「Microsoftの手の内はすべてわかっている」米VMwareニールセンCOO


 「Microsoftの手の内は、すべてわかっている」、そう語るのは、米VMware COOのトッド・ニールセン氏。Microsoftに在籍し、攻め方を熟知するニールセン氏は、Microsoftの挑発に乗らないことが最大の攻撃であると強調する。今回、VMworld 2009会場において、インタビューの機会を得たのでレポートする。

米VMware COOのトッド・ニールセン氏


―SpringSourceを買収しましたが、VMwareにとって収益面でどのような利点があるとみていますか?

ニールセン氏
 VMwareが持っているソフトウェアはカプセルに入っているようなものです。つまり、仮想マシンの中にOSがあり、その中でアプリケーションが動いているので、VMwareはカプセル化された仮想マシン全体を管理するだけでした。カプセルの中の動きまでは、把握できないのです。

 このことについて、今年のはじめにCEOのポール・マリッツと話をしたのですが、中でなにが起きているかがわかれば、もっとインテリジェントなものが作れるのではという結論に達しました。つまり、ロードバランシングやパフォーマンスマネジメント、アプリケーションマネジメントといったものが実現できると。

 そこで投資を決断したのがSpringSourceです。買収発表から現在までに、期待できるような成果も出てきています。今後3年から4年くらいで大きな収益が見込めるとみています。


―SpringSourceを利用してPaaSを始めると発表していますね。Java以外のフレームワークも取り込んでいくのでしょうか? .NETもありますよね。

ニールセン氏
 われわれが希望するのは、相互作用です。すべてのフレームワークの人と仕事をしていくことを希望しています。Microsoftに対しても同様ですが...。Microsoftに在籍した経験があるのでよく理解していますが、Microsoftは自分たちですべてをコントロールしたいと考える会社です。うまくいくかどうかはわかりませんね。


―クラウド化を進めていくと、収益構造も大きく変化します。そのあたりはどのように考えていますか?

ニールセン氏
 ライセンスを売り切るのではなく、売り上げをシェアする方向で考えています。サービスプロバイダが設定した価格で適切にサービスが提供できるようにVMwareが支援し、その利益を還元してもらうという考え方です。サービスプロバイダにとっても初期投資が少なくてすみます。


―競合をどのように意識されていますか? 特に以前在籍していたMicrosoftをどのようにみているか教えてください。

ニールセン氏
 私は1988年から2000年までMicrosoftにお世話になっていました。この経験の利点は、Microsoftの手の内を読めるということです。

 たとえば、Microsoftはゲームのルールを変えるという手法を用います。ワープロソフトで苦戦していたときは、Excelと一緒にパッケージ化することで、ワープロ単体ではなくオフィススイートという土俵を作り出し、成功しました。

 また、ゲームのルールを変えられない場合は、機能の良さと価格の安さを前面に出してきます。

 ただし、仮想化の場合、これまでとは異なります、まず、仮想化ソフトの分野でVMwareは20%以上の利用者を獲得しています。また、エコシステムを考慮していないこともMicrosoftにとってはマイナスです。VMwareは全世界に3900のパートナーを抱えていますが、Microsoftはこのチャネルを完全に無視してしまっています。

 もう一つ重要なことは、Microsoftを意識しないということです。Microsoftは意識しろ、意識しろとメッセージを発信しています。これに乗ってしまうと、自分のペースを崩してしまいます。実際、一時期、VMwareはこのメッセージを意識したために方向を見失ったことがありました。

 CEOのマリッツもMicrosoft出身なので、Microsoftの出方はよく理解しています。Microsoftが発するメッセージを気にすることなく、われわれが訴えていかなければいけない分野に進めばいいと考えています。


―とはいっても、サーバー仮想化が始まったばかりの日本では、Microsoftのメッセージは非常に効果的なのではないでしょうか?

ニールセン氏
 日本においてMicrosoftが非常に強いのは理解しています。ほかの国と比べて、うまくいく可能性は確かにあります。

 とはいえ、われわれはリードしています。このリードを生かして、(日本法人社長の)三木さんががんばってくれると信じています(笑)。

三木氏
 日本のお客さまは、仮想化について時間をかけて検討していますよ。特に両社の製品を評価されたお客さまは違いをよく理解しています。

 今後は技術者層を増やして裾野を広げていけば、脅威にはならないと見ています。

ニールセン氏
 ひとつ付け加えさせてください。VMwareは2500名のエンジニアを抱えています。この数は、私がMicrosoftに在籍していたときのWindowsのエンジニアよりも多いのです。仮想化は単純な技術ではありません。2001年から蓄積してきた技術は、われわれの最大の強みです。


―仮想化で最近注目が集まっているデスクトップ仮想化ですが、今後どのように展開すると見ていますか?

ニールセン氏
 プロトコルのサポートとオフラインのサポートの2つが技術的な課題ですね。来年にはこの2つの課題は解決できると考えています。これが解決すれば、デスクトップ仮想化は急激に進むとみています。

 というのも、ITエグゼクティブはデスクトップをなんとかしたいと考えています。PCは管理が大変で、セキュリティも大変です。1台のPCを管理するのに年間2500ドルもの費用をかけているという調査結果が出ています。デスクトップ仮想化を利用すれば、この費用は大幅に削減できるのですから。


―ありがとうございました。





(福浦 一広)

2009/9/4 00:00