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富士通からスピンオフしたエンタープライズサーチ国内トップ企業
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アクセラテクノロジ進藤社長
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今回のゲストは、スピンオフ型の独立ベンチャーとしては先輩格(笑)であり、検索技術開発の専門企業 アクセラテクノロジ株式会社の進藤社長です。同社は、主に企業向けの検索エンジンを提供しています。実は同じ恵比寿ビジネスタワーの同じフロアに本社があることもあり、もろもろモディファイとの共通点があるアクセラですが、ノルウェーの検索技術開発企業FASTがマイクロソフトに巨額の金額で買収されるなど、とてもホットな市場にあって、どのような戦略をもっているのでしょうか。
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進藤 達也
アクセラテクノロジ株式会社 代表取締役社長
1983年 早稲田大学理工学部卒業後、富士通株式会社入社。富士通研究所において並列処理コンピュータの研究に従事。
1990~1992年、米国スタンフォード大学客員研究員。帰国後、富士通においてスーパーコンピュータ事業部門の設立に参加。
1998年、早稲田大学より博士学位(情報科学)取得。富士通のソフトウェア部門で、開発担当部長として検索エンジンを企業用途向けに製品化。
2001年、富士通のベンチャー起業制度を活用してアクセラテクノロジ株式会社を設立、代表取締役社長に就任。
【アクセラテクノロジ株式会社 概要】
2001年富士通のベンチャー起業制度により検索技術開発の専門企業としてスピンオフ型独立。富士通と起業家に加え、サンブリッジや住友商事等が出資。独自開発の法人向け検索エンジン「Accela BizSearch」などを販売。現在、日経BP社にて同社雑誌バックナンバーのサービスBizboardのコンテンツ検索や化粧品情報サイト@cosmeのクチコミ検索など、大手Webサイトの検索機能を支えている。また企業のナレッジマネージメント分野では、NTTデータや富士通など大企業の全社横断的な情報共有を目的とした導入が進んでいる。同製品は2007年9月時点で1130サーバーの販売実績を持つ。
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■ 富士通からのスピンオフベンチャー
小川氏
もとは富士通からの独立なのですね。
進藤氏
そうです。もともと富士通のベンチャー制度で作った会社です。2001年に富士通からスピンオフしました。現在も富士通が筆頭株主で、私は2番(笑)。
小川氏
どのくらい富士通にいらしたのですか?
進藤氏
19年いました。研究所に半分、そのあとはスーパーコンピュータ開発などをしていました。検索技術を使ったアプリなどをスパコンの上で作ったりしていました。
1990年代終わりにスパコンから富士通は撤退したんですけど、インターネットではアルタビスタ、インフォシークなどの検索サービスが登場し始めていました。そのころ富士通内で社内ベンチャー制度ができて、自分が作ったアプリに愛着も未練もあったので、すぐに応募したわけです。とても厳しい審査を経て、1年くらいかかって、ようやく独立にこぎ着けました。
小川氏
コンシューマ向けの検索サービスではなくて企業向けの検索エンジンを提供しようと思った理由は?
進藤氏
Googleが台頭してきた時期でしたからね。インターネットの検索の勝者は一つだと思うんです。だったらGoogleと真っ向から戦うよりも、企業内検索にいこうと思ったんです。ただ、そのころは企業内検索はまだまだ認知されていなかったですから大変は大変でした。でも最近ようやく、ね。
小川氏
僕はそのころは日立製作所にいまして、2001年にノルウェーのFAST Search & Transfa (最近マイクロソフトが買収を発表)の製品を日立で取り扱うというディールをまとめてたりしていました。ただ、なかなか企業内検索やサイトサーチにああいう高機能検索エンジンを導入するということに、高額のコストを払うという感覚は少なかったですね。
進藤氏
そのころに小川さんと出会ってたら面白いことができたでしょうね(笑)。IT革命という言葉が出て、ITの普及を国が推進するようになってようやく、中小企業もPCを導入するようになって。2001年から2004年で環境が大きく変わりました。
■ 米国の起業熱に触れて自身も起業を志す
小川氏
進藤さんご自身の背景をもう少しお伺いしたいです。
進藤氏
私自身はというと、91年に1年社費でスタンフォードに留学できたんですけど、それが大きいですね。お世話になった先生が会社を作ったりすることが普通にあったんです。あの当時でも、アメリカでは起業熱がすごかった。
技術もすごいが、誰もが起業しようという意識がすごくて。大企業はお客さんと制作の現場がかい離している気がどうしてもしますけど、スタンフォードでは優秀な研究者がお客様と直接話したりする機会が多い。これはいつか自分もやりたい、いつか起業したいという気持ちになりましたね。
自分でもしつこいと思いますけど(笑)、思い続けるといつかチャンスがやってくると思う性質(たち)なんです。企業検索もやっとブームがきましたしね。
小川氏
そうですね。直接的な競合企業も増えてきましたでしょう?
