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ボリュームライセンスを知るとマイクロソフト製品が安くなる?・第一回
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マイクロソフトのボリュームライセンスの仕組みを知る
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Windows VistaやOffice 2007がボリュームライセンス向けにリリースされ、導入を検討し始めた企業もでてきているだろう。このタイミングで紹介したいのは、マイクロソフトのボリュームライセンスという仕組みだ。ボリュームライセンスをうまく使えば、パッケージで購入するよりも安く新しいOSやアプリケーションが利用できるかもしれない。第一回目となる今回は、同社のボリュームライセンス全体のおおまかな仕組みについて説明する。
■ ボリュームライセンスによって異なるコンセプト
ボリュームライセンスは、大きく分けて、企業向け、教育機関、行政機関、ISV、サービスプロバイダーの5つがある。今回は、企業向けのボリュームライセンスを中心にして説明していく(教育機関、行政機関に関するボリュームライセンスは同社のWebサイトを参照のこと)。
企業向けのボリュームライセンスは、Enterprise Agreement、Select License、Open License、Open Valueの4つが存在する。また、Open Licenseは中小規模向けのOpen Businessと、より大規模向けのOpen Volumeに分かれる。
Enterprise AgreementとSelect Licenseは、250台以上のPCを導入している企業が対象となっている(関連企業を含めた企業グループ単位での契約が可能)。これらのライセンスは、ラージアカウントとなるため、専門のリセラーと契約することになる。PC台数や購入するライセンス数が多くなればなるほど割引率が高くなり、低コストでOSやOfficeを導入することができる。
Open BusinessとOpen Valueはそれ以下の環境が対象となり、5台以上のPCを導入している企業や個人事務所などを主な対象としている。最小が5ライセンスということで、個人ユーザーでもPCを数台持っていれば、ボリュームライセンスを購入することができる。
マイクロソフトのボリュームライセンスの種類
Enterprise
Agreement
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大規模向け
(PC250台~)
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Select
License
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Open
License
| Open Volume
| 中・大規模向け
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Open Business
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中小規模向け
(PC5台~)
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Open Value
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Open VolumeはEnterprise Agreementなどの大規模向けと、Open Businessなどの中間に位置する形態で、ソフトごとに設定されているポイントを、初回購入時に500ポイント以上購入する必要がある。例えば、Office 2007は1ライセンスにつき2ポイントと設定されているので、初回購入時には250ライセンス以上が必要だ。
Open Volumeは、アプリケーション製品(Officeなど)やシステム製品(OS)といったカテゴリごとに、初回時に500ポイント購入しなければならないため、PCの数と導入するソフトの組み合わせによっては、割引率の高いSelect Licenseなどを選択したほうが安くなる場合がある。また同じOpen Licenseでも、Open BusinessとOpen Volume間で互換性があるわけではないので、Open Businessで初回購入した企業がOpen Volumeでソフトを購入するには、新たに初回ライセンス数をクリアしなければならない。このようにOpen Volumeは少し使いづらいライセンス体系となってしまっている。
マイクロソフトのボリュームライセンスで扱っている商品は、マイクロソフトが提供しているすべての商品ではない。OSやOffice(Mac版も含む)、サーバーOS、サーバーアプリケーション、開発ツール、Bookshelf、Encarta Premiumなどが対象となる。Officeに関しても、Personalは提供されていない。
ボリュームライセンスで扱える製品扱えない製品
ボリュームライセンスで扱える製品の例
・Windows Vista Business
・Windows Server 2003
・SQL Server 2005
・各サーバー製品のCAL
・Office Standard 2007
・Word 2007
・Excel 2007
・・・など
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ボリュームライセンスで扱えない製品の例
・Windows Vista Home Basic/Premium
・Office Personal 2007
・Xbox
・ゲーム製品
・はがきスタジオ
・Money
・・・など
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そして一番注意しなくてはいけないのが、OSの購入だ。ボリュームライセンスでOSを購入しようとする際には、いくつか細かなルールがある。
まず、企業を対象としているため、Windows VistaのHome PremiumやHome Basicなどのバージョンは提供されていない。提供されているのは、BusinessとUltimate、そしてEnterpriseのみだ(逆にEnterpriseは、ボリュームライセンスでのみ提供)。
さらにボリュームライセンスで販売されているOSは、アップグレードライセンスだということだ。このため、PCには必ずOSがインストールされている必要がある。ショップブランドなどのPCをOS無しで購入して、そこにボリュームライセンスで購入したWindows Vistaをインストールするのは、ライセンス違反となる。
アップグレードにあたっても、ライセンスで提供されているのがWindows Vista Businessになるため、XP Professionalなどのビジネス用OSがアップグレードパスの対象となっている(詳細に関しては、ライセンスの販売店に要相談)。
なお、マイクロソフトのボリュームライセンスは、各ライセンス間での整合性がきちんとあっているわけではない。また、Open LicenseやOpen Valueは、ルールが細かく変わるので注意が必要になる(いくつかのソフトでキャンペーンをおこなっている場合もある)。
■ ソフトウェアアシュアランス(SA)とは何か?
