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リコーが成長戦略の柱に据えるプロダクションプリンティング事業


 リコーは、プロダクションプリンティング事業において、2010年度に2500億円の売上高を目指す計画を明らかにした。

 米IBMからプリンティング事業を買収。InfoPrint Solutions Companyとして、プロダクションプリンティング事業に本腰を入れて展開できる体制が整い、ここにきて明確な事業計画を明らかにした格好だ。

 とくに、2010年度は、名実ともに完全な買収が完了するタイミングである。リコーのプロダクションプリンティング事業は、どんな成長戦略を描こうとしているのだろうか。その取り組みをまとめた。


屋台骨となる画像ソリューション事業

田中則雄常務執行役員
 リコーにとって、MFP(マルチファンクションプリンタ)およびLP(レーザープリンタ)で構成される画像ソリューションは、まさに屋台骨だ。

 リコーの2007年度通期の売上高見通しは2兆2500億円。そのうち77%を占める1兆7331億円が、画像ソリューション事業となる。

 言い換えれば、画像ソリューション事業における収益拡大戦略および成長戦略が、そのままリコーの中期経営戦略を左右するといっていい。

 現在、リコーは、第15次中期経営計画の最終年度を迎えており、3月末でこれが終了する。来年度以降の第16次中期経営計画が策定段階にあり、新計画においても、画像ソリューション事業の成長戦略が中核となることは容易に予想できる。そのなかでも、プロダクションプリンティング事業は、リコーが挑む新たな市場領域でもあり、成長戦略策定でも重要な柱のひとつに位置づけられることになるだろう。

 「リコーのコア事業であるMFP+LP事業の成長領域としては、オフィスハイエンド市場への取り組み強化と、オフィスローエンドへの取り組みがある。ハイエンド市場においては、BC変換(モノクロ機からカラー機への移行)を進め、ローエンド市場に対してはチャネル強化を図る。さらに、ハイエンド市場に対しては、プロダクションプリンティング領域に進出し、ローエンド分野にはGELJETプリンタによるビジネスパーソナル市場の開拓を目指す。これにより、トータルプリンティングシステムプロバイダを目指す」と、リコーの田中則雄常務執行役員は語る。


4つの領域における市場変化

プロダクションプリンティング事業の4つの領域
 リコーでは、プロダクションプリンティング市場を、4つの領域に分類し、それぞれの市場動向を次のようにとらえている。

 ひとつめは、大手企業などの業務出力センターなどを指す「Data Center」だ。請求書や財務諸表などの出力を専門に行う領域で、基幹業務システムと連動した形での出力用途となる。この分野では2つのトレンドがあるという。ひとつは、基幹系印刷の分散化に伴うハイエンドMFPやLPへの流れだ。いわばダウンサイジング化の動きととらえられるものである。そして、もうひとつが、トランスプロモとの連動だ。トランスプロモとは、請求書だけを送付するのではなく、請求書にあわせて販促資料などを同時に送付するという手法。いまやこれが、Data Center領域に変化をもたらそうとしているのだ。

 トランスプロモは、2つめの領域であるDigital Printer領域にも大きな影響を与えている。

 印刷事業者やダイレクトメール(DM)事業者が対象となるDigital Printerでは、トランスプロモの広がりとともに需要が拡大する一方、One to Oneマーケティングの拡大によって、情報をこまめに変更した形で印刷するバリアブル(可変)印刷ニーズが増加している。パーソナルDMに対する需要増大という変化が出ているのだ。

 そして、3つめの領域がIn Plantである。その名のとおり、企業内コピーセンターなどをターゲットとする領域で、マニュアルや社内教育用資料、名刺などの印字用途で活用される。この分野では、企業が提供する製品、サービスの多品種、少ロット化によって、社内での印刷需要が増加しており、今後の成長が期待される分野である。

 最後に、PFP(Print for Pay)の領域だ。この領域は、コピーショップや、スーパー、コンビニエンスストアなどでのコピー利用を指す。簡単なカタログや販促物、あるいはプレゼンテーション資料の印字などに、企業が一時的に利用するといった用途が中心となる。


新製品投入に加え、ソリューション力を生かす

プロダクションプリンティング市場に対する基本戦略
 こうした4つのプロダクションプリンティング市場セグメントに対して、リコーは3つの観点から取り組む方針を打ち出す。

 ひとつは、Data Center市場に対する「基幹系印刷と分散印刷双方の拡大」だ。

 MFPおよびLPではトップシェアを誇るリコーが、低コストのローエンド機から、156ppmの高速印字を実現するハイエンド機までを用意。さらに連帳対応機などの幅広いラインアップを取り揃えている強みを生かせる分野でもある。

 2つめが、カラーPOD(Print on Demand)市場の獲得だ。

 ここでは、新たに90ppmを実現するプロダクションプリンティング向けカラー機を現在開発中で、今後、この市場に向けた新製品の投入を予定している。

 ここでは、「ヘビープロダクションプリンティングのダウンサイジング、ライトプロダクションプリンティングのアップグレードといった需要を獲得する」と語る。欧米市場向けには、コダックとの販売提携により、この分野の品揃えを強化しており、投入予定の新製品とともに需要獲得を目指す。

 そして、最後が、トランスプロモ市場の獲得である。

 この領域は、InfoPrint Solutions CompanyのInfoPrint 5000などが中核製品となる。

 「カラーの高速連続帳票の印字を可能とすることで、モノクロからカラーへの請求書印字を可能とする一方、InfoPrintのデータハンドリング技術によって、顧客情報などを戦略的に活用することが可能になる。トランスプロモやバリアブル印刷といったニーズに、リコーとIBMの技術で対応することが可能になる」という。

 さらに、「ハードだけにとどまらず、InfoPrint Process Directorをはじめとする内製ソフトや、アライアンスによって幅広いアプリケーションに対応できる点も強みといえる。印刷工程からビジネス全体のソリューションまで提供できる仕組みが整い、さらに、全世界36カ国での販売、サービスを展開できる体制が確立できた。全世界の販売、サービス体制では業界でもトップクラスに匹敵するネットワークを構築し、その上で事業が展開できる」とする。


プロダクションプリンティング事業の事業体制 世界各地の販売・サービス拠点

 2010年に掲げたプロダクションプリンティング事業の売上高目標2500億円は、全売上高の1割にあたる意欲的な数字である。

 この売上計画のなかには、ハードだけにとどまらず、消耗品、保守・サポートに加え、システム構築などのソリューションも含まれる。

 トータルソリューションによる提案がどこまでできるかが、リコーのプロダクションプリンティング事業の成長を左右することになるのは間違いないだろう。



URL
  株式会社リコー
  http://www.ricoh.co.jp/


( 大河原 克行 )
2008/02/20 00:00

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