NEC、2009年度上半期決算は半導体事業悪化の影響で減収減益に
日本電気株式会社(NEC)は10月29日、2009年度(2010年3月期)第2四半期連結決算の発表と、経営改革の進ちょく状況について説明を行った。
代表取締役執行役員社長の矢野薫氏 |
2009年度上半期連結決算 |
セグメント別の実績 |
固定費削減の進ちょく状況 |
第1四半期、第2四半期累計の上半期の連結決算は、売上高は前年同期比22.3%減の1兆6537億円、営業損益はマイナス377億円、経常損益はマイナス499億円、当期純損益はマイナス436億円となった。
減収減益という結果となったものの、「営業利益は半導体事業の悪化により100億円強の下ブレがあったものの、ほかのセグメントでは改善傾向が見られている。半導体についても、7月30日に発表した予想値を確保している」(同社代表取締役執行役員社長の矢野薫氏)と改善傾向が出ていることを強調した。
セグメント別では、ITサービス事業の売上高は9.1%減の3825億円。SIサービスが官公庁向け、流通業向けなどは堅調に推移したものの、全般的な投資抑制の影響で減少。アウトソーシング/サポートサービスもアウトソーシングは堅調だったものの、市況悪化に伴って減収となった。営業利益は105億円。固定費削減などにより前年同期に比べ2億円増とほぼ前年並みとなった。
ITプロダクト事業の売上高は29.9%減の886億円。ソフトウェアは全般的な投資抑制の影響で売り上げが減少し、サーバーについても前年同期にあった大型案件の減少などにより売り上げが減少。その他についても金融向け専用端末の大口需要の一巡などによる影響で売り上げが減少した。その結果、営業利益はマイナス123億円となった。
ネットワークシステム事業の売上高は、22.6%減の3831億円。キャリアネットワークが国内移動体通信事業者の投資一巡、海外での投資抑制、円高の影響などにより売り上げが減少し、企業ネットワークについても金融危機以降の企業の投資削減の影響で、国内外で売り上げが減少した。営業利益は88億円で、売り上げ減少の影響や為替変動などにより減少した。
社会インフラ事業の売上高は、12.5%減の1297億円。放送・制御分野は民間放送事業者の設備投資抑制などの影響で売り上げが減少し、航空宇宙・防衛についても前年に大型プロジェクトがあった影響もあって前年よりも売り上げ減となった。営業利益は27億円で、コスト削減活動などにより改善している。
パーソナルソリューション事業の売上高は20.3%減の3624億円。携帯電話事業は国内市場の縮小の影響で減少し、パソコンその他についても企業の投資抑制、パソコンの単価下落の影響で減少した。その一方、営業利益は79億円と開発の効率か、原価低減、固定費削減などにより黒字化している。
ちなみに携帯電話の出荷台数は、第1四半期が130万台、第2四半期が90万台で、通期では450万台と予想している。
国内のパソコン出荷台数は、第1四半期50万台、第2四半期58万台で、通期では250万台と予想している。
赤字の要因となったエレクトロンデバイス事業は、売上高が34.6%減の2686億円、営業利益はマイナス426億円。NECエレクトロニクスの業績悪化に加え、キャパシタなどの汎用部品や産業用液晶ディスプレイなどの売り上げが減少し、その影響で利益も減少した。
NECでは昨年後半から続く経済環境悪化に対応するため人件費を含めた固定費削減に取り組んでいるが、2009年上半期は前年同期比1492億円の固定費を削減し、進ちょく率は目標の55%となっている。
こうした結果を受け、通期業績予想を修正した。
売上高は当初予想より700億円減となる3兆6600億円、営業利益は400億円減の600億円、経常利益は200億円減の400億円、当期純利益のみ当初予想通りの100億円とした。
「主な要因は半導体事業の損益悪化によるもの。前年に比べれば大幅な改善を実現しているものの、計画値には届かない。半導体以外の堅調な事業領域での事業拡大と収益向上を進め、固定費についてもIT活用による改革を進めていくことで、従来計画に200億円を上乗せする2900億円の削減を目指す」(矢野社長)
通期業績予想 | セグメント別通期業績予想 | 固定費の追加削減 |
■C&Cクラウド戦略により売り上げボトムアップ目指す
矢野社長は、今年1月に発表した経営改革の進行状況についても説明を行った。
事業構造改革 |
