米Juniper、米IBMとOEM契約を締結-次世代データセンター向け製品も推進


OEMされるMXシリーズのうち「MX960」

 米Juniper Networks(以下、Juniper)は7月22日、米IBMとOEM契約を締結したと発表した。IBMはこれに伴い、イーサネットサービスルータ「MXシリーズ」とスイッチ「EXシリーズ」を自社ブランドで販売する。またジュニパーネットワークス株式会社は、日本時間23日に記者説明会を開催。同社のデータセンター戦略を解説している。

 JuniperとIBMでは、これまでもさまざまな協力関係を築いてきたという。例えば、JuniperとIBM グローバル・テクノロジー・サービス(GTS)とは2007年にリセラー契約を締結し、GTSがグローバルで、ルータ、スイッチ、セキュリティ製品などを再販していた。またこの1年では、Juniperが主導している、次世代データセンターファブリックの開発を目的とした「Stratus Project」に共同で取り組んできたほか、クラウドコンピューティングのセキュリティに関する領域でも協業を行っている。

 今回の協業も、こうした取り組みの延長線上にあるもの。IBMデータセンター・ポートフォリオに、JuniperからOEMしたイーサネット製品を組み込み、製品およびサポートを提供する。提供されるのは、さまざまなサービスのデリバリに最適な機能を備えているMXシリーズと、シャーシ型およびボックス型のレイヤ3スイッチであるEXシリーズの両製品群。IBMはこれを独自のブランドで販売し、データセンター向けのビジネスを強化するという。

米Juniper 上級副社長兼データセンター・ビジネスグループ統括マネージャー、デビッド・イェン氏

 また両社が共同で取り組んでいるStratus Projectについては、Juniper 上級副社長兼データセンター・ビジネスグループ統括マネージャー、デビッド・イェン氏が説明した。

 現在のデータセンターでは、インターコネクトやインターネットにつながるネットワークとストレージのネットワークが分断されているケースが多く、管理、運用などが複雑化してしまっているほか、スケーラビリティという点でも問題がある。Stratus Projectでは、巨大で単一な論理的スイッチをデータセンター内に構築し、こうした課題に対応しようとしているのだ。いわば、ネットワークの仮想化を実現するソリューションであり、これによって、「お客さまは拡張時の痛みを軽減できるほか、遅延を最低に抑え、電力やスペース、コスト、複雑性を最低限に抑えられる」(イェン氏)メリットが生まれるのだという。

 もっとも、こうした考え方は、Juniperだけが提唱しているわけではない。これについてイェン氏は「Stratus Projectのような、データセンターファブリックの中でも高度なものを提供するには、かなりの専門知識が必要だ。当社では13年にわたる経験とリーダーシップ、またコアルータ領域での深い見識がある」という点を強調。「既存の、最適化されていないデータセンターの進化を遅らせることによる利害は、当社では持っていない」とし、他社では実現できない価値を提供可能とした。

 なお、Juniper自体はサーバーやストレージを提供していないが、それらを手掛けるベンダーとは協業を進めているほか、データセンター管理ツールとの統合も進められているとのこと。またイェン氏は、「大型データセンターの構築には数年単位の時間を要するため、大手顧客には説明を始めており、先日EXシリーズを採用したニューヨーク証券取引所が、Stratus Project製品登場の暁には、第1号ユーザーとして製品を導入することを決めている」と話し、業界でも受け入れられているという点を示した。




(石井 一志)

2009/7/23 16:08