日本IBM、3TBのメモリを搭載できる次世代x86サーバー技術「eX5」
eX5の新技術 |
システム製品事業 システムx事業部長の小林泰子氏 |
ワークロードに応じて、最適な構成を実現するeX5 |
日本アイ・ビー・エム株式会社は3月3日、業界最大となる3TBのメモリを搭載できる次世代x86サーバーのアーキテクチャー「第五世代 Enterprise X-Architecture(以下、eX5)」を発表した。
eX5は、インテルCPUとの融合により、パフォーマンスや可用性、拡張性、運用効率を飛躍的に向上させるIBM独自開発のハイエンドサーバー向けアーキテクチャー「Enterprise X-Architecture(EXA)」の第五世代となるもの。x86サーバーにおいて、大容量メモリへの高速アクセスを制御する集積回路(チップ)と、異なる筐体に搭載されたCPU-チップ間を外部ケーブルで高速接続する伝送技術により、従来の6倍のメモリ搭載を実現した。
eX5を投入する市場背景について、システム製品事業 システムx事業部長の小林泰子氏は、「現在、企業のシステムのほとんどがx86サーバーで占められているが、実は、分散コンピューティング環境ではその処理能力の85%が利用されずに放置されているのが現状。さらに、サーバー台数の増加にともない、電力/冷却コストは12年前の8倍となり、管理コストはIT予算全体の70%を占めるまでに膨らんできている。すでに、x86を支えてきた従来のPCアーキテクチャーは限界に達している」と指摘。その理由として、「プロセッサとメモリの進化に大きなギャップが生まれている。この10年でプロセッサの処理能力は急速に向上したが、メモリ容量はその進化に追いついていない。そのため、いくらプロセッサが速くても、メモリが一杯になってしまうと処理が進まず、サーバーの使用率は上がってこない」という。
そして、「今後のワークロードの急増やデータ量の爆発的増加に対応していくためには、サーバーの数を増やすのではなく、サーバー自身が運用コストを下げる能力を備えることが必要となる。そこで、今回のeX5の開発にあたっては、プロセッサの性能向上を追求してきた今までの方向性を見直し、メモリのボトルネック解消を実現する技術開発に力を注いだ」(小林氏)と、開発の経緯を説明した。
従来の6倍のメモリ搭載を可能にするeX5を支える新技術は、「MAX5」「FlexNode」「eXFlash」の3つ。MAX5は、サーバー本体とほぼ同じ基盤面積を持つ拡張メモリユニット。最大512GBを搭載できる32個のメモリスロットと、その大容量メモリを高速に制御する「eX5チップ」を搭載している。MAX5上のチップセットとサーバー本体のCPUを外部ケーブルで接続しながら、最大42.4GB/秒の速度を実現することで、MAX5上の大容量メモリをサーバー本体で活用できるようになった。
System x事業部 テクニカル・セールス システムズ&テクノロジー エバンジェリストの早川哲郎氏 |
System x事業部 テクニカル・セールス システムズ&テクノロジー エバンジェリストの早川哲郎氏は、「MAX5によって、CPU性能とメモリ搭載量のギャップを改善することができる。メモリ搭載量を従来の6倍に向上させることで、CPUの性能を最大限まで引き出すことが可能になるとともに、仮想化による統合率を高め、多種多様な業務を効率よく処理できるクラウド環境を実現できる」としている。
FlexNodeは、2台のサーバーを接続し、ハードウェア資源を柔軟に分配できる機能。ハードウェア資源の使用率の変動に応じて、接続した2台のサーバーを1システムに設定して資源を集中させたり、2台の独立したサーバーとして資源を分割させたり、柔軟に構成を変更することができる。eXFlashは、HDDの代わりに、8個のSSDをパッケージ化したもの。HDDの800倍に相当する、1秒間あたり24万回の入出力処理数を実現する。サーバー1台あたり最大3個搭載でき、搭載可能な最大容量は1.6TBとなっている。
IBM System x3850 X5 |
同社では、今回のeX5投入を機に、従来のEXAポートフォリオを拡大する方針で、ラックマウント型サーバー「IBM System x3690 X5」および「IBM System x3850 X5」と、ブレードサーバー「IBM BladeCenter HX5」の3製品にeX5を展開し、順次販売していく予定。
また、eX5の発表にともないシステムx事業部では、「ビジネスパートナーとともに、クラウドコンピューティング市場でのサーバーシェア拡大を目指す」との戦略を掲げており、具体的な施策として、「System x仮想化検証センター」で「eX5」の検証を開始するほか、クラウドコンピューティング環境提案のためのパートナー向け技術相談会を実施していく。さらに、プライベートクラウド(laaS)基盤の販売も推進していく方針で、「eX5によってクラウドコンピューティング基盤の新標準を確立し、顧客のx86サーバー利用エリアにおける新たな価値を創造する」(小林氏)としている。
System x3850 X5-最大級の拡張性・パフォーマンス | System x3690 X5-ミッドレンジプレミアムサーバー | BladeCenter HX5-世界初のIntel x86スケーラブルブレード |
2010/3/3 16:50