「mixiがリアルな人間関係のコミュニケーションの場でありつづけるには」、ミクシィ有野氏


 今回のゲストは日本最大のSNSの運営会社ミクシィの有野さんです。有野さんは人材紹介サービスのFind Job!ではなく、mixi専任のプロデューサーとして初めてミクシィに入社しました。mixi Platformの発表や登録制への移行など、大きく変わりつつあるmixiの中で、どのような戦略と意志をもって働いているのか、率直に伺いました。


有野 寛一(ありの ひろかず)
株式会社ミクシィ mixi事業本部 企画部 サービスエバンジェリスト

1975年3月生まれ。石川県出身、東京在住。
音楽学校で作曲を学び作曲家として活動する。
95年、Webに出会い、Web制作会社を経てECサイト運営に携わる。後に大手ポータルサイトにてサービス企画を担当。
2006年より株式会社ミクシィに入社。mixiリニューアル、Youtubeとの連携などを手がける。著書に「会社のWebサイトはこう作る―企画・発注から運営・管理まで(日本実業出版社)」がある。


mixi専任のプロデューサーとして入社

有野氏
 mixiの企画部でサービス全般を担当しています有野です。2006年、ミクシィが上場する3カ月前に入社しました。

小川氏
 有野さんはSNSとしてのmixiの純粋なプロデューサーとして採用されたとか。

有野氏
 そうです。細かい案件から大きな案件までいろいろやってます。わかりやすいところでいうと、mixiが初めてリニューアルしたときのプロデューサーです。

小川氏
 あのときはよくも悪くも反響が大きかったですね。

有野氏
 そうですねえ(苦笑)。それと、2007年にはYouTubeの動画を直接日記の投稿に張り付けられるようにしたり、最近はmixiのiPhoneアプリの初期の企画にも携わったりしています。

小川氏
 ミクシィ以前は?

有野氏
 ミクシィの前は、Yahoo!でショッピングモール系の企画をやってました。

小川氏
 なるほど。話が戻りますが、mixiをリニューアルした理由はなんですか?

有野氏
 まず機能が増えてきたこともあり、ホーム画面が煩雑になってきていたことがあります。それと作りもHTMLからXTML+CSSのモダン化を図りたかったという背景があります。

 それと、mixiには大きなPVとUU(ユニークユーザー)がありますので、ポータル的なコンテンツを加えることでそれらを伸ばすべきかどうかという論議もしていました。

 しかし、結局mixiの強みは、ユーザー間の、友人とのつながりやコミュニケーションそのものが大事だと考えるにいたりました。そこで、ポータル的ではなくコミュニケーションの場としてのサービスを大きくしていくための準備として、サイトをリニューアルしたわけです。


mixiはリアルの生活を反映するコミュニティ

小川氏
 なるほど。しかし、mixiは最近でこそモバゲーやGREEの追い上げにあっているとはいえ、PC上ではいまだに国内では敵無しです。そのことに逆に不安はないですか?

有野氏
 mixiは基本的にリアルの人間関係なんですよ。ソーシャルグラフは知っている人同士のつながりです。他社サービスさんはバーチャルなつながりやゲームが中心ですが、mixiは生活のコミュニケーションを乗せる場ですのでライバルとは考えていたないです。

小川氏
 分かりました。

 逆に、モバイル上ではちょっと苦戦しているというか、トラフィックの奪い合いではやはり競合になっていると思うのですが、いまmixiはPVはどんな感じでしょう。

有野氏
 2009年3月末時点で、モバイルが111億、PCが42億というところです。

小川氏
 海外SNSはいかがでしょうか。FacebookもMySpaceも日本に上陸して久しいですが。

有野氏
 作り的にはFacebookは基本リアルの人間関係をベースにしている点で近いですよね。MySpaceはミュージシャンに特化している感があります、意識することは少ないですね。

小川氏
 Twitterはどう思う?

有野氏
 面白いですよね。発信だけのコミュニケーションならばあれでいいだろうと思います。mixiにもエコーというTwitterライクな機能を載せています。

小川氏
 mixi Platformの反響は?

有野氏
 すごいですよ。僕は直接の担当ではないので、あまり細かいことはお答えできませんが…。

 ただ言えることは、1600万人を超える利用ユーザーを持つ巨大なコミュニティを運営していくうえで、ユーザーの多様なニーズにわれわれだけの力では応えられないことも多いわけで、

 だったら外の人に作ってもらえる仕組みを作ろうよ、という考えは前からありました。


生活に密着したインターネットのプラットフォームへ

小川氏
 笠原さんは以前、1000万人くらいが節目かもとおっしゃっていたように思います(笠原社長への2006年のインタビューはこちら)。それをはるかに超えた現在、やはり新しい方向を模索するということでしょうか。

有野氏
 最近は笠原は3000万人までもっていきたいといってます(笑)。招待制だけでなく登録制も導入する理由もそこにあって、地方とか、30代後半以上の年齢層など、mixiに興味があるのにまだ登録していないという潜在客がまだまだいるんです。ちなみに、リアルな友達とつながってほしいというポリシーは変えたくないので、一定期間マイミクがいないと警告したり場合によっては退会していただくこともあるかと思います。

小川氏
 なるほど。

 前に笠原さんにも伺ったことですけど、海外進出はどうですか?

有野氏
 海外は中国でサービスをはじめています。

 でもmixiをそのまま多言語にしようとは思っていないですね。文化の違いは考えないとならないですから。それにmixiのポリシーはリアルの生活をネットと結ぶことです。年賀状をマイミクに送る仕組みなどはその最たるものだと思うんですよ。

小川氏
 あれ、受け取り拒否もできるんでしたっけ?

有野氏
 ええ。例えば喪中のときのことを想定したりしましたので。

小川氏
 ああ、なるほどね。

有野氏
 ほかにも、ケータイのナンバーポータビリティのときにmixiユーザーは500万人くらいだったんですけど、あのときにもメアドを変えたときにmixiがあったから困らなかったという声もありました。これからも生活にひもづくサービスでありたいですね。

小川氏
 世界のSNSではデータポータビリティ(複数SNSでのコンテンツの乗り入れ)が流行ですけど、これはどうですか?

有野氏
 うーん…難しい問題なんですよね(笑)。

小川氏
 モディファイではSMART(個人向けのSMART4C法人向けのSMART4B)という、データポータビリティばりばりの(笑)サービスを作っているので、mixiの日記をエクスポートする機能をつけてくれたら本当にうれしいんですけどね。

有野氏
 検討はしている、でも結論はでにくいところですね(苦笑)。

小川氏
 分かりました(笑)。今日は本当にありがとうございました。





小川 浩(おがわ ひろし)
株式会社モディファイ CEO。東南アジアで商社マンとして活躍したのち、自らネットベンチャーを立ち上げる。2001年5月から日立製作所勤務。ビジネスコンシューマー向けコ ラボレーションウェア事業「BOXER」をプロデュース。2005年4月よりサイボウズ株式会社にてFeedアグリゲーションサービス 「feedpath」をプロデュースし、フィードパス株式会社のCOOに就任。2006年12月に退任し、サンブリッジのEIR(客員起業家制度)を利用 して、モディファイを設立。現在に至る。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス) などがある。

2009/4/28/ 09:00