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ヘアスタイルを切り口に女性サイトを展開する

サンドリヨン・荒木プロデューサー

 今回のゲストは、女性向けWebサイト「サンドリヨン」の運営会社である株式会社Style1の荒木まいさんです。荒木さんとは、実はサイボウズで共に仕事をしたことのある仲でもあります。

 Web 2.0的なサービスの利用者の女性比率は既に50%近くといわれており、インターネット利用における男女差はほとんどないといえる昨今、女性サイトの運営はどのような可能性と苦労があるのか、伺ってみました。


サンドリヨン・荒木プロデューサー 荒木まい
株式会社Style1 サンドリヨン・プロデューサー

2003年3月 University of Oregon 卒業 Concentration in Business Economics
2003年4月 サイボウズ株式会社入社 企画営業部所属
2006年2月 株式会社Style1入社 クロスメディア事業部所属
2006年3月 サンドリヨンプロジェクト開始 プロデューサーに就任
公式ブログ: サンドリヨンプロデューサー ビジネスセレブ日記


女性をきれいにするコンテンツを提供

荒木氏
 ごぶさたしています。


小川氏
 こちらこそ。恵比寿への通勤途中にサンドリヤン、だったかな、とにかくそういう名前の喫茶店の前をよく通るので、たまに思い出してました(笑)。


荒木氏
 パン屋さんにも同じ名前があるんですよ(笑)。

 サンドリヨンというのは、シンデレラという意味なんですけど、全国の女性がきれいになるようにという想いを込めて名づけました。


小川氏
 そろそろオープンして一年になるんじゃない?


荒木氏
 プレオープンが去年の7月、グランドオープンが9月ですね。ほんとだ、一周年ですね(笑)。


小川氏
 おいおい(笑)。サービスの内容を教えてもらえますか?


荒木氏
 主にコンテンツとしてもっているのはヘアカタログです。それを中心に女性がきれいになるためのコンテンツをいろいろと集めています。情報を発信するだけではなくて、リアルに、ヘアスタイリストさんとのコミュニケーションをとれるようにしているのが工夫しているところですね。


小川氏
 ビジネスモデルは? 収益源という意味ですけど。


荒木氏
 中心になる収益源をどうするかは、まだ模索中ではあるんですけど、たとえば広告も考えています。いまフリーペーパーを美容師さんと一緒に作っているんですね。アパレルさんとのタイアップで、アパレルさんのターゲットに合うようなコンテンツをWebだけではなくて、紙でも作っているんです。

 それから、美容室を対象にホームページの代わりになる情報ページを提供しています。美容室のホームページそのものの制作も請け負ったりもしています。でも、将来的にはEコマースのチャンスをもう少し考えていきたいですね。


女性ファッション誌のニュアンスをサイトのジャンルに

小川氏
 ターゲット層は?


荒木氏
 いわゆるF1層ですね。いまのところ30代くらいまでの女性を中心にしているんですけど、今後は40代にまで広げたいと思っています。髪型でジャンル分けすると、たとえば長さなら「ショート」「ミディアム」「セミロング」「ロング」、の4つになりますけど、サンドリヨンでは、「JUICY」「VICTORIA」「FRESH」「CLASS」、の4つに分けてコンテンツを提供しています。


小川氏
 それぞれの意味は?


荒木氏
 JUICYのコンセプトは「キラキラ女の子」、VICTORIAは「個性派モード」。FRESHは「ナチュラルキュート」で、CLASSはそのままで「コンサバ&エレガント」です。


小川氏
 キラキラ女の子??(笑)


荒木氏
 雑誌のニュアンスから来てるんですよ。キラキラ女の子というのは赤文字系といわれる雑誌で、「CanCam」とか「JJ」のイメージです。


小川氏
 なるほど。他の3つは?


荒木氏
 個性派モードは「GLAMOROUS」「GLITTER」系。男女に好印象なナチュラルキュートは「with」とか「MORE」かな。コンサバ&エレガントは「Oggi」「CLASSY」のイメージですね。この中で年齢層をあげて、それぞれの層に対して増やしていくのが目標です。


小川氏
 「NIKITA」とか(笑)


荒木氏
 そうですね(笑)


髪型を変えたら服装も変えたくなるのが女性

小川氏
 同業他社はどうですか?

 僕が日本で本格的にネット事業に入り始めた頃は、女性サイトってすごく多かったですけど、最近はあまり新しいところはないように思うんだけど。


荒木氏
 Woman exciteHot Pepper Beautyなどとよく比べられますね。特にHot Pepper Beautyはヘアサロン情報をコンテンツにしてるので分野は似ています。

 ただ、ヘアカタログを提供するというよりは美容室の検索サイトとしてのサービスなので、競合であるとは思っていないんですけど。


小川氏
 意識はしてない?


