デル、重複排除ストレージ「Dell|EMC DDシリーズ」をOEM販売

エントリークラスにフォーカス、重複排除市場の拡大目指す

 デル株式会社は4月1日、柔軟かつダイナミックなIT環境を実現するクラウドビジョン「Efficient Enterprise Ecosystem」と、その構成要素となる製品を発表した。その中で、増え続けるデータを格納するためのストレージについては、「インテリジェント・データ管理」フレームワークを提供するという。

 インテリジェント・データ管理の中では、管理コスト、設置面積、消費電力の削減を強く打ち出しているが、それを実現する大きな武器として、バックアップ向けストレージ「Dell|EMC DDシリーズ」の提供開始が発表された。既存のDell|EMCブランド製品と同様、EMCからのOEM供給を受けて提供するストレージで、高い重複排除(重複除外)能力を持つ点が特徴となる。

Dell|EMC DD630Dell|EMC DD140
デル ラージエンタープライズマーケティング ジャパン・マーケティング本部 シニアマネージャーの小松原真一郎氏
EMCジャパン BRS事業本部 本部長の河野通明氏

 デル ラージエンタープライズマーケティング ジャパン・マーケティング本部 シニアマネージャーの小松原真一郎氏は、重複排除について、「顧客の関心は高くとも、今の時点では、市場規模は大きいとはいえない。しかし、データの増大を受け、データの減量ニーズも高まっているので、市場の潜在的な成長能力は高い」という点を指摘。OEMによって、この製品がデルからも提供可能になった意味は非常に大きいとした。

 その理由は、デルの強い販売力を十分に活用できる製品であるから。「Dellが(iSCSIストレージを手がける)EqualLogicを買収してどうなったかを思い出してほしい。強い販売力を生かし、iSCSI市場の創出と、ナンバーワンリーダーとしての地位を築き上げた」とした小松原氏は、DDシリーズについても同じことができると主張する。

 米EMCに買収された米Data Domainは、日本法人を通じて製品を販売してきたが、やはり1ベンチャー企業ではできることが限られており、「今年1月にEMCの一部となったことでお客さまと接する機会が増え、ビジネスは大きな成長を遂げた」(EMCジャパン BRS事業本部 本部長の河野通明氏)。しかし、バックアップシステムを導入する中で重複排除機能を取り込んでいる割合は、ワールドワイドの平均10%、米国の15~18%という割合に対し、日本は5%にも満たない小さな市場でしかない。従って、デルの参入は市場を大きく広げていくプラスの影響はあったとしても、既存のパートナービジネスを阻害するといった、マイナスの要因は考えにくいのだという。

 加えて、Data Domain、EMCジャパンでの既存ビジネスがミッドレンジ以上に比較的重点が置かれてきたのに対し、デルではエントリー~ミッドレンジクラスの、比較的下の層にフォーカスを定めており、対象となる顧客の層の違いにより、市場のさらなる拡大が見込めるとした。デル システムズ&ソリューションズ統括本部 ストレージ・ビジネス本部 本部長の小島由理夫氏は、「重複排除機能をうたう製品はさまざまあるが、デルが重複排除として、真っ正面から売っていくはこの製品になるだろう。まずは、過去にデルのストレージを購入しているお客さまなど、既存の顧客資産を生かして販売を進める」と述べた。

 また、パートナーからは、「既存のストレージビジネスを圧迫してしまうのではないか」との質問をよくぶつけられるという。しかしこれに対し、EMCジャパン BRS事業本部 システムズ・エンジニアリング部 部長の首藤憲治氏は、「D2D2T(Disk to Disk to Tape)の運用時、データ量が増えてまずプライマリストレージを増設し、次にバックアップ用のディスクストレージを増やそうとしても、実はデータセンターの電源容量などに限界があって、できない場合も多い」との現実を紹介。そこにDDシリーズをバックアップ用ストレージとして導入すると、重複排除技術の活用によって設置面積や消費電力を抑えられる上、信頼性の高さから、テープストレージも不要になるメリットを提供できるのだという。首藤氏は、こうした点をによって、「お客さまのデータセンターにマッチするし、既存ビジネスとバッティングしない良さを提供できる」と述べた。

 なお、EMCジャパンでは、Data Domain以前にも、AvamarやNAS製品など、重複排除機能を備えた製品を保有している。同じような機能を持つ製品が複数あると、社内やパートナー、顧客が混乱してしまいがちだが、Data Domain日本法人の社長を務めていた河野氏は、「買収発表直後はそう思って、双方の製品を徹底検証する指示を出した。その結果、アプローチや必要とするお客さまもまったく違うことがわかり、導入する環境やどうしていきたいのかという要望をヒアリングした後での、社内での提案のすみ分けがはっきりできた」とこれを明確に否定。複数の製品を持つことで、EMCジャパンは強いポジションを占められているとした。具体的なすみ分けとしては、例えば、WAN回線を経由して直接バックアップを行う場合はAvamarが適しているし、バックアップ(重複排除後)のレプリケーション用途にはDDシリーズが適している、などと説明している。

 価格は、「DD140」が438万390円から、「DD610」が617万2110円から、「DD630」が1219万9320円から。すべて、4月1日より販売を開始している。

 またデルでは、ミッドレンジNAS「Dell|EMC NSシリーズ」についても、4月上旬の販売開始を予定する。ミッドレンジNASについては、同ブランドで「NX4シリーズ」をすでに提供しているものの、「データ増大のニーズに応えて、より大容量のモデルをラインアップした」(デルの小松原氏)とのこと。「NS-120/NS-480/NS-960」の3製品が用意されるが、価格はすべて未定となっている。




(石井 一志)

2010/4/2 09:00