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動画のタグ検索サービスの成長を推進するビジネスプロデューサー

TAGGY石上社長

 今回のゲストはngiグループから生まれた動画のタグ検索サービス「TAGGY」の石上社長です。石上さんは建築畑からネット企業へと転身したユニークな経営者であり、商社出身の筆者とやや似た経歴の持ち主です。タグ検索というカテゴリのその先をにらみながら新たな事業の拡大を目指す石上さんとTAGGYの、壮大な狙いとは? ぜひお読みください。


TAGGY石上社長 石上 裕
株式会社TAGGY 代表取締役社長

日本大学卒、元建築プロデューサー。国内外におけるホテル開発や商業施設開発など、豊富なプロジェクトマネジメント経験を持つ。2000年からは株式会社ネットエイジにて複数のネットビジネスをプロデュースし、株式会社ライフバランスマネジメント取締役副社長、株式会社タイルファイル取締役を歴任。2006年9月、株式会社TAGGYを創業し、現在、同社代表取締役社長。


プロジェクトの始まりと終わりを扱うためにネットベンチャーへ

小川氏
 ごぶさたしています。


石上氏
 1年ぶりくらいですよね。


小川氏
 石上さんはネットエイジの前は何をなさっていたんでしょう?


石上氏
 小川さんはクアラルンプールにいらしたとお聞きしましたが、私はバンコクにおりました。


小川氏
 ほう。


石上氏
 もともとは隈研吾さんのアトリエ系設計事務所でアーキテクトとして働いていました。バリやプーケットなどのリゾート開発などの建築のマスタープランを作っていたんです。でも、アトリエの設計というとプロジェクトの後ろの後ろなわけで、プロジェクトの始めから終わりまでをやるということを試してみたくなるわけです。やっぱり仕事はゼロからみるほうが面白いですから。というわけで徐々に前の方にシフトしてきた。そんな感じの20代でしたね。

 そうこうしていると、ビットバレーが立ち上がってきて、ネットビジネスが面白くなってきました。そこで、2000年に自分を外部プロデューサーとして雇いませんか、とネットエイジの西川さんにメールをしたんです。


小川氏
 なるほど。


石上氏
 フィードパスの後藤さんと同じ入社日なんですよ(笑)。


小川氏
 そうだったんですか。それでTAGGYを興すまでの経緯は?


石上氏
 実はいったんネットエイジを離れまして、しばらくTSUTAYAのCCCにいたんです。


小川氏
 へえ。


石上氏
 その後、西川さんからオーストラリアのネット企業タイルファイルのサービスを日本で立ち上げようという話になっているから戻ってこないか?といわれたんですよ。


小川氏
 それでネットエイジに戻ったと。


石上氏
 ええ。タイルファイルは動画コンテンツの共有サービスです。ただ、ネットユーザーで情報をアップする人は少なくて、YouTubeでも動画をアップロードする人は全ユーザーの1%未満といいます。だからこれは難しいと思ったんです。そこで思いついたのがTAGGYというわけです。


ノイズが少ないピンポイントなタグ検索から、Web全体のデータリコメンデーションサービスへ

小川氏
 modiphi.comはRSSフィードで情報発信するためのツールなんですが、企業ユーザーのような強いモチベーションがない限り、なかなか自ら新しいコンテンツを配信しようとはしてくれないですね。ブログはその点、うまく成長することができましたよね…。TAGGYはすぐに創業につなげることができましたか?


石上氏
 ほんとは自分の手金で立ち上げたかったんですけど、ネットエイジ、今のngiに出資してもらって、2006年9月に立ち上げました。そして12月にベータ版を公開しました。


小川氏
 TAGGYのサービスを一言でいうと?


石上氏
 いまはまだ便利な検索エンジンにすぎないですね。ただタグを切り口にしているというところが特別で、だからノイズが少なくて、ピンポイントで欲しいものが手に入る検索エンジンです。将来的にはリコメンデーションで、検索しないで検索できるサービスにしたいですが。あなたが興味があるワードを記憶しましょう、でも、それすらも将来はいらないようにしたい、と考えています。


小川氏
 タグ検索から、リコメンデーションエンジンへと、というわけですね。


石上氏
 人の興味やし好性を把握したサービス、パーソナライズドポータルにしたいですね。タグを持たないサイトは形態素解析でオートタギングしていきます。


小川氏
 収益モデルは?


石上氏
 ビジネスモデル=広告、に見えがちですけど、TAGGY DBから情報をマイニングして提供することで収益化したいです。クロール技術、検索技術、リコメンデーション技術などを切り出していけば売れると思うんです。ユーザーのトランザクションからECにつなげていけると思うし。いまでも訪問者のし好性に合わせて、TAGGY内の情報をリコメンドできるんですけど、将来はネット全体から、そこにタグがあろうがなかろうが、商品を紹介するようにしたいと思っています。だから将来始めるという意味もいれて、事業としては、

  • インターネット広告事業
  • データマイニング事業
  • ソリューション事業

の3つです。


創業一年は完全に開発フェーズで低コスト経営

小川氏
 技術開発がキモですね。開発者は十分ですか?