事業ポートフォリオを見直す事業構造改革として、1)半導体事業の非連結化、2)パーソナルソリューション事業の拡大・収益性改善、3)IT/ネットワークソリューション事業の成長に向けてのC&Cクラウド戦略を掲げ、さらに2900億円の固定費削減によって、「筋肉質な収益構造への転換を進める。この結果については、四半期ごとに進行状況の報告を行う」(矢野社長)ことがすでに発表されている。
半導体事業の非連結化については、NECエレクトロニクスとルネサステクノロジの統合の基本契約が締結され、2010年度からNECの持ち株比率が70%から35%へと大幅に減少され、連結対象からはずれることになる。
パーソナルソリューション事業についても、2010年4月付けでモバイルターミナル事業をカシオ日立モバイルコミュニケーションズに事業統合し、国内での強固なポジションを構築すると共にグローバル市場での事業拡大を目指す。
「パーソナルソリューション事業については、損益分岐点を引き下げ、収益性の向上をはかると共に、今後はクラウド時代における新インターフェイスとしてのサービス端末による新事業創出を目指していく。NECは端末、ネットワーク、コンピュータ、サービスとクラウドに必要な要素すべてを一貫して提供できることを強みとしていく」(矢野社長)
半導体事業の非連結化 | パーソナルソリューション事業の拡大・収益性改善 |
今後の成長の柱と位置づける「C&Cクラウド戦略」では、対象市場を「エンタープライズ」、「キャリア」、「ソーシャル」の3つを想定。主力事業を「クラウドサービス事業」、「クラウド環境構築事業」の2つとしている。
4つのコアコンピタンスと3つのターゲット市場 |
主力事業を実現するための注力技術としては、次の4つを挙げる。
1)IT市場でデータセンターの活用が進み、キャリア側がITサービスの拡張を進めてきた結果、ITとネットワークの市場特性が類似化し、今後はネットワーク機器とサーバーを集約した製品が必要となると見込まれていることから、IT/ネットワーク共通プラットフォームを他社に先駆け整備することに着手。
2)90年代からオープンアーキテクチャでのミッションクリティカルシステム稼働を実現してきた実績をもとに、99.9999%のクラウド構築環境においてもミッションクリティカル&リアルタイムでのイニシアチブをとるポジションの獲得。
3)ID処理基盤サービス「BitGate」のサービスメニューやデモ環境を整備し、RFIDマルチリーダライタのいち早い製品化などクラウド時代のユビキタステクノロジーの提供。
4)データセンターの低消費電力化を実現する「ECO CENTER」など環境性能の高い革新的な製品とサービスの提供によるグリーンテクノロジー。
こうした技術などをベースに、「市場の立ち上がりが早いエンタープライズ向けクラウドサービス事業については、すでに製品およびサービスの提供を開始している。業種・業務ごとにアプリケーションおよびサービスを豊富に品ぞろえし、PaaS『RIACUBE/SP』の上にパッケージやアプリケーションをSaaS化したものを提供している」(矢野社長)と早期に事業化を進める。
NEC自身も基幹システムの再構築にあたり、グループ内のシステムを集中化したクラウド指向のサービス提供基盤システムを構築し、「2割以上のTCO削減を実現した。この成果については、お客さま向け製品、サービスに反映させていく。ITにおけるTCO削減はすでにいろいろと手が打たれ、これ以上の引き下げは難しいところまで来ていたが、クラウド活用によってさらなるTCO削減が実現できることがわかった」(矢野社長)と、コスト削減手段としてクラウド活用を進めていく。
事例としても大正製薬がサーバーのデータセンター集約化によるフルアウトソーシング受注、東京海上火災のクライアント仮想化による3万台のシンクライアント受注、キリンビールの商品管理システム受注など具体的な案件が登場しており、矢野社長は「NECはクラウド分野でのリーダーポジションを維持する」と強気な見方を示している。
今後はグローバルなキャリア向けクラウド環境の構築、クラウドサービスの実行環境の提供などを進め、医療・介護・教育・行政といったソーシャル領域でのクラウドサービスの事業機会拡大についても目指していく。
また、クラウド環境の構築によってNEC自身のCO2排出量が約60%削減していることから、矢野社長は「今後5年間でクラウド活用によるCO2排出量のさらなる削減を進め、企業理念であるNECグループビジョン2017の実現に向け、C&Cクラウド戦略を加速する」とアピールした。
2009/10/30 00:00