日本HP、仮想化機能を強化したHP-UXの最新版

クラスタ機能も大幅に強化

エンタープライズストレージ・サーバ事業統括 BCSビジネス本部 本部長の上原宏氏
仮想化関連では、オンラインマイグレーション機能などを新たに搭載した
仮想環境上でのサービス継続性も向上している

 日本ヒューレット・パッカード株式会社(日本HP)は4月21日、UNIX OSの新版「HP-UX 11i v3 update4」を発表した。また同時に、仮想化ソフトの新版「HP Integrity VM 4.1」とその追加ライセンス「HP Integrity VMオンラインマイグレーション」、クラスタソフトの新版「HP Serviceguard 11.19」も発表し、UNIXベースの仮想化ソリューションを大幅に強化している。

 HP-UX 11i v3 update4は、2007年4月に発表されたHP-UX 11i v3の最新アップデート。単体でも、HP-UX 11i v2と比べて処理能力が約3割強化されているほか、関連するミドルウェアとの連携により、サーバー仮想化への対応が大幅に強化されている点が特徴という。

 サーバー仮想化という分野においては、x86サーバーの普及が著しいこともあり、VMware、XenServer、Hyper-Vなどに代表されるx86サーバーの仮想化が注目を集めることが多い。しかし、エンタープライズストレージ・サーバ事業統括 BCSビジネス本部 本部長の上原宏氏は、「歴史的には、物理的なパーティショニングを行うUNIXの仮想化が最初に現れたもので、x86ベースの仮想化が進化したのはその後」という点を指摘。「UNIXが本来持つ信頼性を備えたままでソフトベースの仮想化を実現するという、今までなかなかできていなかったことを具現化した」と、自社の新ソリューションをアピールする。

 Integrity VMとHP-UXを組み合わせた「Virtual Server OE(オペレーティング環境)」では、ホストOSに、25年の高い実績をもつHP-UXを利用することで、可用性や信頼性を担保。新版では、さらに高信頼化を実現したほか、仮想化I/O性能の向上、ゲストOSのスケーラビリティ強化などが行われている。さらに、Integrity VMオンラインマイグレーションによって、ほぼサービスを止めない状態でのゲストOSマイグレーションが可能になり、ハードウェア移行、サーバー増設などの際に、有効に活用できるという。

 またServiceguardの新版においては、仮想マシン上で動作するアプリケーションの死活監視に対応。従来は、サーバー本体、もしくは仮想マシンのダウン時にしか検知とフェイルオーバーができなかったため、この機能強化で、サービスダウン時の復旧がより迅速に行えるようになっている。加えて、フェイルオーバー時間が約8分の1に短縮され、サービス停止時間の大幅な短縮が可能になった。

 この高速フェイルオーバーは標準で利用でき、しかも1対1だけでなく、1対nの場合でも利用できるとのこと。エンタープライズストレージ・サーバ事業統括 BCSビジネス本部 プロダクトマーケティング部 部長の栄谷政己氏は、これらの特徴を総括し、「UNIXではフェイルオーバー時間をいかに秒単位で速くするかを要望されるが、約8倍の高速化でこの要求を満たせた。また、アクティブな複数サーバーに対して1台だけ予備のノードを置けば、コスト削減も同時に実現可能だ。すでに仮想環境は検証などの目的では相当に利用されているが、これらの機能によって、本番環境の導入を促進したい」と述べている。

ユーザーの敷居を下げるため、定額サービスを拡充した

 日本HPではさらに、HP-UXの初期導入、クラスタ実装、仮想環境設定といったスタートアップ作業を同社が行う定額サービス「HP Care Pack」においても、メニューを拡充。加えて、Virtual Server OEと、これにServiceguardを加えたDataCenter OEについて、1ライセンス分の価格で2つのOEを提供するキャンペーンも実施する。栄谷氏は、サービス強化この狙いについて「UNIXのサービスは細かく作り込むものが多かったが、定額で提供することで、敷居が高く感じていたユーザーも安心して導入できる」と説明。またアグレッシブなキャンペーンを提供することで、他社UNIXユーザーの取り込みをいっそう図りたいとしている。

 1コアあたりのライセンス価格は、Virtual Server OEが102万3750円から、Serviceguard 11.19が40万8450円から、Integrity VMオンラインマイグレーションが12万6000円から。またHP Care Packは、「HP-UXスタートアップサービス」がサーバー1台あたり42万円から、「Serviceguardインプリメンテーションサービス」がサーバー1台あたり105万円から、「Integrity Virtual Machineスタートアップサービス」がサーバー1台あたり94万5000円から。

 「信頼性を維持したままでサーバー仮想化を導入するのは、HP-UX以外のOSでは難しいと考えている。HP-UXには将来性に対しては非常に強いコミットメントがあり、オープンシステムならではのコストの透明性や、サポートの充実などで、圧倒的な安心感を持っていただける。コスト削減には、システム全体を考慮した対策が必要であり、HP-UXの環境ではそれが実現できる」(上原氏)。




(石井 一志)

2009/4/21 18:05