「単なるバージョンアップではない」-マイクロソフト担当者が語るR2の魅力


 Windows Server 2008 R2の国内での提供日が、ボリュームライセンスは9月1日、パッケージ製品は10月22日と発表された。TechNetやMSDNでの日本語版のダウンロード提供も8月14日あたりで行われることがアナウンスされている。今回、マイクロソフト株式会社 サーバープラットフォームビジネス本部Windows Server製品部マネージャーの藤本浩司氏に、Windows Server 2008 R2を使用するメリットなどを伺った。


64ビットオンリーのサーバーOSに進化

―Windows Server 2008のリリースから1年で新しいサーバーOSをリリースするというのは、あまりにも早過ぎませんか?

サーバープラットフォームビジネス本部Windows Server製品部マネージャーの藤本浩司氏

藤本氏
 確かに、ユーザーの方々からもそういった声を聞きます。しかし、Windows Server 2008 R2は、Windows 7と一緒に使っていただいて、最も機能が発揮できるサーバーOSとなっています。こういった意味でも、企業においては、ぜひともWindows 7とWindows Server 2008 R2を一緒に利用していただきたいと考えています。

 また、Windows Server 2008 R2のカーネルは、Windows Vistaのカーネルを軽く・安定度の高いものにしたWindows 7と同じカーネルをベースにしています。サーバーの動作自体も軽くなり、使用するメモリも少なくなっています。


―Windows Server 2008 R2とWindows Server 2008の機能差はどういった部分にありますか?

藤本氏
 Windows Server 2008 R2における最大の特徴は、64ビット版だけしかリリースしないという点にあります。Windows Server 2008では、32ビット版と64ビット版の2つのOSをリリースしました。

 確かに、1年でハードウェアが一気に変わって64ビット化されたというわけではありません。Windows Server 2008をリリースした時点でも、多くのハードウェアが64ビットに対応していました。しかし、大きなターニングポイントになったのは、インテルのXeon 5500番台(開発コード名:Nehalem)の登場でしょう。Xeon 5500番台の登場により、メモリアーキテクチャが大きく変更され、大量のメモリを搭載できるようになりました。こういったハードウェア要因があって初めて、マイクロソフト自体もOSを64ビット版だけしかリリースしないという決断ができたのです。

 Windows Server 2008をリリースした時点で、次期サーバーOSは64ビット版のみというアナウンスもしていました。また、アプリケーションベンダーや周辺機器ベンダーもWindows Server 2008から積極的に64ビット版への対応を行ってくださいました。このため、Windows Server 2008 R2が64ビット版しかないということで、大きなトラブルが起こっているという話はまったくありません。スムーズに64ビット環境への移行が進んでいると思います。

 また、新しいCPUがリリースされたことで、Windows Server 2008 R2はさまざまな機能が追加されています。CPUがマルチコア化したことで、サーバーOSでも多数のCPUコアを使って、リニアにパフォーマンスがアップするようにしています。また、エコを重視して、負荷が少ないときにはCPUコアをスリープさせて、消費電力を低減させるパワーマネジメント機能も搭載されています。


仮想機能を重視したWindows Server 2008 R2

―Windows Server 2008 R2では、Hyper-Vがバージョン2.0にアップされました。以前のバージョンに比べると、どういった部分が機能アップしているのですか?

藤本氏
 新しいCPUで大量のメモリ容量とマルチコアをサポートしたサーバーが安価に提供されたことで、Hyper-V 2.0は本格的な仮想環境に進化しています。

Hyper-V 2.0の新機能
大規模な仮想環境に対応

 Windows Server 2008 R2では、最大256個のCPUコアのサポート、最大2TBのメモリをサポートしています。こういったコンピューティング環境を生かしきるには、仮想環境のHyper-Vもバージョン2.0に進化させる必要がありました。

 Windows Server 2008がリリースされたときは、β版としてリリースしたHyper-Vも2008年6月には製品版になりました。Hyper-V 1.0は、仮想環境を構築するため、最低限必要な機能しかありませんでした。多くのユーザーの方々からは、VMwareの製品と同じようなLive Migrationなどの機能が欲しいといわれていました。今回のHyper-V 2.0でやっと、このレベルにまでたどり着きました。

 また、Xeon 5500番台やOpteronなどの新しいCPUで追加された仮想化支援機能(EPTやRVIなど)をサポートしたことで、仮想環境のパフォーマンスが一気に改善しています。いろいろなデータが出ていますが、仮想環境と物理環境でのパフォーマンスがあまり違わないようになっています。

