバリ時のコストを最大50%削減可能だ」と説明している。

Superdome 2の購入方法1コア単位で有効・無効を調節できる点も、ソフトウェアライセンスの有効活用という点ではメリットになる

 なお、日本HPはこの製品発表にあたり、「安全クラウド」宣言というメッセージを発信。日本HP 代表取締役 社長執行役員の小出伸一氏は、「ミッションクリティカル性を、業界で高く評価されている製品の第2世代で、多くの機能を追加し、性能を向上させて提供するもの。性能、セキュリティ、管理の複雑さ、経済の合理性といった面でメリットを提供し、ミッションクリティカルなクラウドを支援できる。堅牢性、安全性が求められる一方で、クラウドでは柔軟性、変化への対応が求められるが、その両方に対応可能だ」と力強く述べた。

 同社では、この製品の発売をきっかけに、「ミッションクリティカルなOSとハードウェアが必要なことをあらためて訴えかけ、メインフレームを含めた、国内全サーバー市場の出荷台数で、2011年末までに1位を獲得する」(杉原氏)計画だ。

Superdome 2(左)と日本HP 代表取締役 社長執行役員の小出伸一氏(右)。壇上ではスモークがたかれたが、これは「煙ではなくクラウドの雲」だそうだ新製品を手に握手をするインテルの吉田社長(左)と日本HPの小出社長(右)「安全クラウド」宣言





(石井 一志)

2010/4/28 00:00