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提供開始から約2カ月を経過したSP2を検証する


 マイクロソフトのWindows XP Service Pack 2(SP2)の提供が開始されて約2カ月、自動更新が開始されて約1カ月が経過した。だが、一部では、「正常にインストールできない」といった問題が表面化したり、依然として互換性の問題を指摘する声も出ている。とくに、ユーザー企業の間では、既存システムとの互換性や、Webサービス利用上でのトラブル回避などを理由に、SP2の導入を禁止するといった例も出ているほどだ。

 SP2は、果たして、ユーザーにどんな影響を及ぼしているのだろうか。いま一度、Windows XP SP2の狙いを検証してみた。


インストール後のトラブルが続出?

ウイルス対策が不十分という警告メッセージ。ただし、ウイルス対策ソフトが入っていても表示されることがある
 「SP2を導入したのだけど、へんなメッセージが出ている」--何人かの知人からこんな問い合わせがあった。

 なかには、「自動更新でやたらに時間がかかっているが、大丈夫か」という問い合わせもあった。

 SP2は、ユーザーの間に混乱を招いているのは間違いない。そして、自動更新が開始されて以降、こうした問題の発生件数が増加している。

 NECの調べによると、SP2をインストールした個人ユーザーのうち、1割弱で不具合が起こったという結果が明らかにされている。同社では、10月に入ってから、Windows XP SP2の導入時に多く発生する問題点や問い合わせが多い内容について、同社サイト上に公開するサービスを開始し、「インターネットにつながらなくなった」、あるいは「コンピュータが危険にさらされている可能性があります、と表示される」、「Windowsセキュリティの重要な警告、が表示される」といったように、SP2の導入によって発生したトラブルに関する解決方法を示し、こうした問題に対応している。

 NEC以外のメーカーも同様のサイトを用意して、ユーザー対応を図っている例が見られる。


自動更新開始以降にトラブルが増加

自動更新を有効にしていると、SP2の更新ファイルのダウンロードが自動的に行われる
 SP2は、9月2日からのダウンロードによる提供開始から、9月29日の自動更新(Windows Update)での提供が開始されるまでの間は、当然のことながら自らの意志でアップデートするユーザーがほとんどだった。その数は、マイクロソフト側でも「当初の予測を上回る数のダウンロードがあった」というほど、好調な出足ぶりだった。

 SP2というものを認識した上で導入しているユーザーであることからトラブルもそれほど多くはなかったといえる。

 しかし、9月29日以降の自動更新での提供が開始されると、一気に状況は変わった。

 SP2というものが一体何か、ということを知らないユーザーに対して、配信されたわけだから当たり前といえば当たり前だ。

 知らないままインストールしてしまったユーザーが、通常の修正モジュールのインストール作業に比べて、長い時間がかかることで、本来パソコンで処理しなくてはならない作業が中断されたり、インストール後に先に触れたようなメッセージが表示されたことで、その対策に追われたりというように、ユーザー側の混乱を招いた。

 SP2に関する事前の認知の徹底が遅れていたことと、インストール作業に時間を要することをもっと明確に訴えなかったこと、そして、トラブルを回避する手段を事前に講じられなかったことなどは、マイクロソフトの対応に課題を残したといえるだろう。


中小企業ユーザーが混乱

 大手企業の場合は、情報システム部門が対策を講じたり、マイクロソフトが提供した、米国でのSP2の出荷から240日後となる2005年4月12日までの期間、SP2のダウンロードをブロックできるツールを利用することで、導入によるトラブルを回避するという動きも見られた。

 また、超大手企業の場合には、マイクロソフトがTechBetaを提供した段階からITProの領域にまでテストの対象を広げ、合計1500サイトでの検証を行ったり、同様にRC1やRC2でもそれぞれ、約3万、約5万のサイトで評価テストが行われるなど、早期からの対策がとれる環境を提供してきたことも見逃せない。実は、これは欧米などでは行われなかった日本だけの特別な試みだった。

 さらに、ITProに対する情報提供として、米本社が公開した技術書の翻訳を実施しているほか、今後は日本の企業ユーザーを想定した独自のホワイトペーパーの提供も検討している段階だという。

 いずれにしろ、大手企業ユーザーに対しては、マイクロソフトからの直接のコミュニケーションも行っており、トラブルは最小限に抑えられているといっていいだろう。

 だが、問題となったのは中小企業の方だったといえる。

 情報システム専門の担当者がいない中小企業においては、SP2の導入によって、混乱を招いたところが見受けられ、なかには一時的に業務が停止してしまったという例もあったという。

