キヤノン、オフィス向け複合機の新ブランド「imageRUNNER ADVANCE」

ITシステムとの連携が最大の特徴

新製品ラインアップ
新製品の位置付け

 キヤノン株式会社は7月13日、複合機の新ブランド「imageRUNNER ADVANCE」を発表した。新製品としてカラー複合機「同 C9000 PRO/C7000/C5000」の3シリーズ12モデルを9月上旬より順次発売する。

 imageRUNNER ADVANCEは、ユーザーの多様なニーズに応えるために開発した新世代複合機を総称するブランド。C9000 PROシリーズは大量出力を必要とするプロダクションニーズに対応したマシンとして、C7000/C5000シリーズはオフィスのセンターマシンとして最適という。

 特徴は、高速・高画質印刷のために、複数の作業を並行処理する「アドバンスドiRコントローラー」を搭載したほか、3つのコンセプトである「ITシステムとの強力な連携」「管理業務の強化とTCOの削減」「一人ひとりに最適な使用環境」を実現した点。

 アドバンスドiRコントローラーでは、2基のCPU、および「Imaging Processor」と「Information Processor」の2つのコントローラーを装着することで、プリント速度やアプリケーション性能、操作性などを向上した。また、同社ラインアップで最上位に位置づけられるデジタル商業印刷用プリンタ「imagePRESS」シリーズのトナー技術を応用した「pQトナー」も採用。色再現性を向上したほか、トナーの表面形状を改良することで、くっきりとした文字を再現可能とした。

 「ITシステムとの強力な連携」では、ニーズに応じて複合機の機能を追加できる従来の「MEAP」に加え、「MEAP Connector」や「MEAP Web」の各プラットフォームを順次導入する。

 MEAP Connectorは、業務システムとの連携を実現する機能。請求書・契約書・会議資料などの紙文書を、PCを介すことなく直接ファイルサーバーや「Microsoft Office SharePoint Server」といった文書管理システムに格納可能となる。MEAP Webは、Webアプリケーションから本体の操作画面や機能を制御する機能。

製品開発のキーポイント基本機能としてトナーとドラムを強化MEAP ConnectorやMEAP Webの各プラットフォームを順次導入
常務取締役 映像事務機事業本部長の中岡正喜氏

 「管理業務の強化とTCOの削減」としては、本体のHDD領域にある「アドバンスドボックス」でファイル共有を実現する「ファイルサーバー機能」を提供。本体のスキャナで電子化した文書のほか、オフィスで使用される一般的な文書も格納可能。複合機同士を連携させることで遠隔地のフォルダにもアクセスできるため、業務の効率化によるTCO削減が図れる。保存容量は標準約9GB、最大約674GB。アドバンスドiRコントローラー搭載機器で機能の使い合わせが可能で、アドバンスドボックス共有のほか、親機に搭載されたFAX機器を未搭載の子機で利用するといったことも実現している。

 こうしたシステム連携が「今回の最大の特徴だ」と常務取締役 映像事務機事業本部長の中岡正喜氏は語る。

 このほかサーバーを構築することなく、PCを介して複数の機器を管理するソフト「imageWARE Management Agent」(別売)も提供。本体の状態やあて先表を一括管理できるほか、プリンタドライバを本体に保存して各PCへダウンロードさせるなど、操作や運用にかかる時間を大幅に削減できる。

 セキュリティでは、本体にTPMを標準搭載したほか、「ジョブロック拡張キット」(別売)を提供。同キットでは、プリントアウトやコピー、スキャンしたデータに情報をドットパターンとして埋め込み、スキャン時にその情報を検知することでジョブ実行を制限。また埋め込まれた情報から文書印刷者の追跡も可能となり、情報漏えいを防止・抑止できるようになる。

 さらにアドビとも提携し、スキャンデータを純正PDFに変換可能とした。ISO規格に基づく長期保存向けファイルフォーマット「PDF/A-1b」による電子化や、PDFファイルへのアクセス権限を管理する「Adobe LiveCycle Rights Management ES」(別売)との連携も実現。より安全性の高いドキュメント管理が可能となった。

ファイルサーバー機能の概要アドバンスドiRコントローラーでITとの親和性を向上。さまざまな連携を実現したITだけでなくサービスやパートナーとの連携も特徴

 最後の「一人ひとりに最適な使用環境」では、操作画面に大型のTHT液晶カラータッチパネルを採用し、ユーザーが一人一人の用途や目的に応じた自分専用の画面を表示できるようにした。タッチパネルには「標準メニュー画面」のほか「カスタマイズ画面」が表示できるようになっており、「例えば、管理者が部門ごとに使用できる機能を制限したり、ユーザー自身がよく使う機能だけを表示する専用メニューとして登録したりすることが可能」(中岡氏)という。

 加えて「imageWare Desktop」(別売)を使用すれば、スキャン、プリント、FAXなど本体の基本機能を自分のPCから操作することも可能となる。

 C9000 PROシリーズでは、印刷速度がカラー70枚/分・モノクロ75枚/分の「C9075 PRO」、カラー60枚/分・モノクロ65枚/分の「C9065 PRO」の2モデルを用意。「多段デッキ・A1」(別売)の装着により、1万460枚の給紙を実現した。C7000シリーズでは、カラー60枚/分・モノクロ65枚/分の「C7065」、カラー・モノクロともに55枚/分の「C7055」の2モデルを用意。オプションにより最大7960枚の給紙に対応する。C5000シリーズでは、カラー・モノクロ30枚/分から51枚/分の計8モデルを用意。カラー機としては業界で初という2つの排紙トレイを装備した「インナーフィニッシャー・A1」をはじめ、豊富な給排紙アクセサリー群を用意した。

 価格は、C9000 PROシリーズが380万円(税別)から、C7000シリーズが300万円(同)から、C5000シリーズが170万円(同)から。9月上旬より順次販売開始する。月間生産台数は、C9000 PROシリーズとC7000シリーズ合計で2000台/月、C5000シリーズが1万台/月。

 なお、同発表に併せ、キヤノンMJからは月額課金で利用できるSaaS型の中小企業向けアウトソーシングサービス「HOME」も発表された。社内の情報システムを統合した企業内ポータルサイトを構築し、スケジュール管理や設備予約、掲示板といったシステムにインターネット越しにアクセスできるものだが、2010年4月以降にはimageRUNNER ADVANCEシリーズのタッチパネルから、スキャンした文書を直接ポータルサイトに登録したりできる連携機能も提供する予定。

 代表取締役社長の内田恒二氏は、「この不景気は複合機事業にはツラい状況。景気が改善されないととにかく厳しいのだが、それでも当社の最重要事業、ということで新製品を投入した。開発にあたっては、CO2削減目標を都度設けるなど新しい開発体制も整えているところ。まだまだ景気は混迷するだろうが、今後の新しい事業推進力を生み出せるよう尽力していく」と、不景気の厳しさの中にも意気込みをのぞかせた。

C9075 PROC9075 PROのタッチパネルC5045

C7065C7065のタッチパネルC7000シリーズのトナー





(川島 弘之)

2009/7/13 17:24