「2年後にはハイパーバイザーの話題はなくなる」-米Red HatコーミアEVP


米Red Hat、Executive Vice President and President, Products and Technologiesのポール・コーミア氏
同社の製品ポートフォリオ

 レッドハット株式会社は6月23日、米Red Hat、Executive Vice President and President, Products and Technologiesのポール・コーミア氏の来日に伴う記者説明会を開催。同社の仮想化戦略やクラウド戦略などが語られた。

 コーミア氏は、まず同社製品の市場でのポジショニングについて、「x86サーバーのOS分野では、事実上MicrosoftとRed Hatの2社が独占している」と説明。ミドルウェア分野についても、「JBossが30%以上利用されており、IBMやOracle(BEA)とともにリーダーとなっている」と、強みを発揮しているとした。また仮想化分野に関しては、「VMwareが先行している市場ではあるが、サーバーの8%が仮想化されているだけであり、これから伸びる市場。Microsoftも語っているが、仮想化はOSの一部分になるとRed Hatでは認識しているので、OSと仮想化の両方を持つRed Hatは、VMware、Microsoftとともに三大プレーヤーになるだろう」と、OSと統合された仮想化技術を持つ強みが今後生きてくると述べた。

 OSと仮想化を持つ強みを生かし、同社が現在進めているのがクラウド分野。「50社以上のプロバイダーとクラウドサービスの提供で協業を進めている。重要なのは、オープンソースであるということ。クラウドサービスを展開する場合、いかに手ごろな価格でセットアップできるか、そしてブラックボックス化されていないか、といった点が重要になる。われわれはクラウドのインフラストラクチャを提供することで、エコシステムを構築していく」と説明。「現在、各プロバイダーと提供形態などを調整しており、最終的には分単位の課金体系などにする予定。あくまでもプロバイダーのビジネスモデルをサポートすることを前提とした価格体系としていきたい」と、クラウドサービスを提供するプロバイダーを支援するのがRed Hatの役割であるという点を強調した。

 クラウド分野での競合については、「われわれはインフラ部分を提供しており、仮想化が技術の基盤となっている。そういう点では、MicrosoftやVMware、Citrixなどが競合となるだろう。しかし、仮想化・OS・ミドルウェア・管理ツールを持つのはRed HatとMicrosoftのみ。そして、クラウドプロバイダーの多くは、規模や複雑さなどを考慮してオープンソースを利用している」と述べ、オープンソースプロダクトでOSからミドルウェア・管理ツールを提供する同社の強みを強調した。

 仮想化では、Red Hat Enterprise Linuxの次期バージョン「Red Hat Enterprise Linux 5.4」から搭載される「KVM」についても紹介。「KVMの最大の強みは、Linuxと同じプロセスで開発されるという点。Xenの場合、Linuxの開発とは別レイヤーで開発していたため、実装などで二度手間が生じていた。これに対して、KVMはLinuxカーネルに組み込まれており、同じプロセスで開発されるので、そうした手間が起きない」と、OSと密になって開発される点を強調。「また、KVMはより多くの統合を実現できるなど、アーキテクチャ的にも優れていると信じている。そのほか、Linuxカーネルと統合化されることで、各アプリケーションの認証作業も少なくできるのが利点。これはISVにとっても利用者にとってもメリットになる」と述べた。

 「現在さまざまなハイパーバイザーが存在するが、2年後にはハイパーバイザーの話をする必要はなくなっているだろう。つまり、ハイパーバイザーはOSの一部となっているので、話す必要がなくなるということだ。VMwareも新しいOSを作ろうとしているが、それはプロプライエタリなものになるだろう。KVMはLinuxコミュニティの一部であり、オープンソースの強みを発揮できる」と、オープンソースである強み、OSと一体化した強みを強調した。





(福浦 一広)

2009/6/23 15:07