マイクロソフトvsグーグル、使える企業向けメールサービスはどっち?【第二回】

Exchange Serverの機能をそのまま利用できる「Exchange Online」

 昨年春から国内で本格的に展開を始めたMicrosoft Online Services。3月18日には、Google Appsを積極的に扱っている富士ソフトも、Microsoft Online Servicesを含むクラウドサービスを取り扱うことを発表。パートナー企業は、この1年で200社を超えるほど、順調に成長している。

 今回は、マイクロソフトが提供するMicrosoft Online Servicesにフォーカスする。


Microsoft Online Servicesはこんなサービス

Microsoft Online Servicesの管理ポータル。ユーザーの追加や各種設定などが行える。サービスの提供状態なども確認できる

 Microsoft Online Servicesは、マイクロソフト自身が提供する企業向けのオンラインサービスの総称。Microsoft Online Servicesには、今回紹介するExchange Serverをベースにした「Exchange Online」や、SharePoint Serverをベースにした「SharePoint Online」などのサービスが用意されている。

 このうち、Exchange Onlineは、「Exchange Server 2007」をベースにしたメールやスケジュール管理が可能なオンラインサービス。オンプレミスで利用していたExchange Serverの機能を、そのままクラウド環境で利用できるのが最大の特長。メールボックスは1ユーザーあたり最大25GB。1GBだけ割り当てるユーザーを設定したり、最大容量の25GBを割り当てるユーザーを設定するといった柔軟な使い方にも対応している。

 このExchange Onlineは、Webブラウザからのアクセスに限定した「Exchange Online Deskless Worker」と、Outlook 2003/2007やモバイル端末からのアクセスに対応した「Exchange Online Standard」の2つが用意されている。価格は、Deskless Workerが1ユーザーあたり月額209円、Standardが1ユーザーあたり月額522円。


クライアントPCに専用ソフトをインストールすることで、OutlookなどからExchange OnlineにアクセスできるOutlook 2007からExchange Onlineを利用している様子。Exchange Serverを利用するのと変わりなく使えるExchange Onlineで提供されているOutlook Web Access。Webブラウザ上でもOutlookと同等の操作性を実現している

Exchange Serverの高い評価が最大の強み

 Microsoft Online ServicesおよびExchange Onlineが採用される背景などについて、マイクロソフト株式会社システムテクノロジー統括本部 インフォメーションワーカープラットホーム本部 オンラインサービスグループ シニアマネージャーの田住一茂氏、およびシステムテクノロジー統括本部 インキュベーションセールス部 ソリューションスペシャリストの今野拓哉氏に話を伺った。


―Exchange Onlineを導入した企業は、どのようなきっかけで採用するのでしょうか?

システムテクノロジー統括本部 インフォメーションワーカープラットホーム本部 オンラインサービスグループ シニアマネージャーの田住一茂氏

田住氏
 運用コスト削減をきっかけにしている企業がほとんどですね。実際、Exchange Onlineのもともとの価格設定は、オンプレミスのシステムから20%程度削減できることをイメージしていましたが、競合他社の価格設定なども意識して変更した結果、コスト削減効果はさらに高まっています。

今野氏
 40%くらい下がった事例もあります。また、Exchange Online Deskless Workerという機能を限定して低価格化したサービスや、スイート化したサービスなどメニューも豊富ですので、選択肢の幅が広いのが特長です。これらをうまく組み合わせることで、コスト削減する企業も多いですね。

田住氏
 Microsoft Online Servicesを利用するユーザーは、ワールドワイドで100万を超えていますが、そのほとんどでExchange Onlineが使われています。情報系システムを外出しする第一歩ととらえていますね。


―Exchange Onlineを選択する基準になっているのはなんでしょうか?

今野氏
 Exchange Server自体が日本でも世界でもナンバーワンの高い実績を挙げていますので、この実績のあるExchange Serverをオンライン化したという点を評価していただいています。

 実際、Exchange Serverを利用している企業が、Exchange Onlineを選択するというケースは多数あります。Outlookをすでに使っている企業は、Exchange Onlineでも同様に使えるので、選択していただいてますね。


―OutlookがExchange Online選択の決め手になっているということですか?

システムテクノロジー統括本部 インキュベーションセールス部 ソリューションスペシャリストの今野拓哉氏

今野氏
 そうですね、Outlookそのものが優れたメーラーであると評価していただいています。

田住氏
 大企業の場合、Webメールというトレンドはあるものの、ネットワークにつながっていないと使えないだとか、帯域などの課題があります。ですので、リッチクライアントであるOutlookをお勧めしていますね。

今野氏
 Exchange OnlineでもWebブラウザからのアクセスはできますが、外出時に利用するなど一時的なものという位置づけです。基本はOutlookからの利用を想定しています。

 他社のサービスを含めて、Webメールを実際に触って評価はされるのですが、やはりOutlookだね、と戻ってきているのが現実です。


―Exchange ServerとExchange Onlineでできることに違いはありますか?