マイクロソフトのボリュームライセンスを知る上で、知ってもらいたいのが、ライセンス(L)とソフトウェアアシュアランス(以下、SA)という考え方だ。
ライセンスというのは、マイクロソフトのパッケージを購入するようなものだ。つまり、Vistaのライセンスを購入すれば、VistaというOSに関しての使用権(無期限)を購入することができる。
一方SAは、イメージとしてはソフトウェアの保守プログラムに近いもの。店頭などで販売されているパッケージ版とは違う権利で、ボリュームライセンスでのみ扱われている。ライセンス(L)とSAをセットにしたL&SAという形態でも販売されており、ユーザーはこれを購入すると、技術サポート、TechNetへのアクセス、デスクトップ導入計画サービス、年中無休の技術サポートなど、企業におけるPCやサーバーの導入に関するさまざまなサービスをうけることができる(特典はライセンスプログラムごとに異なる)。
このSAの最大のメリットは、なんといっても、アップグレードに関する権利だ。SAには、契約期間中(2年、もしくは3年)にリリースされる新しい製品へのバージョンアップを行える権利が付属している。つまり、Windows XPのSAを1年前に購入していれば、Windows Vistaへのアップグレードが自動的に保証されることになる。
またSAは、契約を更新することができるので、契約期間が切れる前に再度SAだけを購入すれば、再度2~3年間、アップグレードが保証されることになる。マイクロソフトでは、2~3年でのアップグレードを基本としているため、多くのアプリケーションでは、SAによるアップグレードのメリットを受けることができるだろうと予測される(VistaやOffice2007のようにリリースが遅れなければ)。
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SAの取得方法(資料提供:マイクロソフト株式会社)
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企業にとってSAのメリットは、バージョンアップ権利以外にも、マイクロソフト認定パートナーの技術者が、その企業における最適のITリソースの導入・運用をコンサルティングする「デスクトップ導入計画サービス」、新たなソフトウェアを導入する場合に問題になるソフトウェアのトレーニングに関しても、インターネットを利用した「e-Learning」によってトレーニングを行うことができる。これを使えば、新しいソフトウェアの使い方を短期間で学ぶことができ、新たな機能を利用して高い生産性により業務をこなすことができるようになる。加えて、年中無休の技術サポート、ホットフィックスの提供を延長する契約など、SAは、企業におけるPC・サーバー導入を強力にサポートしている。
Vista Enterpriseが利用できる点もSAのメリットの1つだ。Vista Enterpriseは単体では販売されず、Vista BusinessのSAを契約したユーザーに対しての特典として提供されている。Vista BusinessのL&SAを購入したユーザーから見れば、Vista Enterepriseへのアップグレード権もおまけでついてきたというイメージになるだろうか。なおSAを契約すると、Vista Enterpriseと同様に、Vista Ultimateも利用することができる。
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(資料提供:マイクロソフト株式会社)
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さらにSAは、企業だけでなく、自宅使用プログラム(Home Use Program:HUP)と社員購入プログラム(Employee Purchase Program:EPP)という従業員に対するメリットも用意されている。
「自宅使用プログラム」は、SAを契約している企業の従業員が、SAを契約しているマイクロソフト製品を自宅で使用できるようにするもので、原則メディア代のみで使用権を得ることができる。使用権は、SAの契約数1つあたり、1人の従業員に1ライセンス分付与され、SAの契約期間中のみ有効となる。対象となるソフトは、Office製品やVisio、Publisherなどで、OSは対象外だ。
もう1つの「社員購入プログラム」は、いくつかのOffice製品、フライトシミュレータなどのPCゲーム、はがきスタジオなどが割引価格で購入できるプログラムだ(個人的には、XBOX360も対象とすると、よりXBOX360も売れると思うのだが?)。利用にあたっては全社契約が必要となるものの、小規模企業でも利用できるOpen Valueの全社契約オプションでも利用できる。