石上氏
 いまは経営者を入れて、社員は7名です。そのうち3名がエンジニア。外注はしていないです。基本のエンジンとしては今はデータセクションを使っています。それをベースに共同開発しているといったほうがいいです。


小川氏
 創業時の資本金は?


石上氏
 3800万円です。最近ようやく増資しましたが、それまでまったく売上がなかったので大変でした(笑)。


小川氏
 すごいですね。


石上氏
 よくそういわれます、ほんとに低コスト経営でしたから。


小川氏
 増資はいつされたんですか?


石上氏
 今年の10月と11月から2回に分けて、合計3社、2億1000万円調達しました。

 スモールで低コスト体質は、事業の初動はいいけど、スケールしないと思いますね。ようやく資金を集めたので、いまからシフトチェンジしていこうと思っています。


小川氏
 ある程度お金を使わないと開発も進まないし、結局こじんまりとしたビジネスになりがちですよね。

 データマイニングを事業にするためには相応のデータ量を持っていく必要があると思いますが、今のステイタスを教えてください。


石上氏
 動画データは、ざっと2300万本/35サイト。ソーシャルニュースからの情報は、130万記事/10サイト。画像データは、900万枚/10サイトです。ブログコンテンツは、520万エントリ、というところです。

 機能としては、タグサーチ、パーソナライズ機能、マルチポスト、リコメンド機能。CGMの流通拠点として、TAGGYが提供する機能です。

 年末にはログインしなくても、クッキーでTAGGYで何かしてもらったことを記憶して、情報をリコメンドするようにしようと思っています。自分の軸で、タグを集める、人を軸に他人の集めているタグを見せるという情報軸を確立しようと。


小川氏
 情報軸とは?


石上氏
 この情報とこの情報は似ている、という軸です。

 いろいろなサイトにいって何かをさせるよりもTAGGYにくればすべてができるよ、というようにしたいですね。ネット上のさまざまな商材をワンストップでお勧めするEC、モバイルメディア事業、モバイルコマースなどにつなげたいと思っています。キーワードサーチからタグサーチ、単一メディア型からマルチメディア型へシフトするというのが基本的な考えです。


事業を考えるのはカンタン、継続していくことは難しい

小川氏
 ライバル企業と考えるのは?


石上氏
 そうですね、欧米だとTagJag、KeoTag、TagClick、Riya、MocoVideoあたりかな。Hatenaはちょっとちがいますけど意識はします。11月に1200万PV超えたところで、まだまだですが。

 …話はちがいますけど、小川さんのMODIPHIも法人化するんですよね。


小川氏
 ええ。2008年1月に株式会社モディファイとして設立します。


石上氏
 そうですか。会社化ですか、いや安心しました(笑)。


小川氏
 ありがとうございます。


石上氏
 いやホントに。実際ビジネスプロデューサーとして仕事をしてきて思うのは、何か新しいことを考えて、それをサービス化すること自体はそれほど難しいことではないと思うんですよね。でも、それを事業化することや、継続するのは難しい。事業の成功と財布が直結してないと無理だと思うんです。


小川氏
 同感です。


石上氏
 ベンチャーでは売りと開発フェイズは別で、それを理解してくれる人が必要だと思います。私の場合は西川さんがそれです。

 TAGYYを創るとき、まずはサービス開発に向かってまい進する、だから今年は売上は期待しないでくれとお願いした上で同意してもらいました。というよりも、西川さんはネットビジネスやそれを成長させる上で大切なことをよく分かってくれている。だから西川さんに話したんです。


小川氏
 分かります。


石上氏
 だから小川さんもご自分のプロジェクトを事業化し、会社の形にすると聞いて、ほんとに安心しました。これから共に成長したいですね。


小川氏
 1年ほど遅れましたが、ついていきますよ(笑)。今日は、長い時間ありがとうございました。




小川 浩(おがわ ひろし)
株式会社サンブリッジ i-クリエイティブディレクター。 東南アジアで商社マンとして活躍したのち、自らネットベンチャーを立ち上げる。2001年5月から日立製作所勤務。ビジネスコンシューマー向けコラボレーションウェア事業「BOXER」をプロデュース。 2005年4月よりサイボウズ株式会社にてFeedアグリゲーションサービス「feedpath」をプロデュースし、フィードパス株式会社のCOOに就任。2006年12月に退任し、現在サンブリッジにて起業準備中。 著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)などがある。

2007/12/26 00:00

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