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Windows Vista RC1の体験を推奨するマイクロソフトの狙い
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(左から)米Microsoftビジネス部門担当コーポレートバイスプレジデントのクリス・カポセラ氏、日本法人社長のダレン・ヒューストン氏、米Microsoft Windowsクライアントマーケティング担当コーポレートバイスプレジデントのマイケル・シーバート氏
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WPC TOKYO 2006のマイクロソフトブースではWindows Vistaを体験しようという来場者で一杯となった
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「ぜひ、Windows Vista RC1と、2007 Office System Beta2を入手して、自らのPCにインストールしてほしい」。
WPC TOKYO 2006の基調講演に登場した米MicrosoftのWindowsクライアントマーケティング担当コーポレートバイスプレジデントのマイケル・シーバート氏と、ビジネス部門担当コーポレートバイスプレジデントのクリス・カポセラ氏は、口を揃えてこう語った。
情報システム部門の担当者やソフトベンダーの開発者が相手の発言ならばまだわかる。だが、一般ユーザーに対して、β版の利用を呼びかけるのは、極めて異例のこと。WPC TOKYO 2006の基調講演の聴講者が、パワーユーザーや業界関係者が中心だったとはいえ、やはり、この呼びかけには違和感を得ずにいられなかった。
一方、WPC TOKYO 2006の会場は、マイクロソフトブースだけが飛び抜けた格好で、巨大な展示を行っていた。
そこには、Windows Vistaを搭載した250台のPCと、100人のマイクロソフト社員が待機し、実際にWindows Vistaおよび2007 Office Systemの最新機能に触れることができるようになっていた。
まだ、明確な発売日や日本での価格が発表されていない段階で、これだけの規模でタッチアンドトライを実施するのも異例のことだといえる。
富士通、ソニーが出展を見送り、出展したハードベンダーの製品展示のなかにも目玉がないなかで、マイクロソフトブースに来場者が集中するのは明らかだった。「マイクロソフトEXPO」の様相を感じたのは筆者だけではないだろう。
■ Windows Vistaの良さを伝える最大の手段
なぜマイクロソフトは、発売前から、β版を使ってまでWindows Vistaに触れてもらうことに、こだわるのだろうか。
それは、Windows Vistaの良さを伝えるには、触れてもらことが最大の近道だと判断したからだ。
Windows Vistaと、2007 Office Systemでは、現行のWindows XPやOffice 2003と比較して、インターフェイスが大幅に変更されている。
「Windows 95以降、マイクロソフトはインターフェイスを維持することを前提としてバージョンアップを繰り返してきた」と語るのはWindows Vistaを担当しているマイクロソフトWindows本部ビジネスWindows製品部・永妻恭彦シニアプロダクトマネージャ。「だが、Windows Vistaではインターフェイスを一新することを前提に開発したという点で、これまでのOSとはまったく異なるもの。直感的な操作で、目的のアプリケーションやコンテンツにたどり着けるようになっているのが大きな変化だ」と語る。
また、2007 Office Systemを担当するインフォメーションワーカービジネス本部Office製品マーケティンググループ・田中道明マネージャも、「例えば、Excelを使用しているユーザーの本来の目的は、数字の図表を作ることにあるのではなく、その数字から導き出せる情報であり、それをどうビジネスに生かすかという点。また、PowerPointについてもレイアウトなどに時間をかけるよりも、いかに相手に訴えることができる資料を作成するか、そして、その作成の過程での思考を妨げない、ということこそが重視されなくてはならない。新たな2007 Office Systemでは、アプリケーションの操作を意識せずに、ビジネスに必要とされる情報を得たり、思考を優先した作業ができるようにした点が大きな特徴」と語る。
Word文書で書体を変える場合に、従来はフォントを選択してクリックしたのちに、フォントの変更を確認するという操作手順だったが、新たなWordでは、ライブプレビュー機能によって、フォントの種類が表示された部分にカーソルをあわせるだけで、リアルタイムでフォントを変更し表示する。これも、操作の煩わしさをなくした一例だ。
また、Excelではデータバー機能を使うことで、羅列された数字の上に棒グラフを表示するなど、瞬時に視覚的に見ることができるようになった。数字が羅列された表から、どれが一番数字が大きいのか、上位10位、下位10位はどれかといったことも一瞬にして、視覚的に判別できるようになる。