進藤氏
表向きのライバルはオラクル、FAST、GSA(Google Search Appliance)かな。でもほんとのところは彼らが市場を盛り上げてくれていると感謝していますよ。直接当たることは実はあまりないんですよ。
小川氏
そうですか。
進藤氏
もともと会社を作った時はジャストシステムがライバルだったですね。
小川氏
ConceptBaseですね。
進藤氏
ああ、さすがによく知ってますね。私たちが会社を作った時はジャストさんはConceptBaseに相当力を入れていましたからね。上場企業だから販売状況が見えるんですけど、やはり苦労されていたみたいですけど。
ともあれ、われわれは国内では、企業内検索のシェアでは一番になっていると思います。ただビッグネームが入ってきているから、あなどることはできないですし、しっかりやるしかないと思っています。
■ 企業検索=企業内検索+サイト内検索
小川氏
企業内検索がメイン、なんですよね。
進藤氏
ご存知だと思いますけど、企業検索は、サイト内検索と企業内検索があります。サイト内検索とは、公開している企業サイトの中の情報を検索できるようにすることです。
FASTはサイト内検索のような目立つところを自分でやっていて、企業内検索の事業はパートナーさんに任せてる感じがします。企業内検索はお客様とのいろいろ擦り合わせがめんどうですからね。
アクセラは両方をやっています。というのも、これは別々ではない、同じものだと思うからなんですね。何を検索エンジンで価値をお客様に提供するかというと、社員へのエンパワーメントの機会提供だと思うんですよ。
小川氏
具体的には?
進藤氏
企業の中で情報共有しようとすると、情報のシステムの通達やマニュアル化という感じに進むことが多いですけど、最近では企業の形も逆ピラミッド型の組織になってきてます。たとえば営業マンがお客様のニーズにきめ細かく対応しようとすれば、現場にできるだけ情報を開示してあげないとならないわけです。昔はトップが情報を抱えていたけれど、いまは現場にこそ情報を集めて提供してあげないと。さらに進めると、FAQのオープン化のようなサービスが必要になったり、電子カタログではなく口コミでも情報を得ていただけるように、というように、情報をお客様側に公開していかなければならなくなっています。つまり、現場へのエンパワーメントとお客様側へのエンパワーメントなんです。
営業マンが見てわかることと、お客様にわかっていただくことは同じことです。だから、サイト内検索と企業内検索の両方を扱うのが自然なわけです。実際、お客様でも両方をお使いいただいている場合が多いです。
小川氏
アプリ自体は別物ではないでしょうけど、仕様は変わりますね。
進藤氏
アプリのコアの部分は同じものなんですけど、上で作り込むものは違ってきます。サイト内検索は企業とお客様の双方向になりますね。ユーザーがどんなキーワードできて何を探しているのか、ということを分析するような機能も重要になっていますし。
企業内検索は、サイト内検索と比べてセキュリティ面が大きく問われてきます。サイト内検索は誰がやっても同じ結果を出せばいいですけど、企業内の検索は部長と部下では検索できる領域が違うし、ヒットしてもだめ、ということもあります。例を挙げると人事情報などですけど。
アクセラはそのあたりが強いという評判をいただいています。Lotus Notesに格納された情報なども、フィルタをかけて検索できますし。
■ エンタープライズサーチというネーミング
小川氏
企業検索、という市場はどのくらいになってきていますかね??
