公開から1週間で2万ダウンロード、最新版XenServerの特長を聞く


 シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社は6月24日、サーバー仮想化プラットフォームの最新版「Citrix XenServer 5.5」の無償提供を開始した。米国では、6月16日(米国時間)より提供を開始しており、公開から1週間で2万ダウンロードとなるなど、ユーザーの関心が高まっている状況だ。

 今回、米Citrix バーチャライゼーションマネージメント部門プロダクトマーケティング担当シニアディレクタのロジャー B.A. クロリース氏に、XenServer 5.5および有償の管理ツール「Citrix Essentials」の特長について話を伺った。

米Citrix バーチャライゼーションマネージメント部門プロダクトマーケティング担当シニアディレクタのロジャー B.A. クロリース氏

―まず、XenServer 5.5の改良点について説明していただけますか?

クロリース氏
 管理者にとっては、Activie Directoryと統合されたのが大きな変更点です。仮想マシンのプールごとに、認証で使用するActive Directoryを指定できます。これにより、1つのパスワードで完結し、アクセス状況に関してもレポートを通じて把握することができます。

 また、NASやローカルストレージなど、さまざまなストレージに対してシャドーコピーサービスをサポートしています。シャドーコピーを行う場合、ネットワークI/Oの帯域幅を使うという問題がありましたが、今回サーバープール内でそのまま移動できるようになっているので、そうした問題もクリアしています。

 そのほか、変換ツールであるXenConvertもXenConvert 2.0にバージョンアップし、これまでのP2V(物理マシンから仮想マシンへの変換)のほか、V2V(仮想マシンから仮想マシンへの変換)をサポートしています。これにより、VMware ESXやVMware Workstationで使用している仮想マシンをXenServerやHyper-Vで使用しているVHDファイルに容易に変換できます。また、変換先としては、VHDのほか、OVF(Open Virtualization Format)やOVA(Open Virtual Appliance)、XVA(XenServer Virtual Appliance)などオープンな仮想化フォーマットもサポートしています。特にOVFに変換できるのは、ユーザーにとって大きなメリットがあるとおもいます。


―VHDファイルに変換できるということは、XenServerで利用するだけでなく、Hyper-Vでも利用できる形式に変換できるということですか?

クロリース氏
 そうなりますね。実際、管理ツールであるCitrix EssentialsはXenServerとHyper-Vに対応した製品を用意しており、外部ストレージを経由して相互にVHDファイルを利用することも可能です。


―XenServer 5.5のそのほかの改良点はありますか?

組織などの単位でまとめて表示できるビューを用意するなどXenCenterも改良

クロリース氏
 細かなところですが、サポートOSを拡充しています。Windows 7も試験的サポートを行っていますし、SUSE Linux Enterprise Server 11、Debian 5.0、Red Hat/Cent OS/Oracle 5.3といったLinuxの各ディストリビューションを新たにサポートしています。

 管理コンソールのXenCenterも改良しています。新たに組織などの単位でプールやサーバー・ストレージをまとめて表示するビューを用意しました。これを利用することで、各リソースをよりわかりやすく管理できます。


―ハイパーバイザーそのものの強化点は?

クロリース氏
 XenServer 5.5では、オープンソースのハイパーバイザー「Xen 3.3」をベースとしたことで、IntelのEPTやAMDのRVIといった仮想化支援機能に対応しました。これらの機能により、メモリマッピングの機能をCPU側で行うので、オーバーヘッドを大幅に軽減できます。

 オープンソースのXenは現在、3.4をリリースしていますが、今回のバージョンでは3.3を使っています。というのも、XenCenterとの統合機能を検証する必要があるからです。機能評価は行っていますので、次期バージョンではXen 3.4をベースにすることになるでしょう。


―管理ツールのEssentialsも機能強化されていますね。

クロリース氏
 はい。Essentialsは日本国内ではまだリリースしていませんが、近日中には発表できるとおもいます。

 ご存じかもしれませんが、「Citrix Essentials for XenServer and Hyper-V」と呼んでいるとおり、EssentialsはXenServerとHyper-Vの2製品向けに提供されています。新バージョンでは、Workload BalancingとStorageLinkが強化されています。

 Workload Balancingは、仮想マシンのパフォーマンスを測定し、最適なサーバーに配置する機能です。CPUやメモリといった情報だけでなく、ディスクI/OやネットワークI/Oなども判断材料にしているのが特長です。

 一方のStorageLinkは、複数のストレージを一元管理する機能です。従来から搭載されている機能ですが、新バージョンではストレージ側で持っている機能を利用できるようになっています。これにより、各ストレージが持つ高度な機能を利用できるほか、サーバー側は仮想環境の構築に集中することができます。


―米国では6月16日よりダウンロードを開始しています。これまでの反応はどうですか?

クロリース氏
 大変いいですね。XenServer 5を無償化したときは、公開から1週間で1万3000のダウンロードでしたが、XenServer 5.5では公開から1週間で2万ダウンロードとなっています。

 無償化後にユーザーの話を聞いてみると、すべての機能が使えることに対する評価が高いですね。実際、本番環境で使っていただいている例も多くあります。無償ではありますが、別途サポートを購入していただければ、企業でも安心して利用していただけます。


―今週、米Red HatのEVPが来日し、「2年後には、ハイパーバイザーはOSの一部となっているので、ハイパーバイザーの話をする必要がなくなっている」と語っていました。これに関して、どのような考えをお持ちですか?

クロリース氏
 Citrixとしては、同意できませんね。

 仮想化はOSよりもパワフルなものであると考えています。特にOSにかたよった仮想化では限界があるとおもいます。それではフレキシビリティが失われてしまいます。ひとつのOSでいいというお客さまもいるかもしれませんが、そうでないお客さまもいます。お客さまの選択肢を奪ってはいけないのではないでしょうか。


―ありがとうございました。





(福浦 一広)

2009/6/26 09:00