こうした機能は、本来オフィス製品に要求されている、「ビジネスに必要とされるデータを導き出す」、あるいは「ビジネスの成果を求める」という要件を実現するための基本機能だといっていい。
「インフォメーションワーカーが求める成果を、簡単な操作で、最も効果的に導き出すのが2007 Office System」(田中マネージャ)、「PCを使うことにユーザーが振り回されず、ビジネスに必要される成果を見通しよく、見晴らしよく提供できるのがWindows Vista」(永妻シニアプロダクトマネージャ)というのが、今回のWindows Vistaと、2007 Office Systemなのである。
■ インフォメーションワーカーを支援
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マイクロソフト日本法人ダレン・ヒューストン社長
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マイクロソフト日本法人のダレン・ヒューストン社長は、「マイクロソフトは、個人に対するデジタルライフスタイルの実現と、企業におけるデジタルワークスタイルの実現に取り組んでいる。だが、日本は、デジタルワークスタイルにおいて、多くの課題を残している。オフィスのなかには、紙文書が残り、コミュニケーションの手段としても紙を多用しているという傾向が強い。日本でこそ、Windows Vistaと2007 Office Systemの効果が発揮できる」と語る。
続けて、「Windows Vistaは21世紀のPC環境の元になるOSであり、イノベーションを実現するOSになる」とヒューストン社長は語る。
Windows Vistaは、デジタルワークスタイルを変革するOSであり、インフォメーションワーカーの仕事を変革することができるOSとマイクロソフトでは位置づけるのも、こうした日本のビジネスシーンを変えることができると考えているからだ。
「すでに、Windows Vista RC1は、35万本を出荷。2007 Office System Beta2では、100万本を出荷している」と、マイクロソフトの佐分利ユージン執行役員常務は語る。多くのユーザーが、21世紀型のPC環境を体験しているというわけだ。
■ 社内でもWindows Vistaと2007 Office Systemを活用
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Windows本部のジェイ・ジェイミソン本部長
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すでにマイクロソフト社内では、Windows Vistaと2007 Office Systemが導入され、ダレン・ヒューストン社長以下、多くの社員がこれを利用している。
マイクロソフトのWindows本部のジェイ・ジェイミソン本部長も、「現時点で、Windows Vistaと2007 Office Systemを使用しているが、感覚的に、25%程度の生産性向上を実感している。一度Windows Vistaを使い出したら、二度とWindows XPには戻れない」と語る。
マイクロソフトではある実験を開始している。PCを立ち上げて、アプリケーションを起動し、特定の作業を行い、PCを終了させるという一連の動作に関して、速度測定を行っているのだ。
まだ最終的な結果は出ていないようだが、Windows Vistaと2007 Office Systemの組み合わせによって、Windows XPとOffice 2003の環境に比べて、約半分の時間で作業が完了するという。
「私のPCは2秒で起動して、2秒でシャットダウンできる」とダレン・ヒューストン社長は語るが、それだけをとっても、Windows XPでは実現できなかった利用環境が実現されているのがわかる。
また、検索時間などに関する時間を大幅に削減している点も見逃せない。
ジェイミソン本部長は、「作業そのものの時間も短縮しているが、資料やデータを検索するといった、本来の業務とは異なる作業に要する時間が短縮されているのが大きな特徴といえる。必要となるデータや資料を検索したり、データを複数の社員と共有して利用するといった使い方が、簡単に、そして素早くできるようになった。Windows Vistaと2007 Office Systemのメリットはここにある」というわけだ。
一方、ダレン・ヒューストン社長も、自らの体験からこう語る。
「私の感覚では、Windows Vistaと2007 Office Systemを導入したことによって、生産性は20~30%アップしている。そこで得た時間を、社員とのコミュニケーションに使うことができる。社員とのコミュニケーションが増えたことで、業務がさらに円滑に遂行できるようになった。もう少し早くから、コミュニケーションの時間を多く割くべきだったと反省しているぐらいだ。PCの作業に費やされていた時間を効率化することで、生み出した時間を、私がやるべき本来の仕事に振り分けることができる。このメリットは大きい」
マイクロソフトの経営トップ、社員がWindows Vistaと2007 Office Systemを使用してみて、デジタルワークスタイルの変化における効果を、より実感したというのが、この数カ月の同社の成果といえるかもしれない。