進藤氏
そうですね…、アプリケーションだけだと100億から200億円くらいなんじゃないですかね。検索エンジン全体、というと、コンテンツマネージとかディスクのサーバーとか、アクセス権の設定や横断的に探せる仕組みなどを作ったりするので、SIもいれると1ケタあがっていくと思います。
小川氏
市場自体の伸びは大きくなっている気がします。
進藤氏
昔は一番いいサービスは企業の中にあったじゃないですか。ワークステーションなどもそうです。それがいつのまにか、コンシューマがインターネットで使うソフトのほうがずっといいものになってきましたよね。
小川氏
たしかに。いま業界でブームになっているエンタープライズ2.0なんかはまさしくその流れです。コンシューマアプリから企業向けに流れていく。
進藤氏
ネットで使っている便利なものが企業に入ったら面白いと思うはずですから。SNS、ブログ、ソーシャルブックマーク、検索もそうです。
ヒントはネットの業界はアタマのいい人がたくさんでてきて、かれらがすごいものを作っているということですよね。企業内という狭い世界で作っているよりはるかに優れているものが生まれるのも当たり前かな。
小川氏
日本の企業はそれでもあまり外に目を向けずに開発しちゃうことが多いですけどね。僕は結局ネットの速度についていきたくて、独立を選んだ口です。
進藤氏
小川さんは我慢しないかわりにイントラブログなどのいい言葉を作っているじゃない(笑)。私はずっと企業検索に取り組んできて、最近は他の人にエンタープライズサーチなんて言葉を先に作られて悔しい思いをしてますよ(笑)。みんなにアクセラはエンタープライズサーチをやらないのか?と責められて(笑)、いや昔からやってますよっ、と。その点オラクルは上手です。言葉を作るというのも大事ですよ。
■ プログラマーをスターにしたい
小川氏
そうですね。ネーミングは重要です。イントラブログという言葉もそうですし。MODIPHIのコアのプログラムの中にちょっと特殊なクローラーがあるんですけど、これは(サンブリッジの社長である)永山さんが個人的に作ったプログラムをヒントに作ったので、NAGAYAMAというコードネームにしたんですね。そうしたら、意外に社内でみんなに浸透して。なかなか根付かないコードネームも多いんですけどね。
進藤氏
コードネームをつけること自体がシリコンバレー的ですね。富士通ではなかったなー(笑)。いろいろな隠し機能を作ったり、そういうのもたのしいですよね。もっと大企業もそうしたらいいのね。
話は違いますがプログラマーが人月計算で評価、というのは古いとも思うんですよ。プログラマーをもっとスターにしたい、ヒーローにしたいと思いますね。
小川氏
同感です。
僕は自分が関わったプロジェクトのネーミングは全部自分でやってますけど、日立時代にもBOXER、SONAR(RSSリーダー)などもそうだし、サイボウズではcybozu.net(サイボウズネットからサイボウズドットネットに改称)、feedpath、Zebraなど。みんなまだ残ってますね(笑)。
開発者をヒーローにしたいのも同感で、その点でもアップルのジョブズが好きなんですけど、最初のMacの筐体にエンジニアのサインを彫ったように、僕も日立で最初に作ったBOXERのサービスに隠しコマンドで関係者全員の名前をコーディングしておきました。いまだから言えますけど(笑)。
進藤氏
日立さんは意外にオープンですね(笑)。
小川氏
思うんですけど、日本ではむしろ上場したベンチャーのほうが保守的なんじゃないですかね。
進藤氏
それは同感ですね。ベンチャーは上場したあとですごく保守的になる傾向がありますよ。ちょっとしたことで持ち帰りにさせてくれ、といわれたりします。大企業なら部長クラスで決済できるところを、ベンチャーだと取締役でも一人で決められなくなることがあるみたいです。
さっきの話じゃないですけど、検索は人をつなぐアプリだと思うんですよ。部門ごとのコミュニケーションのツールとして使えるわけで、ほんとはマッチングのツールです。社内をオープンにして現場にエンパワーメントするための道具なんですよね。そうして個人の名前が企業の中からもっとでればいいですね。CEOとかCTOじゃなくて。社内のそうしたエンパワーメントのために、われわれは検索とRSSとソーシャルブックマークの3つを使うことをお勧めしています。
小川氏
MODIPHIにもその3つの機能が偶然にもありました(笑)。今日は長い時間、ありがとうございました。
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小川 浩(おがわ ひろし) 株式会社モディファイ CEO。東南アジアで商社マンとして活躍したのち、自らネットベンチャーを立ち上げる。2001年5月から日立製作所勤務。ビジネスコンシューマー向けコラボレーションウェア事業「BOXER」をプロデュース。2005年4月よりサイボウズ株式会社にてFeedアグリゲーションサービス「feedpath」をプロデュースし、フィードパス株式会社のCOOに就任。2006年12月に退任し、サンブリッジのEIR(客員起業家制度)を利用して、モディファイを設立。現在に至る。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)などがある。 |
2008/01/22 00:00
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