ジュニパー、「通信事業者が待ち望んでいた」100GbE PICを2009年中にも製品化

コアルータ「T1600」向け、IEEE 802.3baに完全準拠

100GbEインターフェイスカードのプロトタイプ
米Juniper Networks ハイエンドシステムズ・ビジネスユニット プロダクト・マーケティング担当副社長のルック・セーペンス氏
100GbEの適用例

 ジュニパーネットワークス株式会社(以下、ジュニパー)は6月9日、100Gigabit Ethernet(GbE)に対応したPIC(物理インターフェイスカード)を、早ければ2009年中にも製品化することを発表した。同社によれば、100GbEインターフェイスカードの製品化は業界でも初めてとのことで、既存のコアルータ「T1600」などに対応する。

 インターフェイスは100GBase-LR4×1を備え、社内検証では64バイトのショートパケットでも100Gbpsのラインレートを達成できたとのこと。ラインカード部分は従来の「FPC4」と互換性があり、「フロントのPICを購入すればアップグレードが可能」(米Juniper Networks ハイエンドシステムズ・ビジネスユニット プロダクト・マーケティング担当副社長のルック・セーペンス氏)になっている。

 100GbEの規格自体はIEEE 802.3baとして現在標準化作業中だが、新インターフェイスはこれに完全準拠。標準化作業の完了は2010年初頭になるものの、技術的な仕様はすでに固まっているため、製品化に向けての障壁はないとしている。現在、社内テスト用のプロトタイプはすでに完成しており、8月末より顧客でのフィールドトライアルを開始する予定。セーペンス氏によれば、先行出荷を2009年中に開始したい意向で、量産出荷は2010年第2四半期を目標にしている。

 なおジュニパーでは、100GbEについて、「当面はリンクアグリゲーションの削減が最大の普及要因になる」(セーペンス氏)と見ている。現在のEthernetでは10GbEを超える規格がないため、キャリアやxSPのバックボーンなどでそれ以上の帯域が必要となる場合は、複数の回線を束ねるリンクアグリゲーションの手法が採用されている。しかし、ネットワークの構成が複雑になるほか、オーバーヘッドが発生したり、物理的に多くのケーブルが必要になったり、といったデメリットがあるので、より太い回線に統合することで構成をシンプルにしたい、というニーズがある。100GbEは、こうしたネットワークの統合にうってつけなため、さまざまな事業者から待ち望まれていたのだという。

 具体的な利用シーンとしては、データセンターのPoP内、もしくはPoP間接続を想定しており、ベースとなるルータのT1600とあわせてキャリアやxSPのほか、GoogleやYahoo!などのコンテンツ事業者に対しても訴求していく考え。初期コストは当初は10GbEインターフェイスカードの10倍より少し安いくらいだが、将来的には5~6倍の価格を目標に開発を実施。ネットワーク構造のシンプル化などから実現される運用コストの削減と合わせて、ユーザーにメリットを提供するとした。T1600は2年前に発表された機種だが、スロットあたり100Gbpsのラインレート性能を備えており、100GbEのインターフェイスカードを装着した場合でも、ルータ自身がボトルネックになることはない。

 さらに今後は、ビデオトラフィックの増大、クラウドコンピューティングの普及といったことからも、高速なインターフェイスに対する需要が見込まれるとのことで、100GbE製品化の意義は大きいとした。




(石井 一志)

2009/6/9 15:40