荒木氏
 ヘアスタイリストさんからは、サンドリヨンを意識してるらしいよ、なんて言っていただくことはありますけど(笑)。Hot Pepper Beautyがあそこまで力を入れてくるとは思ってなかったので、ちょっと驚いてはいます。

 サンドリヨンはヘアスタイルに特化しているんですけど、ネットだけではなくて、リアルなところに落とし込むことが強みだと思っています。女性は月に一回くらいは美容院にいくので、そこでサンドリヨン経由で情報を得たスタイリストさんとコミュニケーションがとれるようにしていたりします。フリーペーパーのコンテンツをWebでも公開したり、ターゲット層をかなり絞っているんです。


小川氏
 美容室ってどのくらいあるの?


荒木氏
 全国で20万店舗くらい。6000~7000店くらい毎年オープンして、同じくらいクローズしている、大きくも小さくもなっていないという業界です。2万人の美容師が誕生していますが、全体としては同じ大きさです。


小川氏
 女性サイト、という言い方をするといまは多分@cosmeがトップだと思うんですけど、その運営会社であるアイスタイルの吉松さん(社長)が、化粧品に特化するのは市場として大きいから、そこに使われている広告費が凄まじく巨大だから、といういい方をされてました。その意味でヘアスタイルやヘアサロン、という市場は小さいですよね。


荒木氏
 それは意識しています。髪を切ったら、新しいヘアスタイルを選んだら、それに似合う服装もありますよね。ワンピースでもデニムでも、靴やアクセサリーも変えたくなるのが女性です。だから、髪型を切り口に、女性がきれいになるためのいろいろな情報や商品を提供することを考えています。だからEコマースもやりたいんです。ケータイ版もオープンしたし、徐々に拡げていきたいですね。


様子見ながらEC化を狙う

小川氏
 サイトはWeb 2.0的、ではないですよね(笑)。


荒木氏
 インタラクティブではないですね(苦笑)。ただ、工夫はしていますよ。

 10月にサンドリヨンの情報を使ったムック本が発売されるんです。「愛される私の最旬ヘアー サンドリヨン美髪カタログ」というんですけど、ネット連動のコンテンツをいろいろ入れています。ムック本の中のシークレットナンバーをWebで記入するとカリスマ美容師さんみたいな人から回答をもらえるみたいな。それに合わせて10月にコミュニティのベータ版をオープンする予定です。掲示板的なものですけどね。

 それから、11月には美容メーカーさんとフォトコンテストをします。美容師さんが作ったヘアススタイルの写真を選考して、受かった人をサンドリヨンのサイトやカタログで公開するというものです。


小川氏
 ちょっと前にカリスマ美容師、なんて言葉がはやりましたよね。ああいう人たちってどのくらいの人数がいるの?


荒木氏
 カリスマ美容師と呼ばれているかどうかは別にして、それに近い人は十数人じゃないかな。世界で講習できるようなレベル。たとえばPHASEの横手さんは巨匠中の巨匠です(笑)。30代くらいで雑誌によく出るような人たちだと100人くらいですね。技術レベルは高くても雑誌等には登場しないような人たちは、もちろん大勢いらっしゃるわけですけど。


小川氏
 そういう美容師さんの情報はどう集めてくるの? 最初からコミュニティがあったわけではないですよね?


荒木氏
 いまサンドリヨンでお世話になっている美容師さんは100~130名くらい。最初はスタッフみんなで情報を集めに回りました。それが奏して、徐々に口コミにのってきていて、少しずつ情報が集まるようになりました。


小川氏
 今後の目標などを、まとめてもらえますか?


荒木氏
 Webならではの機能がまだ少ないことは自覚しているので、いろいろと考えていきたいですね。他の女性サイトのように、特定の有名モデルをたてるのではなく、サイトのポリシーとしてユーザーさん自身が主役になれる作り方をしていきたいと思っています。個々に対する情報を提供することを考えていきたいんですね。

 サンドリヨンの特長としては、掲載している写真の美しさがひとつあると思うんです。結果として、雑誌などの女性メディアからいろいろな話をいただくようにもなってきています。よいところはそのまま継続していきたいです。

 EC化は進めたいのだけど、他の企業の動向もあるので今のところ様子見です。ただ、for Professional というコーナーでMaker's Newsというページを展開しています。これは美容メーカーさんの新製品を順次紹介しているだけなんですけど、なにげに他のサイトでは見られないサービスなんです。タイアップもしていないので、広告にもならないんですけど、評判がいいので、Eコマースを始めるうえでのなにかのヒントになるのかな、と思っています。


小川氏
 分かりました。

 いまは違う道にいるわけですけど、これからもお互いに頑張りましょう。今日はありがとうございました。




小川 浩(おがわ ひろし)
株式会社サンブリッジ i-クリエイティブディレクター。 東南アジアで商社マンとして活躍したのち、自らネットベンチャーを立ち上げる。2001年5月から日立製作所勤務。ビジネスコンシューマー向けコラボレーションウェア事業「BOXER」をプロデュース。 2005年4月よりサイボウズ株式会社にてFeedアグリゲーションサービス「feedpath」をプロデュースし、フィードパス株式会社のCOOに就任。2006年12月に退任し、現在サンブリッジにて起業準備中。 著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)などがある。

2007/10/02 00:00

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