8月末がリミット! 企業ユーザーのための“おいしい”Windows 7移行法


 マイクロソフト株式会社は7月27日、Windows 7のボリュームライセンス提供日を発表。ボリュームライセンスの販売にあわせて、「法人向け早期アップグレード割引キャンペーン」を実施することを発表した。これは、ボリュームライセンスの提供が始まる9月1日から2010年2月までの期間限定で実施されるもので、Windows 7 Professionalのアップグレードライセンスを1万9800円(通常は2万4600円)で購入できるというものだ。これに伴い、2月から実施している「Windows 7先行優待キャンペーン」は8月末で終了する。

 Windows 7の導入を検討している企業ならば、少しでも安く済ませたいだろう。今回は、番外編として現在提供されているキャンペーンのどちらが“お得”かを見てみる。


ボリュームライセンスの基本的な考えを理解しよう

 まずはボリュームライセンスとは何かを見てみよう。ボリュームライセンスはソフトウェアのライセンスの一形態だ。このボリュームライセンスは利用規模や利用用途などにより、いくつか用意されている。このあたりの詳細は「ボリュームライセンスを知るとマイクロソフト製品が安くなる?」を参照していただきたい。

 では、Windows 7で提供されるボリュームライセンスはどのようなものだろうか。実は、クライアントOSはアップグレード用のライセンスのみがボリュームライセンスで提供されており、フルライセンスはボリュームライセンスでは提供されていない。つまり、OSがインストールされていないPCでは、ボリュームライセンスを購入することはできないのだ。

 もう一つ注意が必要なのが、ボリュームライセンス自体が企業を対象としたものであるため、個人向けのOS(Windows XP HomeやWindows Vista Home Basic/Home Premium)は対象外となっていることだ。これはWindows 7へ移行を考えている企業にとって非常に重要だ。つまり、ネットワーク機能はいらないとか、初期導入コストが安いとか、そうした理由で個人向けのWindowsを使っている場合、“ボリュームライセンスの世界”への参加権は与えられていないのだ。これは個人向けのWindowsが搭載されているネットブックでも同様だ。

 もし、個人用のWindowsを多く使われているようなら、これ以降は読まなくてもいいだろう。10月22日に発売される通常版のWindows 7 Professional(3万7800円)、もしくはアップグレード版のWindows 7 Home Premium(1万5800円)を待つしかないからだ。


ケース1:2008年8月以降にPCを購入している場合

 では、いくつかのケースに分けて、どちらのキャンペーンを利用するのがお得かを見てみよう。まずは、2008年8月以降にPCを購入している場合を見てみる。

 先行優待キャンペーンは、2008年8月以降のWindows Vista Business搭載PC、またはWindows Vista Businessのダウングレード権で取得したWindows XP Professional搭載PCに対して、SA(Software Assurance)を1万2000円で提供するものだ。これを利用することで、SAの特典である契約期間中にリリースされる新製品へバージョンアップを行える権利を行使してWindows 7にアップグレードできる。

 もう一つの早期アップグレード割引キャンペーンも、対象となるPCは同様だ。ただし、購入期間の制限は設けられていない。割引されるのもWindows 7 Professionalへのアップグレードライセンスのみで、割引後の価格は1万9800円となっている。なお、この場合、SAは含まれないので、SAを利用したければ別途購入することになる。

 このように、2008年8月以降に対象となるPCを購入している場合、8月末まで実施している先行優待キャンペーンを利用する方がお得だ。なによりもSAも利用できるところがお得感を増している。


ケース2:2008年7月以前にPCを購入している場合

 では、2008年7月以前に対象PCを購入している場合はどうなるのだろうか?

 先行優待キャンペーンでは、SAだけでなくアップグレードライセンスも必要になる。ただし、この2つを足した価格が優待価格となっており、2万8500円(Open Business 2年の場合)で購入できる。ケース1と比べると、1万6500円余分な出費になる。

 早期アップグレード割引キャンペーンは1万9800円なので、SAを購入するつもりがなければ、9月より始まる早期アップグレード割引キャンペーンがお得だ。

 なお、SAはOpen Business 2年間の場合で1万5000円程度するので、SAを購入するのであれば、8月末までの先行優待キャンペーンがお得になる。


ケース3:パッケージ版発売後にアップグレード版を購入する場合

 Windows Vista Business搭載PC、またはWindows Vista Businessのダウングレード権で取得したWindows XP Professional搭載PCから、Windows 7 Professionalにパッケージ版でアップグレードする場合、2万5800円のアップグレード版を購入することになる。パッケージ版なので、SAはもちろんついていないが、アップグレード版購入時から90日間であればSAは購入できる。

 別の言い方をすると、今回提供されている2つのキャンペーンを利用せず、2010年3月以降にWindows 7へアップグレードする場合、この費用がそのままのしかかるということになる。


Windows 7への移行を検討している企業は8月末までに判断を!

 このように、どちらの場合でも先行優待キャンペーンの方が結果的にお得度が高いのがよくわかる。特にSAを購入すれば、DirectAccessやAppLockerなどの機能が入ったWindows 7 Enterpriseを利用できるのはお得だ。

 ただし、SAは保守プログラムのようなもので、継続的に費用がかかることも理解しておこう。つまり、2年契約のSAならば、2年後にSAを継続するかどうかの判断をしなければいけないのだ。契約期間中に新しいOSがリリースされれば、そのOSを利用できるものの、必ずしも新しいOSが出るとは限らない。また、新しいOSが出たからといってアップグレードするとも限らない。

 逆にいえば、今安い価格でOSのアップグレード権を購入しておいて、最大2年間アップグレードのタイミングを検討するといったことも可能だ。Windows OSのダウングレード権を使えば、今使っているWindows XPをそのまま使うこともできる。買うだけ買って、アップグレードは1年後に行ってもいいわけだ。

 パッケージ版やプリインストール版だけで企業システムを構築すると、OSのバージョンの違いが顕著になってくる。ボリュームライセンス+SAを利用すれば、OSのバージョン管理も容易になるのは間違いない。あと1カ月あまりではあるが、ボリュームライセンスを利用していない企業は、検討する価値はあるだろう。





(福浦 一広)

2009/7/31/ 00:00