田住氏
 組み合わせて使った場合にできないのは、予定表の空き時間検索の機能ですね。現時点では、それぞれのシステム内の予定しか検索対象にできません。メールのやりとりやアドレス帳の相互運用は問題なく利用できます。そういう意味では大きな機能差はありませんので、違和感なく使えるとおもいます。


―どれくらいの企業規模の会社が利用していますか?

田住氏
 数十ユーザーから数万のユーザーまで、利用する企業の規模は幅広いですね。

今野氏
 数万規模になれば、Dedicatedという専用のホスティング環境も用意していますので、プライベートクラウドとして利用していただけます。ユーザー規模に応じて、さまざまな提案が可能です。

田住氏
 日本のお客さまは、使わないものに投資をすることは、非常にネガティブですね。複数の選択肢を用意しているからといって、迷うことはあまりないですね。

今野氏
 日中ほとんど外に出るような業務であれば、Desklessでも十分です。他社の場合ですと、使えようが使えまいが同じ金額の同じサービスを利用することになりますが、Exchange Onlineはさまざまな選択肢がありますので、組み合わせて利用できます。


―導入企業の多くは、どれくらいの期間で移行されているのですか? 併用期間は長くとっているのでしょうか?

田住氏
 短期間で移行する企業がほとんどですね。切り替え作業そのものは1~2日あれば十分です。もちろん、事前準備が必要ですから、大規模な企業になるほど時間はかかります。それでも大企業で4カ月程度で移行していますね。中小企業であれば、1カ月程度で切り替えるところも多いですよ。


―モバイルからの利用はどのようになっていますか?

今野氏
 Windows phoneやBlackberry、iPhoneといったスマートフォンに対応しています。セキュリティ面では、スマートワイプというリモートからスマートフォンのデータを消去できる機能も用意しています。

 Exchange Serverとのシンク機能を実現するActiveSyncを各社に提供していますので、このActiveSyncに対応するデバイスであれば、Exchange Onlineも同じように使えます。

 国内キャリアの携帯電話は、マイクロソフトでは対応していませんが、パートナー企業が対応プログラムを提供しています。

Outlook 2010ベータ版からもExchange Onlineは利用可能。次期製品の評価とともにExchange Onlineを評価するのもいいだろう


―Officeの次期バージョンが、法人向けに5月には出てきますね。Exchange Onlineでも利用できるのですか?

今野氏
 Office 2010は、まだベータ版ですが、Exchange OnlineでOffice 2010の新機能も利用できます。実は、Exchange Onlineを評価するのにお勧めの環境といえます。もちろん、ベータ版なので正式サポートしていませんが、これからExchange Onlineの導入を検討されるのであれば、Office 2010と組み合わせて評価するといいとおもいます。


―Google Appsを積極的に扱っている富士ソフトが、マイクロソフトのクラウドも手がけるという発表は印象的でした。パートナーにとって、マイクロソフトのクラウドを扱うメリットはどのあたりにあるのでしょうか?

今野氏
 Exchange Serverなど、既存の知識を生かせるのは、パートナーにとって魅力的なことだとおもいます。導入も早いですし、トレーニングも不要ですから。


―Exchange Onlineを含むMicrosoft Online Servicesを推進する上で障害になっていることはありますか?

今野氏
 マイクロソフトがクラウドサービスを提供しているという事実が、まだまだ知られていないことが課題ですね。市場シェア1位の製品を持っている会社としては、不十分です。

田住氏
 大企業に関してはハイタッチ営業で認知度は高めていますが、中堅・中小規模の企業に対しては、不十分だと感じています。

 われわれとしては、中小が伸びるとみていたんですが、Exchange Serverを利用している大企業のほうが引き合いが強かったですね。

30日間フル機能が利用できるトライアルを用意。取りあえず操作性を試したいだけであれば、体験サイトを利用してもOK


―トライアルでは、どのあたりを評価していただきたいですか?

今野氏
 例えば、Outlook以外のメーラーを使っている方は、Outlookを中心に評価していただくといいとおもいます。Outlookは非常によくできたメーラーですので、活用できるプラットフォームとしてExchange Onlineを評価していただけるといいのではないでしょうか。

 また、Exchange Serverをすでに利用されている方であれば、どの程度管理負荷が減るのかを評価するといいのではないでしょうか。たくさんある設定項目の多くを、クラウド側にまかせられます。エンドユーザーに提供する機能はほとんど変わりませんから、管理負荷は大きく削減できます。このあたりは、トライアルでぜひ体験していただきたいですね。





 次回は、Microsoft Online ServicesとGoogle Appsを機能別に比較してみる。





(福浦 一広)

2010/4/9/ 09:00