 マイクロソフト側でも、中小企業ユーザーに対しては、全国規模で開催している中小企業対象のセミナーで、SP2のCD-ROMや関連資料を配布したり、TKCとの提携により、約7万枚にのぼるCD-ROMをTKCの会員企業に配布するといった施策を実施。さらに、SOHOユーザーもカバーできるように、9月17日からは2500店舗のパソコンショップ店頭でのCD-ROMおよび小冊子の配布、10月1日からは日本郵政公社との提携で全国2万5000局の郵便局の窓口でのCD-ROMおよび小冊子の配布といった形での支援も行ってきた。

 だが、この混乱はしばらく続きそうだ。

 マイクロソフトでは、自動更新の登録をしているすべてのユーザーに対してSP2の配布が完了するのに、来年前半までの期間が必要であることを示している。

 ただ、早い段階で、中小企業ユーザーや、SOHO、個人ユーザーに対して、どれだけSP2の認知を高めることができるかが、また、トラブルを回避するための施策を用意できるかが今後の鍵であることは間違いない。

 マイクロソフトでは、サービスパックとしては異例ともいえる「導入事例」を公開することも考えており、SP2の導入メリットや、スムーズな導入方法などについても示す予定だ。


当面はSP1のままでも大丈夫だが

 マイクロソフト関係者などによると、マイクロソフトは、すべてのユーザーにSP2を導入することをゴールとはしていないようだ。

 ユーザーの事情を考慮して、とくに企業ユーザー向けには、極めて低い導入率を当面のゴールとしている。

 もともとSP1では、すでにインストールされたパソコンが長期間にわたって流通していることから結果として導入率が高く、SP2では、とても、そこまでの普及率には到達しないだろうとの見通しも立てているようだ。

 マイクロソフトでは、SP1のユーザーに対しても、2年間にわたり、最新の修正モジュールを提供することを明らかにしており、2年以内での入れ替えを検討しているユーザーは、SP1のままでもセキュリティ面においても比較的安全な環境を維持できるといえる。

 しかし、自動更新にしておくと、必ずSP2がダウンロードされてしまうという形になる。先に触れたブロックツールを活用すれば来年4月までは、ダウンロードをブロックできるが、いまのままでは、それ以降、自動更新機能により、SP1の修正モジュールの自動更新を続けようというのは難しいということにもなる。その点で、来年4月以降、マイクロソフトがこれに対してどんな対策をとるかも気になるところだ。


SP2の意義を改めて考える

SP2で採用されたセキュリティセンター
 だが、マイクロソフトは、あくまでもSP2の導入をユーザーに対して推奨する。

 その理由を知るためにも、マイクロソフトがSP2を投入した意義を改めて確認しておきたい。

 マイクロソフトは、SP2を単なる修正モジュールとの位置づけではなく、セキュリティ強化のためのツールと位置づけている。

 従来のサービスパックが、修正モジュールの集合体であったのに対して、SP2は、クライアントPCのセキュリティそのものを向上させるツールであるという点が大きく異なる。

 マイクロソフトの説明は次のようになる。

 「パソコンをモバイル環境で利用するユーザーが増え、企業内に設置したファイアウォールや、サーバーレベルでの対策たけでは限界がこようとしている。また、セキュリティホールの発見および修正モジュールの公開から、短期間で悪質なウイルスが登場するなど、対策に許される時間もわずかになっている。こうした環境の変化をとらえた場合、クライアントPCそのもののセキュリティレベルを引き上げておく必要があった。それを実現するのがSP2である」

 かつて、ニムダが登場したときには、修正モジュールが公開されてから300日以上経過してからウイルスが登場したが、BlasterやSasserでは2週間から3週間程度で蔓延し始めている。今後は、これがさらに短期間化する可能性もある。適切なタイミングで適切な処置をとる必要が、多くのユーザーにとって共通の課題となっているのである。

 マイクロソフトでは、「SP2は、セキュリティレベルを維持するための最低限の基盤だ」と言い切る。

 だが、マイクロソフトがそれだけの意味をもって投入したツールであるという点をユーザーに理解させるためには、さらなる努力が必要だ。そして、導入に際してトラブルが起こらない仕組みを提供しない限り、SP2の普及はままならないといえるだろう。



URL
  マイクロソフト株式会社
  http://www.microsoft.com/japan/


( 大河原 克行 )
2004/10/29 00:00

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