「単なるサーバー向けからデータセンター向けになった」、インテルがXeonの広がりをアピール


米Intelの副社長兼データセンター事業部長、カーク・スカウゲン氏

 インテル株式会社は5月25日、次世代のデータセンター基盤に関する説明会を開催。米Intelの副社長兼データセンター事業部長、カーク・スカウゲン氏が、自社の取り組みを説明した。

 スカウゲン氏は、2015年までに25億人のユーザーがインターネットに接続するほか、クラウド環境において、10億台の仮想サーバーが存在するようになるとの調査会社のリサーチを引用。150億台のデバイスがつながり、データ量が650%も増加するような世界を想定している。

 そうした中でIntelでは、史上最大規模のデータセンター製品の刷新を、ここ1~2年で行ってきたという。このうち、まず、サーバー領域では、2ソケット以下に向けた「Xeon 5500番台(開発コード名:Nehalem EP)」を2009年に投入した。新アーキテクチャを採用したこのCPUでは、大幅な性能向上と消費電力の削減を実現。「15ラックのサーバーを1ラックに置き換えることで、電力コストやライセンスコストの削減によって、8カ月で投資を回収できる」(スカウゲン氏)ほどだという。

 そして、同じ領域で2010年に投入された「Xeon 5600番台(開発コード名:Westmere EP)」では、さらに消費電力の最大30%減少、パフォーマンスの最大60%向上を実現。市場の1/3を占めるというシングルコアサーバーからの置き換えを行うと、5カ月で投資回収が見込めるとのこと。スカウゲン氏は、「仮想化の前にこれだけのメリットを得られる。日本では電力コストが高いので、さらに投資回収は早いだろう」とした。

Xeon 7500番台
スカウゲン氏はXeon 7500番台とItanium 9300番台を手に、ミッションクリティカル向けに並び立つものだと紹介した

 また、ミッションクリティカル領域に向けては、大規模環境にも対応可能な「Xeon 7500番台(開発コード名:Nehalem EX)」と、ハイエンド製品向けの「Itanium 9300番台(開発コード名:Tukwila)」を相次いで提供している。

 後者においても、前世代の約2倍の性能向上を実現しているが、前者では、「Intelに入社して18年たつが、これほど大きな性能の飛躍は見たことがない。一生に一度のことだろう」(スカウゲン氏)とまで形容される性能向上を果たした。具体的には、4ソケットシステムにおいて、過去のシングルコアXeonから実に20倍もの性能向上を達成したほか、サードパーティ製コントローラを介した256Wayまでのスケーラビリティ、MCAリカバリをはじめとする、20以上の信頼性機能を搭載。前世代では採用例が少なかった、2ソケット、8ソケット以上の両領域でも採用例を増加させている。

 IntelがXeon 7500番台とItaniumで狙っているのは、RISC/メインフレームサーバーの市場だ。この市場は台数ベースでは少ないものの、2009年現在でも、まだ160億ドルもの出荷金額があり、大きな成長が見込める分野で、スカウゲン氏は「Xeon 7500番台とItaniumの刷新により、メインフレームやRISCからシェアを奪える」とした。

 なお、インテルとしては両シリーズをいずれも基幹用に位置付けているとのことで、「かつてはItaniumをXeonの“上”としていたが、今は併存している状態。ItaniumはメインフレームやHP-UX、Non-Stop、Xeonは基幹用WindowsやLinux、Solarisがあり、お客さまに選択肢を提供できる」と、併存の意義を説明している。

 また、クラウドの普及とデータセンター全体を見渡した場合、サーバー以外の機器が果たす役割も大きなものがある。Intelでは、ここにも目を向けるようになっており、2010年2月に組み込み用途に特化した「Xeon C5500番台」を提供した。「必ずしも、マスコミでは注目されなかった」というC5500番台だが、サーバー向けでなく、ストレージやネットワーク機器向けに最適化されたこの製品によって、「Xeonは単なるサーバー向けからデータセンター向けになった」(スカウゲン氏)ため、大きな意味を持つのだという。

 具体的には、ストレージでは、現在までにデザインの70%がXeonになっているというが、さらに2011年末までには、80%にこの領域を拡大。「Xeonの、新しい水準の経済性を、爆発的な成長を遂げているストレージ領域にもたらす。また、スイッチやルータでも同じことが起こる」として、データセンターに提供できる価値を説明した。

 さらにIntelでは、Gigabit Ethernet(GbE)の10Gigabit Ethernetへの置き換えとFCoE/iSCSIの推進、またデータセンター管理の簡素化を推進することにより、データセンターにさらなる価値を提供できると主張。「10GbEへの移行で、サーバーにつながっているケーブルを現在の9本から2本へ減少させ、10億マイルのケーブルを節約できるとの試算がある。また、電力管理などの集約によって、データセンター管理の簡素化を標準に準拠した形で提供する」とした。

Xeonアーキテクチャをデータセンター全体に拡張するネットワーク領域では、統合ネットワークを推進するとした

 加えて、「クラウドのビジョンにおいて、エンドユーザーから一番懸念されるところ」(スカウゲン氏)だというセキュリティについても、トラステッド・エグゼキューション・テクノロジー(TXT)と、Westmere世代のCPUに組み込まれた「AES-NI」の両機能などによって、解決を支援する意向。今後も、「パフォーマンスと電力に費やされてきたムーアの法則を、これからはセキュリティにも積極的に利用する」ことで、クラウド環境への展開を支援するとしている。

インテルTXTインテルAES-NI





(石井 一志)

2010/5/26 06:00