「真の次世代ファイアウォール」の地位に-躍進するPalo Altoの次なる針路は?


日本法人代表取締役社長の金城盛弘氏【左】とPalo Alto社長兼CEOのレーン・ベス氏【右】

 米Palo Alto Networks(以下、Palo Alto)の次世代ファイアウォール「PAシリーズ」が好評のようだ。同製品は、従来のファイアウォールやUTMに「アプリケーションの可視化とコントロール」という技術を加えることで、境界セキュリティを一新するものとなっている。

 米国での急成長に伴い、4月には日本法人も設立。パートナーを順調に増やすなど、その認知度を急速に高めている。今回は、Palo Alto社長兼CEOのレーン・ベス氏に米国の状況を伺うとともに、日本法人代表取締役社長の金城盛弘氏に設立後半年の軌跡を聞いた。


―米国でのビジネス状況はいかがでしょうか?

ベス氏
 急速に成長しています。過去1年間で420%の伸びで、生産要求に工場が間に合わないほど。おかげさまで2年以内にはIPOを予定しています。このほか欧州、アジアも米国ではないにしろ、やはり勢いよく伸びていますね。


―「IPSでもUTMでもなく、それらを包含した次世代ファイアウォール」というメッセージは浸透しましたか?

ベス氏
 それについては、米Gartnerが10月12日にレポートを公開しています。この中で次世代ファイアウォールの再定義を行っているのですが、その内容が当社が提案している価値と酷似したものとなっています。

 1年前まで、ファイアウォール市場のマジッククアドラントで当社はトップ10入りをしていませんでした。それは、Gartnerが「ファイアウォール市場=ファイアウォール+IPS」と定義していたためなのですが、今回のレポートでは、次世代ファイアウォールとして「アプリケーションの可視化とコントロール」が必要条件であると再定義されました。これは当社のメッセージが浸透したという意味で、1つの成功ととらえることができます。

 ただ「次世代ファイアウォール」という名称は、将来的には変わることになるでしょう。

 これまでの「ファイアウォール+IPS」に「アプリケーションの可視化とコントロール」を加えて、現在「次世代ファイアウォール」と呼ばれています。これは新しい技術要素が出てきたために、名称が定まっておらず、Gartnerでも「次世代ファイアウォール」としか言いようがないという状況なのでしょう。

 これが時間の問題で、いずれは「URLフィルタ」「プロキシ」「メールフィルタ」「DLP」なども備えるようになり、例えば「インフラセキュリティプラットフォーム」といったものへと呼び名も変わっていくはずです。これはUTMでは到底実現できないことです。

 ワールドワイドではこの1年で、500社のエンタープライズ企業がユーザーに加わりました。その実績を見ても、ようやく企業のインフラセキュリティの再定義が始まったといえるかと思います。


―日本での状況はどうでしょう?

ベス氏
 4月に日本法人を立ち上げました。この1年は日本でも飛躍の年で、販売(予約を含む)をみても、1年前と比べて200%の成長となっています(アジア太平洋では過去9カ月で350%の成長)。

 ディストリビューターも3社に増え、このことからもビジネスチャンスは多いと実感しているところです。リセラーも100社に到達していますが、今後も物流チャネルを拡大していきたいですね。

 ディストリビューターには6月からトレーニングも開始しています。彼らのおかげで、市場の中でも当社の存在感は大きくなっていると思います。


―どんな業種に人気があるのですか?

ベス氏
 特にニーズが大きいのは金融、官公庁。そのほか大学、民間でも導入が進み始めています。具体的な導入数は未公開ですが、Palo Altoには600ほどの顧客があり、収益ベースで日本は5%を占める状況です。


―金城社長に伺いたいのですが、日本法人設立後の半年は、特にどんなことに注力してこられたのでしょうか?

金城氏
 まず当社が何者であるか、何ができるのかを伝えることから始めました。市場に対して、どんな技術とビジョンを持って、どんな製品を出しているのか。それが理解されないと他社製品との違いも分かりませんし、お客さまもどんなメリットが得られるのか分かりませんからね。

 2つ目は、市場からの声を米国へフィードバックすることです。日本には特有の要件があります。例としては、IPv6対応やPPPoE対応。それからmixiや2ちゃんねるなど固有アプリへの対応も必須です。ニコニコ動画などは接続元をたどると米国でも使われているんですよね。ですから、こうした日本発のアプリに対応するのは、非常に重要なミッションなのです。


―当然ながらパートナー戦略が重要になると思いますが、どう展開していきますか?

金城氏
 ディストリビュータには、これまでのネットワン、日立システムのほか、10月にテクマトリックスが加わりました。ディストリビュータとしてはこれで現状足りていると思っています。

 あとはインテグレーターとのパートナーシップですが、現在、SIerやサービスプロバイダとのコラボを鋭意進めているところです。大手SIerを通じて販売できるよう整備を進めるとともに、トレーニングにリソースを集中しています。


―では再びベス社長に。ビジネスも大変順調ということですが、今後の課題をどうとらえていますか?

ベス氏
 エンジニアチームの補充は必要ですが、ファイアウォールとしての機能は、ほぼ完璧だと思っています。足りないものがあるとすれば、「アクティブ-アクティブ構成」への対応くらいでしょうか。幅広いプラットフォームで情報を二重化できるようにしなければいけません。

 経営戦略については、そうですね。これは当社の長期戦略になりますが、現在は第1段階にいると思っています。すなわち、「ファイアウォールの要求をすべて満たす」「キー顧客を獲得する」「プラットフォームを拡充する」。これらに関しては、この1年でほぼ達成できたと思っています。

 次が第2段階。ここでは「セキュリティ技術のさらなる統合」、外出先でアプリを使うユーザーも管理下に入れるための「モバイル対応」や、「クラウド/SaaSの提供」「仮想化対応」を行っていく予定で、向こう1年間の焦点になるでしょう。ここで「インフラセキュリティプラットフォーム」としての座も獲得していきたいですね。

 そして第3段階では、パートナーとの協業をさらに推し進め、当社プラットフォーム上でのソリューション創造を目指していきます。「セキュリティビジネスソリューション」をパートナーと協力してつくっていくわけですね。そのためのオープンプラットフォーム化などが課題になってくると思います。

 Palo Altoは今後も進化していきます。あなたは今まさに次代を担う偉大なテクノロジーを目の当たりにしているのですよ(笑)。


―それは光栄です(笑)。本日はありがとうございました。




(川島 弘之)

2009/11/13 15:28