日本オラクル、攻めのコスト削減を実現する「Oracle DB 11g R2」

グリッド強化やDB集約機能で次世代データセンターを支援

 日本オラクル株式会社は9月14日、RDBMSの最新版「Oracle Database 11g Release 2(R2)」を発表した。「後ろ向きではない、攻めのコスト削減」(常務執行役員 システム事業統括本部長の三澤智光氏)をメインテーマに、グリッドやストレージ管理、アプリケーションの無停止アップグレードなど、多くの新機能が追加され、クラウド時代を見据えたデータセンター全体のリソース最適化を支援できるという。提供開始は11月17日の予定で、価格は従来と変更なく、プロセッサライセンスでは66万1920円から。

常務執行役員 システム事業統括本部長の三澤智光氏新機能の5つのポイント
単一あるいは複数のサービスで「サーバープール」を構成。この単位で、必要な処理量に応じて動的にリソースを割り当てられる
RAC One Nodeでは、小規模なデータベース環境の集約を実現する

 最新版となるOracle Database 11g R2では、まず、グリッド「Oracle Real Application Clusters(RAC)」の機能が大きく強化された。これまでは、「複数のグリッド間ではリソースの共有ができない」(三澤氏)問題があったが、サーバーのリソースをより柔軟に管理できる技術を導入。複数のデータベースグリッドを統合した大きなインフラの中で、柔軟にリソースの再配置を可能にしている。「複数のグリッドを束ね、ストレージやサーバーのリソースを共有できるので、サービスがハードウェアの呪縛(じゅばく)から解き放たれる。これまではハードウェアありきだったが、今後はサービスありきで利用可能になる」(三澤氏)。

 また、一般的なサーバー仮想化技術では解決できない、データベースの集約を実現する新オプション「RAC One Node」も新たに提供される。三澤氏によれば、サーバー仮想化技術を利用した小規模データベースの集約では、Live Migration時に実行中のトランザクションが保証されない、サーバーがダウンした際のフェイルオーバー時間が長い、といった問題があったという。しかしRAC One Nodeを利用すると、前者については順次接続先を切り替えながらデータベースを移動させるOMotionの技術で、後者はRACの技術を利用した自動フェイルオーバーによって課題を解決可能。「サーバー仮想化によるデータベース統合は怖い、という点が解消される」(三澤氏)とした。このオプションは、大規模向けエディション「Enterprise Edition」向けに提供される。

 加えて、三澤氏が「夢だった」と言及した「Online Application Upgrade」機能も実装された。従来は、アプリケーションをアップグレードしたりパッチを当てたりする際、新しい環境向けに、一度ユーザー業務とシステムの動作を中断し、データベースのテーブル定義変更やプログラムのリコンパイルといった更新作業と、動作確認を行う必要があった。あるいは、どうしても停止させられないシステムであれば、もう1つ別の環境を用意して切り替えることになり、多額のコストが必要だった。

 しかしOracle Database 11g R2では、仮想的なデータベース領域「エディション」を作成できるため、本番データベース環境内に別のデータベース環境を作り、更新作業と動作確認後に切り替えることが可能になっている。三澤氏は「アプリケーションの無停止アップグレードがデータベースの機能で実現されており、当社製品のみならず、新版に対応したアプリケーションでは、皆この機能を使える」と述べ、メリットを強調している。

 このほか、無償ストレージ管理ツール「Automatic Storage Management(ASM)」の機能拡張によって、ファイルシステムの管理までをASMで行えるようになり、運用コスト、設計コストの削減を実現。ハードウェア性能の進化に追随した並列処理技術「In-Memory Parallel Query」のサポートによって、データウェアハウス(DWH)の高速化を図っている。

Online Application Upgradeと従来の仕組みの違いASMの拡張で、ファイルシステムの管理も可能になったIn-Memory Parallel Queryにより、ハードウェア性能の進化を最大限に活用する
代表執行役社長の遠藤隆雄氏

 なお、こうした機能強化を図るのみならず、以前から重視している信頼性の確保に関しても大きく注力しているという。代表執行役社長の遠藤隆雄氏は、「日本のお客さまは品質に対するこだわりが高く、信頼性が厳しく要求されている。Oracle Database 11g R2も、今年の初めから2社(NTTコムウェア、三菱東京UFJ銀行)のお客さまと、多くのパートナーに協力していただき、品質を高めるアクションを取ってきた」と、検証の取り組みに言及。三澤氏も、「従来と異なり、開発中のバージョンでもテストを行ってきたので、より早いリリースが可能になった。単なる機能検証のみならず、新機能による性能向上の効果も検証してきたし、パートナーとは、どの機能を使ってどのお客さまに働きかけるか、といった検証も綿密にやってきた」と述べ、十分な品質が担保されているとしている。

 予定価格は従来と同様で、中小規模向け「Standard Edition One」のプロセッサライセンスが66万1920円、中規模向け「Standard Edition」のプロセッサライセンスが199万7310円、大規模向けのEnterprise Editionのプロセッサライセンスが542万1150円。プロセッサライセンスに加えて、Named User(指名ユーザー)ライセンスが提供されるのも従来通り。ただし、新オプションであるRAC One Nodeの価格や課金形態はまだ決まっておらず、数週間のうちにあらためて発表するとのこと。

 販売戦略としては、新機能を広くパートナーにアピールして、「パートナーが売りたいと思っている商材と組み合わせ、メリットを訴求する」(三澤氏)としたほか、2000年前後に導入された古いシステムには、Oracle Database 8/9iなどの旧バージョンが多数残っていることから、アップグレードの必要性も従来以上に訴えていく考え。さらには、「海外に比べて、Windows市場が大きいのが日本の特徴。その市場に対して、当社製品がきっちりとメリットを出せるという点を説明していきたい」(同氏)として、特に中小規模市場への働きかけを行っていくことも明らかにしている。




(石井 一志)

2009/9/14 15:13