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米DellフェリスAPJ担当副社長に聞く、日本での業績好調の要因
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Dellの日本における業績が好調だという。米Dellで、アジア・パシフィック/ジャパン(APJ)市場を統括する、APJ担当副社長のスティーブ・フェリス氏は、「日本は、最も利益率が高い市場」だと語る。第3四半期(8~10月)における暫定四半期決算の状況を踏まえながら、日本市場におけるDellの取り組みなどについて聞いた。
■ 日本市場は9%増の第3四半期実績
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APJ担当副社長のスティーブ・フェリス氏
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米Dellは先ごろ、第3四半期の暫定四半期決算を発表した。
Dellが、この決算を暫定としているのは、米証券取引委員会(SEC)の要請により、同社の過去の会計報告書において会計上の記載誤りに関しての調査が行われており、2006年8月4日に終了した第2四半期の会計報告が未提出であること、さらに11月3日に終了した第3四半期の会計報告書も期限までに提出できないことに起因する。
そのため、修正の可能性があることを前提として発表したものであるからだ。
これによると、全世界での売上高は144億ドル、営業利益は8億2400万ドル。そのうち、APJ地域の売上高は、19億ドル、出荷台数は23%増。市場全体の約2倍の成長率になっているという。IDCの調査でも、シェアは前年同期比1.4ポイントアップしている。
日本における業績については、プレスリリースなどでは明らかにされていないが、フェリス氏によると、第3四半期の業績は、前年同期比9%増。企業向け、個人向けともに、ほぼ同じ成長率になったという。
「中国では出荷台数で33%増、インドでは93%増と大幅な成長を見せた。日本の市場は、中国、インドに比べると成長率は鈍いが、APJのなかでは最も利益率が高い市場である。サーバー、スレトージ、デスクトップ、ノートPC、ソフト、周辺機器といったすべての事業分野において、安定した売り上げと利益を確保している」とし、日本市場において、堅調な伸びと、黒字を維持していることを示した。IDCの調査によると2.6ポイント、シェアが拡大している。
とくに、日本での成長が著しいのが、DPS(デル・プロフェッショナル・サービス)である。
テクノロジーコンサルティングサービスであるDPSは、日本においては、前年同期比38%増という高い成長を遂げ、Dellのエンタープライズ事業の業績が順調に拡大していることを示す。
また、ストレージに関しても43%の伸びを示したほか、ソフトおよび周辺機器に関しても38%増という成長を遂げた。
「日本では、PC市場全体が前年割れになるなどマイナス成長の局面にあるが、市場がマイナス成長の時に、いかに成長を維持するかが大変重要。そのためのコスト削減効果と、高い顧客満足度を維持することができたことが、Dellが成長した要因」と総括した。
■ Dellがフォーカスした3つのポイント
この半年間にわたって、Dellは、3つのポイントにフォーカスしてきたという。
ひとつは、製品ラインアップの拡充だ。この半年の間にデスクトップ、ノートPC、サーバー、スレトージ、プリンタといったあらゆる領域において新製品を投入。「Dellの歴史上、最高品質の製品群を、短期間にラインアップできた」という。
ノートPCに関しては、ソニー製リチウムイオン電池の発火、発煙問題を原因とした回収プログラムを実施したが、「ノートPCの出荷実績は、全世界においても高い成長を維持しており、その実績からも影響がなかったと判断している。実は、ここでも、ダイレクトモデルの強みが発揮できた。当該バッテリーを搭載したノートPCを購入したユーザーに対して、すみやかにコンタクトすることができ、むしろ、迅速な対応に対しての評価が高く、Dellから購入して良かったといった声も聞かれた。回収というピンチを、顧客満足度を高めることにつなげられた」とした。
ソニーとの取り引きについては、今後も継続する意向を見せ、「ソニー自らが対策についての措置を発表しており、今後もソニーとの取引関係にはなんら変更はない」とした。
2つめのポイントは、顧客満足度の向上である。Dellは、顧客満足度向上のために、全世界規模で1億5000万ドルの投資を行っている。「これらの投資は、問題診断システムや、通信網などの整備への投資がほとんどだが、世界各国の拠点で共有しているシステムであり、これが日本の顧客満足度の向上にも大きく寄与している」とした。