SAの価格はソフトによってまちまちだが、有効期間2年の場合は、大体ライセンスの0.5倍というのが一定の目安となる(つまり、L&SAで購入するとライセンス代の1.5倍で購入できる)。なお、SAが2年か、3年かということは、ユーザーが使用するボリュームライセンスによって異なる。
なおSAは、ライセンス(L)と同時に購入することを基本としているが、パッケージで購入したり、新しいPCを購入したりした場合には、90日以内ならOSのSAだけを購入できる。各種ボリュームライセンスのうち、通常はOpen BusinessかOpen Valueを利用することになるだろう。
ユーザーにとっては、SAという権利は、非常にわかりづらい。ただ、年額単位で支払うアップグレード権利を持ったサポート料と考えれば、わかりやすいかもしれない。SAという権利が存在するため、企業にとっては、計画的に、OSやOfficeアプリケーション、サーバーの導入を行うことができる。
■ SAはギャンブルか?
新製品であるWindows VistaとOffice 2007は、Windows XPリリースから5年、Office 2003からは4年と年数が経っており、これでは、SA(Open Businessでは2年、Open Valueでは3年)の魅力であるバージョンアップ版の提供というメリットもなくなってしまう。
しかしマイクロソフトでは、今後できる限りきちんとしたスケジュールでの製品リリースを計画しているという。例えば同社はOSの提供方針として、2年後にはマイナーバージョンアップ版となるR2、4年後にはメジャーアップグレードという計画を持っているようだ。サーバーOSのWindows Server 2003は、このスケジュールに従って、2006年にWindows Server 2003 R2をリリースした。さらに、Windows Vistaで取り入れられた機能をサーバーでも提供するLonghorn Serverを2007年後半に提供するというロードマップを示している。
Windows Vistaに関しても、Windows Serverと同じようなリリーススケジュールが考えられているという。このため、メジャーアップグレードは2007年の4年後である2011年になるのかもしれないが、2年後にリリースされると見られている“Vista R2”は、Windows Vistaリリース時に取り込めなかった多くの機能が入ってくることが予想される。このため、単なる改良版というよりも、大幅な機能アップ版になる可能性があるのだ。現段階で、R2のバージョンアップ版が提供されるかどうかはわからないが、SAを契約しておけば、追加費用なしでR2を入手できることになる。
またこれまで説明してきたように、SAにはさまざまな特典が追加されるようになった。マイクロソフトでも、「SA=アップグレード権といわれているが、SAのメリットはそれらだけではなく、サポートやトレーニングなどいろいろなものを提供している。また、今後はOSやOfficeのリリーススケジュールを見直して、ユーザーが満足いくようにしていきたい」(ライセンス関連を担当している、ビジネスマーケティング戦略本部 ビジネスマネジメント部 ライセンシング&プライシンググループのシニアマーケティングスペシャリスト、中谷智千氏)とコメントしている。
実際のところ、Windows XPからWindows Vistaへのアップグレードにあまりにも時間がかかったため、アップグレード権だけでなく、さまざまな特典をSAに追加していった経緯がある。さらに、Windows XPリリース後、早い時期にSAを契約した企業においては、当初購入したSAでWindows Vistaへのアップグレードができなかったことに関して、いろいろと苦言を呈されたようで、マイクロソフトでは、OSやOfficeのリリーススケジュールをSAの範囲内で行うようにしていく考え方のようだ。
次回は、中小企業やSOHO、個人事務所、個人にとって身近なOpen LicenseとOpen Valueに関して説明していこう。
■ URL
Microsoft Volume Licensing
http://www.microsoft.com/japan/licensing/default.mspx
■ 関連記事
・ ボリュームライセンスを知るとマイクロソフト製品が安くなる?・第二回(2007/01/23)
・ ボリュームライセンスを知るとマイクロソフト製品が安くなる?・最終回(2007/01/24)
( 山本 雅史 )
2007/01/22 00:00
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