マイクロソフト、SQL Server 2008 R2の「CQI」の成果を説明-SIノウハウ向上を支援


 マイクロソフト株式会社は、製品品質を向上させる取り組みの一環として、実際のSI作業を想定して作ったシナリオを検証する、早期実証プロジェクト「Center of Quality Innovation(CQI)」を、パートナー企業とともに実施している。今回は、5月より提供を開始した最新RDBMS「Microsoft SQL Server 2008 R2」でのCQIについて、マイクロソフトとパートナー3社に話を聞いた。

マイクロソフト サーバープラットフォームビジネス本部 エグゼクティブプロダクトマネージャーの斎藤泰行氏

 マイクロソフトでは、完成前にさまざまなテストと評価を実施する「製品クオリティ」、製品を実際に展開する際のSIノウハウを向上させる「展開(SI)クオリティ」、提供を開始した製品の品質を保つための「製品維持クオリティ」、といった3つを柱に、製品品質向上の取り組みを行っている。

 CQIはこのうち、「展開(SI)クオリティ」における重要な施策として行われているもの。サーバープラットフォームビジネス本部 エグゼクティブプロダクトマネージャーの斎藤泰行氏は、「出荷直後の製品は情報がそろわず、機能面や“癖”を知らないがために、工数が膨らんでしまったり、運用開始後に問題が発覚したりすることがある。これを防ぐために、お客さまにシステムを納入するSIerの目線で、厳しいチェックをいただくことが目的」と、その狙いを説明する。この取り組みの特徴は、機能単位ではなく、システムを実際に納入する場合を想定した「シナリオ」を、実証実験によって検証する点で、その結果を広く公開することによって、「どこで製品を展開しても、問題が出ないことを目指して」(斎藤氏)進められるという。

品質向上の取り組み展開(SI)クオリティ
NEC 第三ITソフトウェア事業部 グループマネージャの白石雅己氏

 SQL Server 2008 R2で行われたCQIの中で、今回紹介されたのは3つ。そのうちNECは、「TBクラスのデータウェアハウス(DWH)とPowerPivotの組み合わせによる、セルフサービスBI」の検証を行った。NECはSQL Server 2008のCQIにも参加し、TBクラスのDWH検証を行っているが、今回はそれをベースに、新機能であるPowerPivotの分を追加検証。それによって、「動作の特徴や注意点が明確になり、お客さま対応を行うSE向けのガイドを作るなど、情報収集を行えた。そしてその成果を生かすために、ソリューション案の組み立てを実施している」(NEC 第三ITソフトウェア事業部 グループマネージャの白石雅己氏)のだという。

日本ユニシス 共通利用技術部 データ利用技術室 データベース適用グループ グループリーダの高橋恭之氏

 日本ユニシスでは、SQL Server 2008 R2の標準機能である、マルチサーバー管理機能を中心とした検証を実施した。同社は前回のCQIで、SQL Server 2000/2005から2008へのアップグレード手法を中心に行っており、この結果は最新版でもほぼ同様に適用できるのだが、「移行後のメリットがないと、移行促進は難しい」(日本ユニシス 共通利用技術部 データ利用技術室 データベース適用グループ グループリーダの高橋恭之氏)。そこで今回は、「新機能を中心に、サーバー管理の負荷軽減を検証する」という目的で行われた。

 もちろん、すでに提供されているようなサードパーティ製のツールを利用すれば、マルチサーバー環境での高度な管理は行えるが、標準提供機能の範囲でサーバー管理機能の有効性を検証すれば、コスト面に配慮した移行が可能になる。今回の検証では、「完全ではないが、ある程度のことはコストを抑えながら実現できる」有用性が確認できたため、この成果をホワイトペーパーとして公開する予定で、「製品特性やノウハウを蓄積し、新技術へすぐ対応できるようにするための、コア技術者の育成も行えた」(高橋氏)としている。

富士通 プラットフォーム技術本部 ISVセンター MSミドルウェア技術センター長 荒山一彦氏

 今回からCQIに参加した富士通では、「すでにお持ちのデータベースがあり、古めのサーバーをどう新しいものに統合すればいいのか、という声をいただいている」(富士通 プラットフォーム技術本部 ISVセンター MSミドルウェア技術センター長 荒山一彦氏)ことから、Hyper-Vによる仮想環境への集約とマルチサーバー管理を検証した。この検証では、Windows 2000 ServerとSQL Server 2000の環境を、Hyper-VとSQL Server 2008 R2で統合し、集約と運用コストの削減を目指すもので、Sysprepによるディスクイメージングと、管理ツール「SCVMM(System Center Virtual Machine Manager)」での展開手順などを検証している。

 同社によれば、I/O性能が要求されるため仮想化に向かないのではないか、とされるデータベースでも、大規模でコア数がたくさん必要なOLTP処理は厳しいものの、小規模な部門サーバーを1カ所に集めて可用性を持たせる、といった使い方では、十分使えたとのこと。このことから、クラウド環境にも応用できるのではないかとの見方を示した。

 なおマイクロソフトでは、今回より、2009年10月に開設した「大手町テクノロジーセンター」内にCQI拠点を常設。実際にプロジェクトで使用された環境において、実際に用いたテストシナリオ、テストスクリプトなどを利用した実証作業を体験できるようになった。もちろん、技術資料もホワイトペーパーとしてWebサイトで公開され、それを参照することも可能で、こうした活動によって、展開時のSI負荷を軽くするとした。現在、SQL Server 2008 R2のCQIはまとめの作業を行っており、早ければ8月くらいから、資料の提供や大手町テクノロジーセンターでの体験が行えるようになる予定だ。




(石井 一志)

2010/5/21 13:48