日本においては、宮崎のカスタマセンターおよび川崎のコンタクトセンターにおける要員の拡充などにより、顧客満足度向上に向けた取り組みが効果をあげていることを例にあげ、「一時的に、日本での顧客満足度が下がった反省がある。しかし、これを改善するための投資を進めてきた。四半期ごとの社内調査結果の推移を見ても、着実に顧客満足度は上昇しており、すでに問題は解決していると判断している」と語った。
3つめのポイントは、コスト削減効果だ。
「在庫がなく、流通コストが低いというデルモデルの特徴によって、価格戦略を導入しても、利益をあげることができている。日本の市場において、ダイレクトモデルが適切に機能していることが成長の要因」とする一方、製造コストの削減でも効果をあげていることを指摘。中国・廈門(アモイ)での日本向け製品の生産体制を拡充したことを示した。
2006年5月から稼働したCCC4(China Customer Center 4)と呼ばれる最新の生産拠点では、日本向けのPC、サーバーを24時間操業で生産。同工場では、1万5000平方メートルという広大な製造エリアで、最大年間350万台のPC生産が可能となっている。
今年4月まで、日本向けPCの生産を行っていたCCC2よりも、ラインの短縮化、セル生産のための工程スペースの縮小化などを実現。1人あたりの生産性が高まっている。
APJ全体では、2007年前半には、CCC4とほぼ同規模の新工場が、インドで操業開始する予定。現在、CCC4で生産しているインド市場向けの製品が新工場に移管することで、生産キャパシティに余剰分が出ること、さらに、2007年1月末の稼働に向けて、CCC4内に新たな製造ラインを設置する計画であることから、日本向けの生産量を向上させることも可能だ。
「確かに、日本では、トップシェアが視野に入ってきている。だが、それよりも、事業の状況をしっかり把握し、顧客満足度を高めていくことが最優先されるべき。この取り組みの過程において、近いうちにトップシェアを獲得できる時がくるだろう。ユーザー企業のパートナーとして、Dellのテクノロジーやサービスを提供していくことに力を注ぎたい」とした。
さらに、「日本の市場動向を分析して、小型のタブレットPCや、ノートPC、あらゆる機能を一体化したオールインワン型のPCなどの投入も検討していきたい」と、日本市場向けの製品投入にも言及した。
「日本では、コンシューマ市場への参入が遅れたという反省がある。また、ノートPCに関しても、日本市場に適切な製品の投入がなかったとも考えている。今年に入ってからXPSシリーズの投入など、日本のコンシューマユーザーに受け入れられる製品を投入しはじめており、成果があがっている。これからも日本のコンシューマ市場に受け入れられる製品投入を行うとともに、売上高の80%を占めるビジネス市場向けの製品投入にもさらに力を注ぎたい」とした。
■ 日本でのトップシェア獲得に向けて、新経営陣に期待
一方で、最近では、APJ地域において、Dellからレノボへの人材流出が話題になっている。
Dellの中国法人社長を務めていたデヴィッド・ミラー氏が、レノボのアジア太平洋地域の総括責任者に就任。同じタイミングで、レノボ・ジャパンの社長に、Dell日本法人のホーム&ビジネスセールス事業統括事業本部長を務めていた天野総太郎氏が就任したことなどがそれに当たる。
これに対して、フェリス氏は、「レノボに限らず、多くの競争相手が長年にわたって、Dellのモデルをコピーしようとしてきた。だが、デルモデルやBTOの仕組みは単純に見えるが、22年間のノウハウが凝縮されており、そう簡単にコピーできるものではない」と、DellのAPJにおける成長には影響がないとした。
また、日本においては、今年5月から陣頭指揮を振っているジム・メリット社長に対して、「日本における1700人の社員が一丸となって事業を推進できる体制が整っている。メリット氏のリーダーシップが発揮されていると評価している。メリット氏が新たに迎え入れた人材とともに、優秀なマネジメントチームを形成しつつあり、これからの成長に期待している」と語った。
Dellの日本法人では、前インテル取締役の町田栄作氏を迎え入れたほか、経営層の充実やエンタープライズ事業の強化に向けた人員強化を図っているところだ。
フェリス氏は、今後の日本市場における成長についても期待を寄せており、「世界的に見ても、日本市場は、規模が大きく、技術的にも最先端のものを求める傾向が強い。日本経済にも回復感が出始めており、今後、さらなる成長が期待できる。まだ、オープンシステムに対して、今後、市場が拡大する要素もあり、LinuxやWindowsの普及にも注目したい。日本国内における企業のIT投資が活性化するなかで、日本の厳しい要求に応えられるように、Dellのプロセス全体を向上させていく必要がある。日本での要求に応えるということは、全世界のDellのプロセスを向上させることにもつながる」などとした。
( 大河原 克行 )
2006/12/22 10:43
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