 そのほか、Windows Server 2008 R2では、仮想ディスク(VHD)のパフォーマンスを上げるため、さまざまな改良を行っています。これにより、VHDの容量固定ディスクでも、容量可変ディスクでも、同じようなパフォーマンスが出せるように改良されています。これも、Windows Server 2008 R2の仮想環境のパフォーマンスアップに寄与しています。

 Hyper-V 2.0でLive Migrationをサポートするために、複数のサーバーからアクセスできるディスクとしてクラスターシェアードボリューム(Cluster Shared Volume)という機能を作る必要がありました。また、動作しているサーバーのメモリ内容を完全にコピーして、別のサーバーにマイグレーションして、動作させる仕組みも用意されています。

 こういった機能を実現させるために、Windows Server 2008 R2をリリースします。Hyper-V 2.0は、Windows Server 2008 R2でしか動作しません。

 また、Hyper-V 2.0と組み合わせた形で、VDI(Virtual Desktop Infrastructure)機能がサポートされました。今までは、VDIへの接続をコントロールするマネージャーソフトは、マイクロソフトからはリリースしていませんでした。このため、提携関係にあるシトリックスの製品を使ってもらうようにしていました。

 Windows Server 2008 R2では、リモートデスクトップ(RD)接続ブローカーという機能を追加することで、マイクロソフトの製品だけでVDIソリューションが構築できるようになりました。また、Windows Server 2008 R2にバンドルされているため、低コストでVDIソリューションを試すことができます。

 もちろんシトリックスの製品には、シトリックスなりの良さがあります。ただ、Windows Server 2008 R2にRD接続ブローカーを入れることで、VDIというソリューションの敷居が低くなり、多くのユーザーにテストして、実導入していただけるモノと思っています。

強化されたリモートデスクトップ

 また、Windows Server 2008 R2とWindows 7は、VDIやリモートデスクトップ接続の機能をアップするために、新しいリモートデスクトップのためのプロトコルRDP 7.0を開発しました。RDP 7.0は、クライアントPCのGPU機能を生かすようになっています。これにより、Windows Server 2008では実現できなかったリモート環境でのビデオ再生やAero Glass UIなどがサポートされることになりました。

 RDP 7.0は、Windows 7でしかサポートされないため、こういった機能が利用できるのは、Windows Server 2008 R2とWindows 7という組み合わせだけです。


―RDP 7.0以外にも、Windows Server 2008 R2とWindows 7という組み合わせで実現された機能があると思いますが?

藤本氏
 DirectAccess機能は、Windows Server 2008 R2のIPv6機能を利用して、複雑なVPN接続を簡単に行えるようにしています。Windows Server 2008でもVPN機能はサポートされていましたが、社内のファイアウォールの存在など、VPNを利用するには、いろいろと設定を変更する必要がありました。しかし、DirectAccess機能を利用すれば、社内のセキュリティ設定を変更しなくても、簡単にVPN環境が構築できます。

 BranchCache機能は、ネットワーク回線が細い支店でクライアントPCやサーバーを使って、キャッシュ機能を提供します。支店のクライアントPCが、本社のサーバー上のドキュメントにアクセスすれば、クライアントPCにキャッシュが作られます。支店の誰かが一度でもアクセスしたことがあるドキュメントなら、支店のPC内部にキャッシュされているため、再度本社のサーバーにアクセスしなくてもよくなります。

 これ以外に、Windows 7が持つアプリケーションの動作の可否をコントロールするAppLockerやUSBメモリの内容を暗号化するBitLocker To Goの機能なども、Windows Server 2008 R2のActive Directoryからコントロールできます。

 また、IT管理者にとって強力なコマンドラインツールとなるPowerShellもバージョン2.0にアップされています。


―最後に、企業でWindowsサーバーを利用されている方々へのメッセージをお願いします。

藤本氏
 Windows Server 2008 R2は、さまざまな部分でWindows Server 2008の機能をバージョンアップしています。サーバーOSですから、リリース直後に導入ということはないでしょうが、多くのITプロの方々にRTMしたWindows Server 2008 R2をテストしていただきたいと思います。触っていただければ、Windows Server 2008 R2の良さが分かっていただけると思います。

 テストするときには、Windows VistaやWindows XPといったOSではなく、ぜひともWindows 7と組み合わせて試していただきたいと思います。そうすれば、Windows Server 2008 R2とWindows 7の組み合わせがどれだけ使いやすいのか、企業にとってメリットがあるのかが分かっていただけると思います。


―ありがとうございました。





(山本 雅史)

2009/8/7/ 00:00