だからこそ、マイクロソフトは、多くのユーザーにβ版から使ってもらい、それをいち早く実感してほしいと呼びかけているのである。
■ メリットがどこまで浸透しているのか
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執行役常務 ビジネス&マーケティング担当 佐分利ユージン氏
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だが、Windows Vistaと2007 Office Systemが実現する効果を知っている人はまだ少ないのは明らかだ。
実際、一般ユーザーへの最初のお披露目となったのは、10月18日から開催されたWPC TOKYO 2006となる。
このほかにも、Webを通じて申し込めば、Windows Vista RC1と2007 Office System Beta2を入手し、体験することができる。そして、10月に入ってからは、PC誌などにWindows Vista RC1が添付されるようになっており、多くの人が、より身近にWindows Vistaを体験することができるだろう。
10月18日、WPC TOKYO 2006の会場に訪れたマイクロソフトの佐分利ユージン執行役員常務は、自社のブースを訪れ、真剣な表情でWindows Vistaを操作し、説明を聞いている来場者の姿を見て、改めてWindows Vistaに対する関心の高さを認識したという。
「いまやOSでは市場喚起することはできないとも言われるが、決してそうではないことがわかるはず。10月18日は、まさに、Rolling Thunder(ローリングサンダー)のような日。本当の意味で、Windows Vistaが日本でスタートすることになる」と語る。
マイクロソフトブースを訪れた複数のハードメーカー関係者も、「Windows Vistaが市場喚起の材料になると実感した」と異口同音に語り、低迷するPC市場において、Windows Vistaをきっかけに下期回復する可能性に期待を寄せる。
だが、マイクロソフトにとっては、これから、いかにWindows Vistaの使い勝手の良さや、認知度を高めていくかが鍵だといえる。
ジェイ・ジェイミソン本部長は、「ブランド、機能、使い勝手という点で、現段階では、当初のゴールというレベルには到達している。だが、それはスタートアップとしての認知のレベルであり、まだまだ認知度を高めていく必要がある」と語る。
ここにも、「使ってもらう」ことでの認知度を高める必要性があることが必要だと、指摘する。
それは、先にも触れたように、実際に使ってもらうことが、認知度を高める早道だと判断しているからだ。
マイクロソフトは今週、日本におけるWindows Vistaの価格体系や、マーケティングプランなどを明らかにする予定だ。
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WPC TOKYO 2007で展示されたWindows Vista対応PC
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Windows Vista Premium Readyロゴ
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Windows Vista Capableロゴ
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佐分利執行役員常務は、「現時点では詳細は話せないが、Windows Vistaを多くの人に体験してもらうための手段を考えている。これまでは、パートナーとの連携を強化することに力を注いできた。ハードメーカーには、Windows Vista CapableあるいはWindows Vista Premium Readyのロゴが入ったPCをラインアップしてもらい、ユーザーにもこれを購入してもらえれば、Windows Vistaも動作することをコミットするということを訴えてきた。また、周辺機器メーカーやソフトメーカーにおいても、同様にロゴを取得していただき、Windows Vistaでも動作する環境を整えてきた。量販店店頭では、まだWindows Vistaに関する告知が十分とはいえないが、これから一気にWindows Vistaを盛り上げていく。Windows Vistaの発売を待つのではなく、いまからでも、Windows Vista CapableあるいはWindows Vista Premium Readyのロゴが入ったPCを購入すれば安心だというメッセージを発信していきたい」と語る。
Windows Vista、そして2007 Office Systemの普及戦略が、いよいよ本格的に始まることになる。
そのキーワードは、使って体験してもらうことに尽きるのだ。
■ URL
マイクロソフト株式会社
http://www.microsoft.com/japan/
■ 関連記事
・ マイクロソフト、WPC EXPOの基調講演でVistaをデモンストレーション(2006/10/18)
( 大河原 克行 )
2006/10/24 00:00
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